外猫のクロが失踪した。

もう1週間も姿を見ない。

1日姿を見ないことはあったが、これはもう完全に我が家から離れたということだ。

ただ、マイケルの時とは違って野良猫狩りに掛ったとは思っていない。

恐らくは近所のどこかの家で内猫に昇格したのだろう。

これは願望でもあるが、それなりに根拠はあるのだ。

クロは物凄く人懐こい猫だが、それはよく知った人間だけだ。

我が家に来た頃も最初は数メートルの距離をとってそれ以上は絶対に近づいてこなかった。

あたしの経験では野良猫狩りに掛るのは大柄なオスが多い。

自分の強さに自信を持っているので、その分警戒心が薄いのだと思う。

クロは怖がりなので、見知らぬ人や物に近づいて行くタイプではない。

しかも、失踪前に伏線があったのだ。

一時は日がな一日我が家の玄関を中心にずっと居座っていて、「君はそれでも外猫か?」と言いたくなるような状態だったのだが、最近は腹が減った時以外は玄関に来なくなっていた。

それでもあたしが記憶する最後の時にも得意の頭突き撫で(撫でてやろうと手を出すと、待ちきれないと言った感じで自分から頭をぶつけてくる)をしてきたので、あたしのことが嫌になった訳ではなさそうだ。

食事の回数も減って来ていた。

ようするに他所の家でも食事を提供されているのだ。

外猫であればもちろん我が家にも来る。

ということはその家で外猫から内猫に昇格したのだと思うのだ。

あたしの見立てではクロは内猫になりたがっていたのだと思う。

先程書いたように我が家の玄関から離れなかったのはうちに入りたかったからだと思うし、実際に何回も家に入って来た。

あたしも嫁はんもそれは感じ取っていたので、毎回すぐにつまみ出していたのだ。

雌なので家で子猫を産まれたら困るというのもあった。

我が家が既に満員でなければ家で飼ってやったのだが、なにせ既に8匹居るし、しかもそのうちの1匹は犬猿の仲のコミだ。

絶対に我が家の内猫にはなれないので、きっとこれで良かったのだと思う。

それでも煙草を吸いに外に出るたびに目はクロを探している。

他所猫として幸せに暮らしてくれよ!