日本の雑誌の泌尿器科紀要(京都大学出版)に、本邦では未承認のPSMA-PETについての症例報告が出ていました。

 

A Case of Pelvic Lymph Node Recurrence Detected by PSMA PET/CT after Primary Proton Beam Radiotherapy for Prostate Cancer

Hinyokika Kiyo. 2021 Dec;67(12):543-546.

 

患者は、72歳の男性。

62歳時、PSAが上昇したため著者の病院を紹介され受診し、前立腺癌(cT2aN0M0)と診断されました。

根治的陽子線治療を受けました。

PSAは、5年後に0.217 ng/mlと最低値となりましたが、その後徐々に増加し、その後の5年間で1.595 ng/mlとなりました。

前立腺のMRIで、前立腺に異常な領域を認めましたが、繰り返し行われた前立腺生検では、悪性の所見を見いだせませんでした。

造影CT、骨シンチ、FDG-PET/CTで、前立腺に異常や他の部位の転移を見つけることが出来ませんでした。

PSMA-PET/CTでは、前立腺に異常はありませんでしたが、左閉鎖リンパ節の一つに集積を認めました。

開放骨盤リンパ節郭清が行われ、病理学的検査により、その部のリンパ節で、前立腺癌の転移が確認されました。

PSAは、術前2.482 ng/mlから術後3ヶ月0.391 ng/mlと減少しました。

PSMA-PET / CTは、前立腺癌の根治的治療後の生化学的再発時、再発病変の早期の部位の特定に有用と思われます。

 

類似の内容が、下記の論文に出ていました。

PSMA-PET/CT–based Lymph Node Atlas for Prostate Cancer Patients Recurring After Primary Treatment: Clinical Implications for Salvage Radiation Therapy.

Eur Urol Oncol. 2021 Feb;4(1):73-83. doi: 10.1016/j.euo.2020.04.004. Epub 2020 May 22.

 

CTで、小さなリンパ節を認めます(左、矢印)、PSMA-PET/CTで、同部に取り込みがあり(右)、前立腺がんのリンパ節転移であることが分かります。

 

泌尿器科紀要の例では、陽子線治療後、5年以上経ってからリンパ節転移が明らかとなりました。

これは、どの様に考えれば良いのでしょうか。

 

診断時、既にリンパ節に転移していたがん細胞が、治療から5年後、静止期を脱し活性化し、増殖を開始したためと考えるのが妥当と思います。

前立腺がんの診断時、既に骨髄やリンパ節に転移が見られことが報告されています。

 

前立腺生検によって、血液中にがん細胞が、播種されることも分かっています。

これらの現象は、未分化なほど、つまりグリソンスコアが高いほど、起きやすいと言われています。

 

診断時、前立腺以外の場所に、飛び散ったがん細胞は、一旦へ静止期に入ります。

種々の刺激によって、活性化され増殖を開始します。

この現象も、未分化なほど、起きやすいと思われます。

 

従いまして、根治的治療後の再発予防が重要と思います。

今まで、何度となくプログで取り上げた事柄です。

食事、睡眠、運動などでの生活習慣を整える、余暇を楽しむ、そしてエビデンスは、はっきりしませんが、薬剤による再発予防です。

 

PSMA-PETは、生化学的再発を来した微小な病変を検出できるので、本邦での保険承認が待たれます。