【改訂】定年遍路記 目次

 

 

1996年9月14日(土)

快晴

 

 

四万十川の河口を渡船でいく

 あの有名な四万十川に近づく。環境保護活動関係でもその運動が活発であるし、バイク雑誌でも「その源流を訪ねる…」とかの特集記事を載せている。人工堰が無いことでも有名で、約80キロ(?)にもおよぶ大川は四国だけでなく日本の自然財産でもあるようだ。 
 その川辺に着いて、さて渡船場はどこか、また船の出る時刻は、と道路沿いの民間会社らしい小さい事務所に尋ね入ると、中年紳士と女性事務員さん、仕事を中断して電話であちこちに発船時刻を問い合わせてくださる。時間が合わないとわかると、「なにいいさ。船頭さんを呼んできてあげるよ。 自転車で行ってきてあげる。よく知っている人だから大丈夫。 船の乗り場はあの方角だから先に歩いていっといてよ。ここでは、歩き遍路さんは見たら時間に関係なく船に乗ってもらうことになってるのさて」と。親切なお言葉に甘んじて事務所を出て歩き出すも、途端にまたしても涙があふれ出す。お礼の言葉がちゃんと言えたのか不確かでまことに情けない。 
 

 

四万十川の渡船 小生1人を対岸に渡して無人(客)で戻っていくところ

定年遍路記 1996.09.14 (土)

 

 

 船の乗り場に着くと無人。しかしすぐに船頭さんと先ほどの中年紳士が自転車で現れ、早速船の出航準備のあと、さあどうぞ、となる。定員約10人位の小さいポンポン船で、自転車200円、大人100円、学生50円とか書いてあった。たった1人で、四万 十川大川の河口を行く、悠然と。中州を避けてその川下側をゆっくりと船は進む。川幅は河口だけあって実に幅広く、流れる水は澄んでいてゆるやか、両岸の景色はぼう洋として実に雄大、中国画を想わせる。対岸に着いて、大川よ、四万十川よ、永遠なれと心で叫ぶ。近い将来、この河口より源流地点を求めてバイクで走りたい。お客がなく1人で戻っていく船頭さんにはお礼を重ねたが、その下船場をすぐには立ち去れず船が見えなくなるまで見送った。 
 船で渡った後は、再び国道(321号)へ出て、長い長い伊豆田峠を越えて、下の加江、そして久百々(くもも)へ、ここで足の限界、クタクタになって泊まる。