GWで一番ショッキングで肝を冷やしたシーン。
井上尚弥がラモン・カルデナスにダウンを奪われたシーンは驚きました。1年前にもルイス・ネリにダウンを奪われてるので振り返れば、二試合ともダメージは最小限に抑えてたし、その後の試合を圧倒してKO勝ちしてたので、本来なら気に病むことは無いんですよね。ただ、圧勝を義務付けられてる立場なだけにダウンを奪われること自体がアップセットですし、何よりも一発のパンチで今まで築き上げてきたものが総て崩れ落ちてしまうこともあるのがボクシング本来の怖さであり、また魅力でもあることを瞬間、思い出させてくれました。
さて、無敵を誇ったボクサーがまさかの敗北を喫したとき、ボクシングファンとしての価値観が粉々に打ち砕かれた様に思うときがあります。それは既存の価値観を破壊して新しい魅力を見つけることにも繋がるので決して悪い事ではありませんが。
自分の場合はマイク・タイソンとフリオセサール・チャベスの敗北がそれにあたりました。
1.マイク・タイソンvsジェームス・ダグラス
戦前は誰もがタイソンが負けるわけないという前提で観てた試合でした。43-1という冗談の様なオッズ、公開スパーでのタイソンのダウンも試合を盛り上げてチケットの販売を促進するための演出でないかと不埒なことを考えたものです(笑)。
しかし、タイソンの不調は1Rから明らか。加えてダグラスの調子の良さはキャリア随一で前半からとにかく左ジャブがキレてました。そして衝撃のKOシーン、這いつくばりながら必死にマウスピースを口の中に戻そうとするタイソンの姿はショッキングでした。
この後、再起して無敵のイメージは薄れましたが、それでも91年以降もキャリアを中断しなかったら・・・とタラレバを考えてしまいます。
2.フリオセサール・チャベスvsフランキー・ランドール1
前年のウィテカー戦での引き分けで味噌は付いてたものの、JRウェルター級ではまだまだ負けることは無いだろうと思ってたのでこの敗戦はかなり衝撃的でしたね。しかも初ダウンまで・・・
暴風雨の様な試合のタイソンは交通事故的なカウンターで負けることは有りうると思ってた時期もありましたが、チャベスは攻防ともに盤石で隙が無い。打ち合いは滅法強いし、脚を使う選手を追い詰める技術も一級品。
そんなチャベスに土をつけるとしたらチャベスに詰められない脚を持ち、ダメージを与えるパンチを打てるカウンター・パンチャーかなと朧気に考えてた矢先のランドールでした。
再戦は幸運な負傷判定で王座奪回したものの、デラホーヤに王座を負われ、後にウェルター級での再戦では顎を砕かれるに至って、既にこのランドールとの初戦でチャベスの精緻なボクシングは壊されてしまったのかも知れない。
さて、井上尚弥はこのまま無人の野を突っ走り、無敗のまま引退するのか。それとも世界中に衝撃を走らす様な黒星を喫してしまうのか。