埋葬(まいそう)


埋葬(まいそう)とは死者の中に埋めることである。ただし、必ずしも文字どおり土中とは限らず、地下室や、時には地上の施設の場合もある。

土葬では遺体はほぼそのまま埋葬されるが、火葬後の埋葬では、遺体を焼いた後の遺骨を埋めることになる。



埋葬の歴史

原始人類の化石や遺跡は、時代が古くなるほど発見例が少なく、また破損や撹乱により原形を保っていない事も多く、彼らが埋葬行為を行なっていたかどうかの判定は困難であるが、わずかな証拠から、猿人・原人段階では埋葬はなかったと考えられる。北京原人ホモ=エレクトゥス)は食人を行なっていた可能性が指摘されているが、埋葬をした形跡は認められない。

埋葬という行為が成立するためには、死を理解する事。また死者のや来世を考えるといった抽象的な思考力の発達が不可欠で、アウストラロピテクスやホモ=エレクトゥス・ホモ=エルガステルの段階ではまだ知的能力がそこまで発達していなかったと考えられる。



最も古い埋葬の例はネアンデルタール人のものがよく知られている。すなわち、埋葬の起源はおよそ10万年前にさかのぼる。発見されるネアンデルタール人類の化石は、事故や遭難のため埋葬される事なく遺棄されたと思われるものも少なくないが、洞窟内など特定の場所から何体もの骨格化石が副葬品と共に発見される場合も多く、彼らが死者を葬っていた証拠とされる。ただしこれには反対意見がある。ネアンデルタール人は、遺体を狙う食肉獣の接近を恐れて単に遺体を埋めて隠したに過ぎないとする考えである。彼らが本当に埋葬と呼べる行為を行なったかどうか、まだ意見の一致を見るに至っていないが、ネアンデルタール人の「埋葬」された化石を調べると、女性もあるが男性がはるかに多い。彼らの社会や意識の反映であろうが、こうした違いは、単に食肉獣の襲撃を避けるだけなら起こりえないもので、ネアンデルタール人が死者に対して特別な意識を持っていた可能性を示唆するものであり、埋葬行為が行なわれていたと考えても十分に良いと思われる。

尚、ネアンデルタール人とほぼ同時期に既にアフリカや西アジアではホモ=サピエンスが出現しており、彼らも埋葬行為を行なっていた事は確かで、最古のネアンデルタール人に近い時代と考えられるジェベル=カフゼー人で埋葬が見られるが、これらのホモ=サピエンスは絶対年代がはっきりしないものや、石器などの文化遺物だけで人骨は発見されない場合も多く、確実な事はわかっていない。