意思決定とコンピュータ(その3) | ドラッカーを学ぶ/埼玉のドラッカリアン和光良一

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ドラッカリアンとは、ドラッカーを理解、実践する事が大好きな人たちの総称です。チェンジリーダとは、ドラッカーによればイノベーションを行う者です。

コンピュータは人間の代わりに意思決定してくれるようには

なりません。

その理由はコンピュータが

「人間にできないことはできない」道具だからです。

 

では、その「人間にできないこと」とはどんなことなのか。

私は、それは「未来予知」だと思います。

 

人間にもコンピュータにも未来予知はできません。

人間が意思決定しなければならないのは、人間には未来が分からないからです。

 

それが意思決定の本質です。

 

考えてみてください、未来予知ができる、ということは未来が決まっているということです。

意思決定というのは、自ら望む未来を実現するために行います。

ということは、一方で望まない未来も有り得るということです。

 

両方の可能性があるということは、

つまり、それは未来は決まっていないということです。

 

しかし、もし未来予知ができてしまったら、その未来は確定しているということになります。

未来が確定しているのであれば、人間が意思決定する余地は残されていません。

 

実際、コンピュータの計算によって未来を正確に予測できる領域においては、人間が意思決定する余地は残されていません。

 

コンピュータは限定された領域においては、かなり正確に未来を予測できます。だからこそ、人間の意思決定を肩代わりしてくれるのではないかと期待されてしまうのですが、そのあたりのことをもう少し詳しくご説明します。

 

例えば、将棋やチェスの場合は、コンピュータはかなり先の盤面まで正確に見通して最善手を選ぶことができます。

これは、もう人間のできる範囲を超えて未来を予想できると言って良いでしょう。藤井さんみたいな天才は分かりませんが、少なくとも凡人の及ぶところではありません。

 

でも、それは、将棋やチェスには決まったルールがあるからなのです。

もし、ルールを途中で変えられてしまったら、例えば、「桂馬の動きを、これからこういう風に変えましょう」と当事者同士の話し合いで急にルールを変更したとしても、人間であれば、応用を効かせて対応することができます。

 

しかし、コンピュータはそうはいきません。多分、プログラムをやり直す必要があって、直ぐには対応できないはずです。

 

コンピュータが正確に未来を予想できるのは、決まったルールが変わらずそこにあるからなのです。

自然科学の分野でコンピュータが未来を予測できる理由がこれです。万有引力の法則は基本的に変わることはありません。だから、惑星や彗星の軌道はほぼ正確に計算できます。ハレー彗星が何年後にまたやってくる、等ということが予測できるのです。

 

一方、人間社会のルールというのは変化します。ルールというのはその性質上、頻繁に変わるようでは意味を成しませんが、人間が生きていくうえで決めているルールというのは、人間が生きている限り変化していくのが当然です。

 

ここではルールという言葉の意味はとても広く取っています。

生活していく上での習慣とか、文化とかも一種のルールだと考えて、全部ひっくるめて「ルール」と呼んでいます。

 

このルールが変わってしまうと、人の動きもガラッと変わってしまいますので、現在のルールに則って未来を予測しても意味がないのです。

 

ルールがいつの間にか変わってしまうような人間世界においては、人間もコンピュータも未来予を知することは不可能なのです。

 

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