わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)
カズオ・イシグロ氏の小説「わたしを離さないで」を読みました。

この作品は、同じ『わたしを離さないで』というタイトルで映画化され、キャリー・マリガン主演で映画化されていた作品。

映画は、どちらかというとキャリー・マリガン演じるキャシー、キーラ・ナイトレイ演じるルース、アンドリュー・ガーフィールド演じるトミーの三人の関係性の方に重きを置かれた感じでしたが、この小説の方は彼らの運命や彼らを生み出した制度の方を冷酷に描き、彼らの哀しみをより詳しく描いているように感じられました。


<STORY>
寄宿学校“ヘールシャム”で暮らすキャシー。幼い頃から、外界と隔絶したこの学校で、ルース、トミーという仲間たちと一緒に大きくなった。18歳となり、彼ら3人はヘールシャムを出て、農場のコテージで他の仲間たちとともに暮らすこととなる。キャシーとトミーはひかれ合っていたが、ルースがトミーとつきあい始める。ある日、仲間が街でルースにそっくりな女性を見かけたという。彼らはその女性を見に、初めて外の街に出かけて行く…。


<Cheeseの感想>
“ヘールシャム”という特別な寄宿舎で、提供者として幸せに育てられた子どもたち。

「自分たちは特別な存在なのだ」

そんな自意識すらあったとしても、その“特別”は決して素晴らしい特別ではありません。
言わば、特別に手をかけて育てられた、ブランド牛のような存在。
どんなに大切に育てられたとしても、行く末は人間のために殺されてしまう存在なのです。
他の大規模牧場で育てられた牛とは違うかもしれませんが、結局辿り着くのは同じところ。。。

彼らの待遇を改善しようと活動する人間がいたとしても、結局それは大きなシステムの中では自己満足でしか終わりません。
人間がその存在を必要悪と認めて利用する以上、ブランド牛を増やすことはできても、牛を食べるという習慣自体をやめさせることはできないのです。


そんな“特別な存在”賭して育てられた彼らが“自分たちの使命”をまっとうするため、おとなしく暮らしていく様子は、切なくもあります。

「おれはな、よく川の中の二人を考える。どこかにある川で、すごく流れが速いんだ。で、その水の中に二人がいる。互いに相手にしがみついてる。必死でしがみついてるんだけど、結局、流れが強すぎて、かなわん。最後は手を離して、別々に流される。おれたちって、それと同じだろ?」

そんなトミーの言葉が、なんだか胸に響きました。


【関連作レビュー】
■映画『わたしを離さないで』レビュー:http://ameblo.jp/cheese2000/entry-10876521192.html


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カズオ・イシグロ
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