カリビアン達は資本主義に夢を見る | リングサイドで野次を聞いた ~独善的ボクシング論

リングサイドで野次を聞いた ~独善的ボクシング論

マニアの隠れ家を目指します。
中津の生渇きの臭い人はお断り。

近年、五輪や世界大会などの前後でキューバのプロ・スポーツ選手が世界各国へ亡命を図るケースが多いですが、ボクシングも例に漏れません。かってのホセ・ナポレスやシュガー・ラモスなどもそうですが、現役の選手も妻子を祖国に残し、二度と会えないかも知れないのにも関わらず、プロのリングに富と名誉の夢を見ます。
彼らは勝ち続けねばなりません。しかし、その勝ち方は問われます。自己満足にしか過ぎないディフェンシブ過ぎる試合ぶりや徹頭徹尾、平坦な試合運びで判定勝ちを拾って行くだけの試合しか出来なければプロモーターは二度と使ってくれません。
テアフォロ・ステベンソンやフェリックス・サボン、マリオ・キンデランなどはプロのリングに上がることはありませんでしたが、それゆえ彼らは未だに「もし、プロ入りしてたら・・・」という幻想を保ってる所もあります。
キューバのボクサーというと個人的に思い出すのは
①足(ステップ)が特徴的で距離感に優れてること
②打ち合うと以外に脆いこと
③カウンター
④金銭の交渉が露骨だが、上手くないこと


1.ギジェルモ・リゴンドウ



※シドニーとアテネの五輪二大会金メダル獲得、世界大会も2度優勝のトップ・アマ。
超絶的な技巧と卓越した距離感を持つが、自己満足が過ぎる試合ぶりで相手選手にもプロモーターにも嫌われてます。実際にプロのリングではドネアやアグベゴ、ドリアン・フランシスコとも対戦の機会があり、そんなに不遇というわけでもないと思うが、プロとしての試合を構築する意思が希薄なために(あとカリブ・プロモーションズの法外な要求もあるのだが)そこから続くビッグマッチの流れを作れない。
ドネアはともかくコルドバや天笠にダウンを奪われてるのは打たれ脆いというのもあるが、防御の意識が緩む瞬間があるのだろう。そこを自覚してるから更にディフェンシブな試合になってしまうのかも知れない。

2.ユリオルキス・ガンボア


※アテネ五輪ではフライ級の金メダリスト。プロを最も意識した攻撃的な試合スタイルが魅力だが、反面、防御が疎かになりダウンを奪われたりするケースもママある。階級を段階的にあげてきたけど、パフォーマンス的にはフェザー級が一番良かったのではないか。Sフェザーに上げてからはKO勝ちは一つだけだし、クロフォードにも負けてるし、イマイチな感は否めない。
2012年にはブランドン・リオス戦、2014年にはマイキー・ガルシア戦をキャンセルしたのはいずれも直前のギャラアップの要求により、プロモーターと揉めたのが原因。本来ならもっと上の地位でスーパースターになっていてもおかしくないけど、余計な揉め事を起こして遠回りしてる様に見えるのは残念。

3.エリスランディ・ララ


※ララは2005年の世界選手権優勝、ワールドカップ準優勝。4年間不敗だった元アマ世界王者のロレンゾ・アラゴンに土を付けたのが光ります。プロではポール・ウィリアムス戦やカネロとの試合では際どい判定を落とす苦渋も味わったし、アングロ戦は自分だけ体重制限が定められたりと不運もありましたが、そのディフェンシブな試合ぶりが不幸を呼び寄せてるのではないかと考えるのも穿ち過ぎか。
それでも結果的にアングロに勝ってるし、トラウトにも完勝してるし、階級的なものもあるから、まだリゴンドウよりは恵まれてる気がします。そんなに金銭で揉めてる印象も無いし。

良くも悪くもキューバのボクサーとして思い出すのは上記3名です。ヘビー級のルイス・オルティスはある意味、フューリーやワイルダー、クリチコなど他の巨人たちよりも試合が面白くてプロらしいし、ランセス・バルテレミーやヨアン・パブロ・エルナンデス(一応、五輪出場)は際立ったアマ実績があるわけでもなく、試合が面白いわけでもないし、プロモーションとも揉めるほど稼ぎや話題があるわけでもないしなあ。
※エルナンデスは昨年9月に引退発表(数年後に復帰するものと予想)。


リチャード・アブリルみたいに自由に米国を行き来出来るケースもありますし、一昔前と比べると両国の関係は良好になってきてるのかな。まだまだ亡命をしないといけない事情は変わらないかも知れませんが、一刻も早くプロ・ボクシングの世界へ全面開放してもらいたいものです。