『風露新香穏逸花』
ふうろあらたにかおるいんいつのはな

菊は、しとやかで高貴な風情から
「穏逸花」(いんいつのはな)
云われます。



千宗易が、
「利休」という居士号を
正親町天皇より勅賜されたとき、
参禅の師である古渓和尚から贈られた
偈頌(げじゅ)です。

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古溪大和尚 賀居士号頌

泉南乃抛筌斎宗易廼予三十年飽参之徒也
禅余以茶事為務頃辱特降
倫命賜利休居士之号聞斯盛挙不堪歓抃贅
一偈以抒賀忱云

龐老神通老作家飢来喫飯遇茶々
心空及第等閑看 風露新香隱逸花
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泉南の抛筌斎宗易(ホウセンサイソウエキ)は、
廼(スナワ)ち余が三十年飽参の徒なり。
禅余、茶事を以て務と為す。
頃(コノコロ)、辱(カタジ)けなくも特に綸命を降し、
利休居士の号を賜う。

斯の盛挙を聞き、歓抃(カンベン)に堪えず。
一偈を贅(スス)めて以て賀忱を抒(の)べて云く。

龐老は神通の老作家(サッケ) 。 飢え来たれば飯を喫し茶に遇えば茶。

心空及第して等閑に看れば、
風露新たに香る隠逸の花。
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泉南の宗易(利休)は30年もの長い間、
私(古渓宗陳)のもとに参禅し続けた人である。

禅の修行の他は茶事を業としている。
この度、忝くも正親町天皇の綸命により
利休居士の号を与えられることになった。

このすばらしい慶事に私も嬉しくて溜まらず、一偈を作ってお祝いする次第だ。

庚老は庚居士として神通力さえもつ唐時代の名だたる禅者である。

(利休居士も)喫茶喫飯の中に自由無碍なる
神通力が現れていて、仏法優れた境地を
得ている。
庚居士は大悟して、「心空及第して帰る」と
述べているが利休居士も庚居士と同等に
悟りの境涯に及第している。

菊の花が露を帯びて
咲き気高い香りを放っている。
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【隱逸花】いんいつのはな

闇夜その所在が判らずともその清香により存在が知れることから、菊の花の異称とされ、
古渓和尚は利休の徳を孤高穏逸なる「菊」に比定し、気高いその徳を讃えた利休にえた。

【龐老】(ほうろう)は唐代の高僧

古渓和尚は利休の徳を
孤高穏逸なる「菊」に比定し、
気高いその徳を讃えた句。

隠逸とは、世俗の生活から身をひいて
隠れ住むこと,またはその人。

中国では,自己の理想や生き方を
固く守って公職につかない人を逸民と呼んだ。


今の日本はどうでしょうか?
逸民はいますか?



『論語』微子編で,孔子が論評を加えている
伯夷,叔斉ら7名がその例である。


円山応挙 「竹林七賢図」 重要文化財 
(金刀比羅宮表書院 七賢の間)
撮影古川幹夫氏・ 出典 岩波美術店


隠逸の世界は、陶淵明の詩に見出せます。