ニンマ派の特徴・教法



その結果としての教法は主に先の「メンガクデ」に基づき、

1 「カマ」(口頭伝承経典)

2 「テルマ」(埋蔵経典)

3 「タクナン」(清浄顕現)

に分類される三つがあるとされる。 しかしながら、以上のような教えは他派にもある。ニンマ派の教法は「ニンマ・ギューブム」、つまり古訳密教経典(旧訳の「秘密儀軌」)を伝承する流れということに尽きる。



「カマ」(アーガマ:口頭伝承経典)とは口頭で人から人へと伝承されてきた教えを意味する。いわゆる『ニンマ・カマ』は、テルダク・リンパ、ロチェン・ダルマシュリー等が古い伝承を編纂し、ゲルセー・シェンペン・ターイェーが完成させ、ドゥジョム・リンポチェ等が増補したものを指す。



なお、その中でニンマ派で重要視されるものは旧約の「大幻化網タントラ」のテキストである『幻化網秘密真実決定根本続』(サンワ・ニンポ:ギュウ・トゥル・タワ経典類の主本。中国訳には全訳と抄訳の2本、十憤怒尊のお経を含めて先行経典は更に多数あり、日本では抄訳等の宋代の訳が「大正大蔵経」の中に収められている。また、新訳の大幻化網タントラのテキストは田中公明の研究によって、大幻化網タントラの先行経典である「金剛サッタのタントラ」のテキストであることが解明されている)や、インド後期密教の生理的ヨーガを解説した経典である『吉祥秘密蔵続後続』等が挙げられる。『幻化網秘密真実決定根本続』は、810年にサムイェー寺が建立された後、グル・パドマサンバヴァがその東北の地にあるティンプーにおいてイシェ・ツォーギャルをはじめとする25人の弟子たちを集めて伝授を行ったもので、チベット仏教の密教の教えは「大幻化網タントラ」から始まったと言っても過言ではない。この教えを伝授した上で聖地タクマル(赤い洞窟)に場所を移し、現時点で考証できるものとしてはチベット史上初めての「ゾクチェン」の教えが弟子たちに説かれたのである。そのテキストは古タントラに、講義録は「カンドゥ・ニンティク」(空行心髄)に残されている。



「テルマ」とはグル・パドマサンバヴァなどが秘匿した教法(埋蔵された教法・経典)を地面の下や湖の中、岩や空中、様々な場所から取り出し、サンスクリット(梵語)やチベット語、ダーキニー文字(空行母(くうぎょうぼ)の暗号文字)で書かれた経典をテルトン等が解明したものである。「サテル」(地下の埋蔵経)とも言う。

「タクナン」とは清浄な顕現であり、グル・パドマサンバヴァなどの智身(智法身)が瞑想状態や夢・霊感の中において、テルトン等に対して直接伝授するものである。「ゴンテル」(御心の埋蔵経:ゴム・テルマ、禅定による埋蔵経の意味)ともいう。