過活動膀胱の診療ガイドラインが改訂され、下記のURLから全文を見ることができます。

過活動膀胱 診療ガイドライン[第3版] 編集 日本排尿機能学会/日本泌尿器科学会 2022年8月

 

過活動膀胱診療ガイドライン第 2 版が 2015 年に刊行されてから 7 年が経過し, 今回第 3 版が発刊されました。実に 7 年ぶりの改訂です。7 年も間が空くと様々な新たな知見が出てきますが,本ガイドラインは,それらのうち,エビデンスレベルが高く,推奨グレー ドを決める要となるような文献を拾い上げて最新の内容を盛り込んだガイドラインとなっています。

 

http://japanese-continence-society.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=130084

 

http://japanese-continence-society.kenkyuukai.jp/images/sys/information/20221004153031-5AE38BBCAB689D6F748E8B038251EF44EBE396B12DA7B8074DE44A39CC6A3914.pdf

 

 

「前立腺癌と過活動膀胱」の項目を抜粋しました。

 

限局性前立腺癌に対する放射線治療後では,永久挿入密封小線源治療,外照射の双方で過活動膀胱が出現または悪化することがある。症状は,外照射より小線源治療で遷延 しやすい〔レベル 3〕。

したがって,放射線治療後に過活動膀胱の評価をすることは推奨される。 

〔推奨グレード B〕

 

放射線治療,特に LDR(永久挿入密封小線源治療) 症例では術前から術後長期 にわたって,過活動膀胱評価を前向きに検討している報告が複数ある。

LDR 後の蓄尿症状の頻度は 30~79% 程度と報告されている。その頻度は,EBRT(外照射)や前立腺全摘除術に比較して有意に高い。

LDR も EBRT も一旦悪化した蓄尿症状は 3 カ月以内 をピークとし,1~3 年かけてゆっくり改善の方向に向かうが,LDR は EBRTより症状が遷延する。

 

蓄尿症状(ほぼ=過活動膀胱)とは、頻尿(尿の回数が多い)、夜間頻尿や、急に抑えきれないような強い尿意を感じる尿意切迫感、不随意に尿が漏れる尿失禁などのことです

 

前立腺全摘除術後の尿失禁は,外尿道括約筋の閉鎖機能低下に伴う腹圧性尿失禁が主体ではあるが,過活動膀胱の存在も報告されており,その頻度は 15.2~37.8% 程度,切迫性尿失禁の頻度は 3.2~27.3% 程度である。また,de novo OAB(術後の新たな過活動膀胱)の頻度は , 19~25% 程度と報告されている。

腹圧性尿失禁評価のために,本邦では,パッド枚数評価,パッドテスト,尿失禁特異的質問票である ICIQ- SF による評価が主に行われているが,切迫性尿失禁を含めた過活動膀胱の評価は十分 にできない。過活動膀胱評価のためには,OABSS を同時に施行する必要がある。

〔推奨グレード C1〕

 

前立腺癌の治療後、蓄尿症状や尿失禁で困っている方もおられると思います。

専門的になりますが、このガイドラインを参考にしてください。

私が意外に感じたことは、前立腺全摘除術後でも、切迫性尿失禁を含めた過活動膀胱が起こる頻度は、20%前後と稀ではないことでした。前立腺癌の治療に伴う過活動膀胱に対しては、薬物療法が効く可能性があると思います。