息子と凧揚げをした

 

「糸がもつれた」

 

息子の手元から 空高く舞う凧に つながる糸は

途中で こんがらがっていた

 

私は 糸をほどく

息子は 凧が落ちないように 一生懸命操作する

 

私は 結び目をほぐしながら思う

(かならず ほどける)

ほぐしながら 輪を引っ張ってみる

(切れてもつれたわけじゃない かならず ほどけるはず)

糸の行く先を目でたどりながら ほぐしていく

(私は知っている この糸が まっすぐ伸びていたことを かならず ほどける)

 

投げ出してもよかった

凧は揚ってる

 

でも 息子から どうにかしてほしいと 頼まれた

これは 私の使命

 

私は 知っていた

この糸がまっすぐ空に向かっていたことを

ほどけないはずがないと

 

私は確信していた

確かに信じる

 

どんなに難しそうに見えても

どんなに時間がかかっても

心を乱す必要はない

かならず ほどける

 

瞬間 

かたまりが 緩んだ

あれよあれよと ほどけていった

 

糸は もとどおりに

私と息子の手から 青空へ まっすぐに 一直線に のびていた