残念なことに、塾経営という分野で、状況を真に理解している人たちは非常に限られています。
本物の塾経営者ひとりに対して、100人以上の「えせ経営者」がいます。
彼らは塾をうまくやっていて、蓄えた知識も豊富なので、素人目には本物のプロと区別がつかないのです。
これらの「えせプロ」はある程度の職務は果たせても、みずから専門領域と主張する分野をほんとうには理解していません。
ですから、5年、10年と経営を続けていくと「メッキ」が剥がれてしまいます。
ほんものの塾経営者はがんじがらめのルールを持ちません。
彼らは状況を理解しているので、そんなルールを必要としないのです。
一方、えせプロは理解できていないので、成功した塾のふるまいを見て、それをまねすることになります。
何をすればよいのかはわかっているが、なぜそれをするのかがわからないからです。
それゆえ、成功した塾のシステムを聞きかじり、思いも寄らないところにがんじがらめのルールをつくってしまうのです。
えせプロである確かなしるしのひとつは「文章が不明瞭でわかりにくい」ことです。
不明確な文章は不明瞭な思考から生まれます。
ほんものの塾経営者なら、込み入ったアイデアを明確にわかりやすく説明することができるはずなのです。
えせプロによく見られるもうひとつの特徴は、複雑なプロセスやシステムを知り、習熟もしているが、その限界を理解していないことです。
目の前にいる少数の生徒のサンプルや、過去に自分が経験したことから、数え切れないほどのシステムを生み出します。
そして、そこからすぐれた結果が得られるつもりでいます。
少数の生徒や、自分の浅い経験が全体を代表していない可能性を考慮に入れていないのです。
算術はできたとしても、もし状況が変化した場合に、算術などたいした意味を持たないということを、理解していないのです。
経験と熟練、また、知識と知恵を混同してはいけません。