雛遊び文化研究家
うらやすのみのりの母
「お雛様」と「貝覆い・貝合せ」を
研究している身としては、欠かせない
場所として、ずっと行きたかった
「布良崎神社」です。
なんと令和元年の大晦日のNHK放送
「ゆく年くる年」で中継されていたのを
知って、びっくりしました。
自分にとってはジャストタイミングに
シンクロしたので、心強く感じました。
布良は、日本が誇る明治期の洋画家
青木繁が「海の幸」を得た地でもあります。
館山市にある岬、洲崎を突端に房総半島の
内海側と太平洋側、安房の内房と外房の
境となるところです。
TV放送にもありましたが、布良崎神社も
先の台風で大きなダメージを受けました。
お神輿も壊潰し、ご神木をはじめ境内の
大木4本が根こそぎ倒れ、社殿も傾いて
しまいました。
一日もはやく、復興されることを願います。
今回の布良崎神社でのお目当ては、
「お守り貝」の“みがき初め”をする
ことです。
貝殻に磨きをかけてジュエリーのように
ピカピカにします。
そして心を込めて磨けば、鏡となって、
そこに「○○○○」がうつる、とのこと
お守りとなる貝は「貝博士」でいらっしゃる
昭和天皇が初めて発見されたもので、
貝類のご指南役の黒田徳米博士(日本
貝類学会創設者)により新種として
発表された「御玉置貝」(みたまきがい)。
英名はインペリアルシェル。
(文責・貝鑑定 福田康孝氏による)
この貝殻には「布良星」(めらぼし)・
カノープスを象ってあり、それを自分の
手で磨きをかけて、お守りを完成させます。
布良はマグロはえ縄船発祥の漁村として
古くから栄えていました。漁師が亡くなると
その魂は赤い星になる、という伝説がある
そうです。
その星は冬になると南の水平線上に輝く
カノープス「布良星」と呼ばれ、世界では
時化を超えてゆく導き星といわれている
とのことです。
中国では布良星を見ると寿命が延びる
寿老人「南極老人星」と呼ばれ、七福神の
福禄寿の星として知られているそうです。
(「氏子磨きの貝まもり」説明書きより)
貝磨きは、海の波が浜に寄せては返す
揺らぎのなかで貝表の凸凹を均すのと
同じような調子で手掛けていきます。
貝を選んで磨きをかけていくあいだ、
神代(かみよ)の時代から今に至る
までの時間が、一陣の風となって
吹き抜けていくのを感じた、ひとときで
ありました。
この地で創作のインスピレーションを
得ることになった青木繁の思いを少し、
感じることが出来たような気がします。
うららかな日差しのなかで、今を生きて
いる命のすべてが、この上なく愛おしい。
そんな思いを新たにしました。
そして、だからこそ無残に踏みにじられる
出来事に対しては、癒しと、慈しみと、
励ましと、そして導きの指針となる希望を
なによりも大切にしなければならないと、
強く心に思いました。
文学や芸術において厳しい時代があり
ました。
若くして頭角をあらわした使命ある者
たちが、歳を重ねていくことのなかで、
さらに後々にどのような作品を生み出
しただろうか、と思わずにはいられ
ません。
ちなみに、私は国文学の卒論を画家・
村山槐多の詩と日記をテーマに書き
ました。槐多も放蕩のすえに22才の
若さでこの世を去ったひとりです。
青木繁も、時流にあって早世した人で、
文豪・夏目漱石が小説『それから』で、
主人公・代助に「多くの出品のうちで、
あれだけが好い気持にできている」と
言わしめたほどの才能ある人でした。
享年28。
今回、青木繁「海の幸」記念館はちょうど、
年始の閉館中で見ることが叶いません
でしたので、また改めて来ようと思います。
2月1日(土)~3月8日(日)には、小谷家
恒例行事という、明治期からのひな人形や
江戸期末期の高砂人形をはじめとして、
釣るし雛を飾る「ひなまつり」も企画されて
います。
さらに、青木繁の「海の幸」・「わだつみの
いろこの宮」など多数を所蔵する公益財団
法人石橋美術館・ブリヂストン美術館が、
新たに「ART(芸術)」と「HORIZON(地平)」
を組み合わせて「ARTIZON」の命名のもと
に生まれ変わる、という情報を教えていた
だきました。(東京都中央区京橋)
こちらは2020年1月18日(土)開館です。
布良崎神社の内陣禁裏の御前左右には、
大きくて立派な貝殻が!
青木繁の作品「大穴牟知命」に描かれた
ふたりの貝の女神の霊威を彷彿させます。
安房房総の浜浦、布良崎神社にふさわしく
感じました。
日本には古来より、幸せを叶える法則が
伝えられています。
女性にとっては「お雛様」と「貝覆い・
貝合せ」が何より身近なものとしてあり
ます。
「貝覆い・貝合せ」には貝の女神の霊威
が込められているのはもちろんのこと、
「お雛様」にもあらわされています。
女性を雅に輝かせ、美しさと健康と豊かさ
と、心の充足をもたらす叡智が込められた、
「お雛様」と「貝覆い・貝合せ」。
恩恵をいただかないのは、もったいない!
と思います。
学校では教えない「お雛様」の飾り方の
作法や心得などを「母」の立場から、
ご紹介していこうと思っています。
うらやすのみのりの母でした(^^)/