意外と近くに幸せはあったりして
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2人で

琢磨が突然わたしの腕を掴み自分に引き寄せ、声を殺して耳打ちする。



「あの2人、俺達居なくても気付かないんじゃねぇの?2人に何も言わないで、俺達はあっちに行ってみようよ。」



そう言って海岸の方を指さした。



さっきから海岸の方に行ってみたいと思っていたし、
ナツと勇次があまりに仲良くて、自分がお邪魔むしのような気がしてきたわたしには、
琢磨の提案はとても良いものに思えた。



「そうだね。こっそりあっちに行ってみよう。」



琢磨がニヤっと無邪気な表情を見せた。



琢磨とわたしは静かに、足早に、ナツ達とは違う方向へ歩き出した。



なんだかワクワクした。



ナツ達と少し距離が出来たところで突然琢磨が走り出す。



それを見てわたしも負けじと全力疾走。



そのまま2人で追いかけっこのように走っていたら、気が付くと大分遠くの海岸まできてしまっていた。



息を切らしながら2人で笑った。



久しぶりにたくさん走った気がした。



夜風が気持ち良かった。



さっきまで、琢磨を意識してぎこちなかったわたしだったが、
いつの間にかまたいつものように、すっかりリラックスできていた。



2人で腰をおろして夜の海を眺める。



夜景が遠くに小さくチカチカ見える。
黒い夜の海にも光が反射していて、キラキラ揺れている。



第一印象は大した場所じゃないと思ったが、
それは間違いだった。



とても静かで幻想的で、時間が止まった気がした。

お邪魔むし

カチンコチンになったわたしに琢磨は気付いていないのだろうか?



琢磨は全くわたしの変化にリアクションしない。



それともわざと気づかないフリをしているのだろうか?


わたしがこれ以上カチンコチンにならないように気を使ってくれてるのか?



いや、いちいちリアクションするほどわたしを気にとめていないのか。



実際、琢磨がどんな気持ちだったかは全くわからなかったけど、



変にツッコミを入れられる事なく、目的地に到着する事ができて、ホッとしていた。



「男性を簡単にあしらえる」キャラになっていたつもりのわたし。



こんな事でどぎまぎしてしまったなんて、ナツにバレたら恥ずかしい気がした。


また琢磨を意識してしまった事を冷やかされたりするのも気まずい。





目的地に到着したのは夜9時を過ぎていた。



カップルに人気のスポットだが、夜なので活気はない。



こんなものか…。というのがわたしの第一印象。



でもナツは大はしゃぎ。
隣に勇次がいるからだろう。



好きな人と一緒なら、どんな景色でも素敵な空間になる事をわたしは知ってる。


ナツを少し羨ましいと思った。



車から降りると、琢磨はもう手をつなごうとしては来なかった。



少し小腹が減ってきた4人は、とりあえず軽く食事をする事にした。


わたしとナツが一緒に座り、向いに琢磨と勇次が座った。


今日初めて琢磨を正面から見たかもしれない。



目が合ってしまうのをなぜか避けてしまうわたし。



ナツの話に夢中になっているフリをして、体を少し斜めに傾けた。



なんだか今日は、ホントにわたしどうしちゃったんだろう。



琢磨を意識したくないと思えば思うほど、逆に意識してしまう。



4人は軽い食事を終えて、店を出る。



夜景のよく見えるほうへ移動する事にした。





ナツと勇次はもう、かなりいい感じだ。



しっかりと腕を組んで、わたしと琢磨が見えていないのかしら?と思うほどぺったりとくっついて歩いている。



わたしと琢磨は、一緒に来ないほうが良かったんじゃないかと思った。





そう思ったのはわたしだけじゃなかったようだった。

琢磨とわたし

4人は目的地へと向かう。


運転は勇次で、助手席にナツ。
勇次は運転しながらナツの手を握っている。



ナツは勇次の事を好きとは言っていなかったが、まんざらでもない様子ではしゃいでいる。



ナツはわたしに言わないだけで、多分勇次の事を好きなんだろうなと思った。



後部座席にわたしと琢磨。

琢磨は前の2人に触発されたのか、突然に、でもさりげなく手を重ねてきた。



別に嫌ではなかった。
ただ、違和感というか変な気持ちがしたのを覚えている。



今まで琢磨と何度も遊んで顔をあわせているが、
琢磨とはそんな感じになった事がなかった。



わたしは琢磨には、女として見られていないと思っていた。



だからこそ安心してこのメンバーで遊んでいたのだ。



この時初めて琢磨に触れられて女の子として扱われた気がした。



嫌ではないけど、
なんだか急に居心地が悪くなった。



わたしは琢磨の事は嫌いではないが、好きではない。


おそらく琢磨も同じ。
前の2人がイチャイチャしてるから、ついそんな気分になり、横に性別が女であるわたしの手を触っただけだろう。



そう思った。



まあ、手くらい触りたければ触らせても別にいいや。


特に手をどける事はしなかった。



だんだん目的地に近付くにつれて、夜景が綺麗に見えるようになってきた。


いつのまにかわたしと琢磨はしっかり手を繋いでいた。



ナツは大はしゃぎ。
わたしもうっとりと窓から外を見ていた。



もっとよく見たくて窓を全開に開ける。



琢磨の手を離して体全部を窓に向けた。


チカチカ光る小さい粒を見ながらぬるい風を顔に一杯受けていたら、すごく気持ちがよかった。



すると琢磨がわたしの背後から
琢磨「こっち、風がすげえから閉めてよ」といいながら、
窓を閉めようとした。



「えー気持ちいいのに」 と言いながら振り返ったら、
ものすごい近くに琢磨の顔があり、ぶつかりそうになった。



琢磨は窓をしめながら、わたしの腰に手をまわす。



ずっとリラックスしていたのに、急に緊張して体が硬くなった。


琢磨は窓をすっかり閉めたら、わたしを引き寄せた。


琢磨の体ってこんなに大きかったかなと思った。
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