2日目に宿泊した街、エクス・アン・プロバンス。
大学が多く豊かな建築遺産もあり、「フランスの京都」的な位置づけと言えそうです。
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ミラボー通りにある噴水の前で。


この日は朝ご飯をしっかりめに食べて出かけました。
大事な施設の見学があるからです。

向かったのはエクスからほど近いレミルという街にある、
「Camp des milles(コン・デ・ミル)」、レミル収容所。
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もとはレンガ工場だったのですが、
第二次大戦中にユダヤ人収容所となり、
ここから二千人のユダヤ人がアウシュビッツに送られました。


フランスは1940年6月にドイツに敗北し、休戦協定を結びました。
ドイツ占領軍は仏警察にユダヤ人検挙を命じ、
フランスは国として主体的にユダヤ人を捕らえて収容していたのです。
この負の歴史と向き合うため、
オランド政権はレミル収容所を去年九月、
記念館としてオープンさせました。
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せっかく南仏に行くならこの記念館に行こう、と旅行前に決めていましたが、
そのときからずっと緊張していました。
悲しい歴史が詰まる場所へ足を踏み入れるのは辛いことだから。



記念館では、最初にユダヤ人たちが幸せに暮らしていた頃の写真(大人も子どもも)を見ました。
この幸せが無惨にも奪われることになるんだ…。絶望的な気持ちになります。
そしてシアターで見る映像では、こんなメッセージが私たちに突きつけられます。
「もし明日、同じようなことが起こったら…?どうする?」
過去の問題ではない、今の私たちにも関係あることだというメッセージです。



その後、実際に施設の中を歩きます。当時のままに残っているんです。
たくさんの人たちが収容された、長くて暗い廊下。
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ほこりっぽくて薄暗い。
とても静かで、私も当時にタイムスリップしてしまったかのような恐怖を感じました。
辛くて、怖くて、心が重かったです。

元レンガ工場だったために洞窟のような窯が無数にありました。
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その中で、収容された芸術家たちが議論したそうです。
画家にとっては、普段と違う環境でインスピレーションが湧いたらしく
壁画も残されていました。

この建物の外にある食堂に話を飛ばすと、それこそかなり大きな壁画があります。
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収容された画家たちが描いたものです。
楽しそうに食事をする人たち、テーブルにはごちそうが並んでいます。
書かれている言葉は…、
Si vos assiettes ne sont pas très garnies,
Puissent nos dessins vous calmer l' appétit
「もしあなたのお皿がいっぱいでなくとも、私たちの絵があなたの食欲を鎮めますように。」
与えられる食事は決して多くはなかったのでしょう。
みんなを励まし、ひもじい思いをせめて絵で紛らわそうとしたんですね。



最初にいた建物に話を戻します。
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二階にあがると窓がありました。
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ここから自由を求めて外の世界を眺めた人もいたし、
絶望して自ら飛び降りてしまった人もいたと聞きました。


だれかが残した落書きも見ることができました。
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自由、人生、平和と書いてあります。
自分たちも同じ人間なのになぜこのようにして閉じ込められるのか、
心の底から求める言葉を書いたのでは、と感じました。



ここまで見学するのに、私は相当に心が重く苦しくなっていました。
あまりに悲しく、まだここには収容された人たちの叫びが聞こえるようで恐怖の気持ちもありました。

でもそんなときに、この記念館で働く男性に出会いました。
ミシェルさんという男性です。
見学した感想などを話したり
ミシェルさんが案内してくれたりしました。
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私はミシェルさんに聞いてみました。
「ここで働いていて、恐怖の気持ちにかられることはないですか?」
するとミシェルさんは、なんでそんなこと聞くのかといった顔で、
「全然。ここは未来のためにある場所だから。」と答えました。

ミシェルさんが特に強調していたのは
「この記念館が伝えたいのは過去の話を知ることだけでなく、
人種差別や迫害は現在の問題であることだ。」ということです。

フランスにはアラブ系の人たちをはじめ、移民が多く暮らしています。
その中で差別がまったくないとは言えないそうです。
もっと広く世界に目を向ければ、様々な場所で人種差別はまだ多くあり、
女性差別の問題もあります。

ミシェルさんと私も、顔が違う、言葉も違う。
同じように人はみんな「違い」があるということをよく知って、
認め合わないといけない、と話してくれました。

記念館の展示の終わりには、
もしあのような独裁者が登場し同じ状況になったらどうすればよいか、
最新の研究がスクリーンで上映されていました。


この記念館のチケットにも
「Comprendre pour demain(明日のための理解」と書かれています。


この収容所跡が教えてくれること、
日本にいると人種差別について考える機会はあまり多くはありません。
でもこの施設を訪ねてから、毎日考えています。

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世界中からあらゆる差別がなくなる日を迎えるには、
違いを知ることから始めることが大切だと思いました。




さて。このあとはマルセイユへ移動。
今度は戦後作られた、夢の住居を訪ねます。

※追記
ここを訪ねた四年後には、フランスのカンにある平和記念館でノルマンディー上陸作戦を始めとする戦争の歴史について見てきました。
こちらがブログです。