菩薩戒(ぼさつかい)
菩薩戒(ぼさつかい)とは、大乗仏教における菩薩僧に与えられる戒律である。
総称として「三聚浄戒」(さんじゅじょうかい)と名づけられるが、2種類の説がある。
1 梵網(ぼんもう)系統の説では、授戒の作法は鳩摩羅什訳の『梵網経』(ぼんもうきょう)によっており、その具体的な内容は、『梵網経』所説の「十重四十八軽戒」である。これは、「三聚浄戒」中の「摂律儀戒」(しょうりつぎかい)である。また、『梵網経』の「菩薩心地戒品」第十は上下2巻として訳出されたが、その下巻の偈頌(げじゅ、偈)以後の所説を別録とした。天台智顗(ちぎ)は、『菩薩戒経』(ぼさつかいきょう)と名づけ、弟子の章安灌頂(しょうあんかんじょう)が義疏(ぎしょ)2巻を撰した。
2 瑜伽(ゆが)系統の説では、『善戒経』に依る。この経典は、釈迦の成道時の所説とされている。兜率天(とそつてん)にある弥勒菩薩が直接に聞いて説いたのが、『瑜伽師地論』(ゆがしじろん)の「菩薩地品」であるとされる。こちらの説によれば、「摂律儀戒」(しょうりつぎかい)は声聞の所説と同じで、比丘の二百五十戒と同じであるという。但し、菩薩の「利他」のために、あらゆる善法を摂(おさ)め、一切の衆生を済度するさまを、菩薩戒としている。