栗城史多さん(先月エベレストで滑落死)が「夢」と語っていた、「単独無酸素」での「七大陸最高峰」登頂。

 取材を始めたときは登山の知識がなくて私もスルーしてしまったが、「無酸素」つまり「酸素ボンベを使わないこと」が意味を持つ山は、七つの最高峰のうちエベレスト(チョモランマ)だけなのだ。他の六つの山をボンベ担いで登る者などいない。空気は十分濃いのだ。「単独無酸素」と「七大陸」がセットになること自体、誤解を招く、きつく言えば詐欺的な表現である。

 もう一つ彼が山で撮った映像をすべて見れば、「単独」にも疑問符がつく。

 決定的だったのは、初めてのエベレスト挑戦の映像。彼自身のブログにも頻繁に「栗城隊」という言葉が登場するようになるが、ベースキャンプで彼と連絡を取り合い指示を送るサポート役、エベレストに何度も登っている現地のシェルパ、日本語を流暢に話す通訳に食事のスタッフと、ちょっとした大名行列である。真っ白い壁面をたった一人登る姿、その映像を撮るために、陰ではたくさんの人間が「隊」を成して支えている。これを「単独」と言っていいのか? 

 しかもこの時は彼自身がインターネットの「Yahoo!」に営業をかけ(私はその場面も取材した)、毎日現地から動画を配信。登頂の瞬間は生中継すると大きな仕掛けを作っていた。企画の一つとして「ギネスブックに挑戦」と銘打ち、標高6400メートルのアドバンス・ベースキャンプで流しそうめんを行い、数日後にはカラオケを歌った。出国前の記者会見で「世界最高地点での挑戦としてギネスに申請する」とニコニコ顔で語っていたが、危険を伴う行為だとしてギネスは後日、この申請を却下した。私はYahoo!での取材後、移動のタクシーの中で「登山というよりイベントですね?」と正直な感想をぶつけた。彼は「そうですね。絶対面白くする自信があるんで」と笑った。

 面白くする……そこは数多の登山家が命がけで挑み、登頂に歓喜し、挫折して涙を流したばかりか凍傷で指を失い、あるいは友の遺体を下ろした、過酷なる「聖地」ではないのか? そこで、そうめん流しにカラオケ? 先人たちに無礼ではないか? 演出をするにしても方向性が逆を向いていないか?

 当時、彼の挑戦を東京でサポートした事務局長は、かつて出版社の編集者だった。彼のアイデアに異議を唱えず、むしろ面白がった。そして実際にインターネットを見た人たちからは多くの激励のメッセージが届いた。私と同意見も寄せられたのかもしれないが、もちろん反対意見は掲載されない。

 結局、彼は八千メートルにも及ばない地点で登頂を断念した。「ちくしょう!」自撮りした彼の嗚咽がネット上を駆け巡った。日本ヒマラヤ協会の会員である知人によれば、その地点なら酸素ボンベは使わなくて済むそうだ。「単独」とも「無酸素」とも言い難い、エベレストでのエンターテインメントはあっけない幕切れとなった。

 アドバンス・ベースキャンプに下りてきた栗城さんは、スタッフの一人一人と泣きながら握手を交わした。通訳のネパール人に「登頂できなくてごめんね」と言うと、「いえいえ、仕事ですから」と返された。

 この登山の様子が、関東で放送される三十分番組で前後編二回に分けて放送されることになった。番組を作るために私は、事務局からすべての映像の提供を受け(使用料を払う)、ダビング作業をした。その中に……気になる映像があった。

 

 

 

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