①ではサッカーファンの筆者が「Jリーグ」に韓国人GKが入団したからではなく、「鹿島アントラーズ」というクラブに韓国人GKが入団したという理由について衝撃を受けたと言ったが、②ではその理由と冒頭のタイトルの意味について述べたい。

Jリーグに興味のない人には分からないだろうが、鹿島というクラブは日本のサッカーファンには特別なチームである。

なぜなら鹿島というクラブは1993年のリーグ発足以降、茨城県という小規模な商圏にも関わらず常に強豪クラブとしてトップリーグであるJ1に君臨し続けて、そのチーム強化のメソッドというのが関係者やファンに一目置かれている存在だからだ。

その強化の流儀にあったのが「外国人=ブラジル人」というブラジル主義の徹底である。

鹿島というクラブは神様ジーコを筆頭にセレソンなど絶対的なブラジル人補強によって結果を残し続けた伝統がある。値段が安くて質の高い韓国人サッカー選手がアマチュアの関東リーグまでいるご時世に、鹿島の韓国人補強というのはなくはなかったが極めて限定的だった。

その伝統を続けていた鹿島が勝利を得るために、現役韓国代表GKを獲得した。だから衝撃なのである。

そこで今回のタイトルにあるトランプ大統領という文字である。

トランプというのは大統領になり「アメリカファースト」と銘打ち、メキシコに巨大な壁を作ると言って、アンチ・グローバリズムを政策として打ち出している。

しかし今の21世紀の時代、こうしたアンチ・グローバリズムというのは無理である。あれだけ名門でブラジル主義という成功を続けてきた鹿島でさえ、自らの伝統を打破して新たな「グローバリズム」で自分たちの内部に韓国代表という外部の血を入れたように…。

「スポーツと政治は別だ」とも思うかもしれない。しかし、考えてみてほしい。歴史をひもとくと、ドイツ人という存在が絶対だったヒットラーは1936年のベルリン五輪を自国の国威高揚に利用した。それはスポーツと歴史には密接な関係がある証拠である。

またサッカークラブの何百倍の金を操っていたアメリカのリーマンブラザーズのような大企業でも、ちょっとしたバランスの変化であっさり潰れてしまう一方で、サッカークラブはイタリア・フィオレンティーナのようにサッカークラブというのは経営破綻してもサポーターの手によって再生も可能な、ある意味で大企業や国家より持続性の強い組織だ。

しかし(別のチームであるが)そんなサッカークラブという組織でも今の時代、勝利や結果の維持のためには自らの内部にグローバリズムという劇薬を注入しないといけない時代になった。

日本には1333年の建武の新政で、後醍醐天皇が過去を懐かしんだ時代の貴族政治が2年で頓挫したという歴史があるが、21世紀の現在も同様で、人類がグローバリズムに限らず、一度行った行動のあとにもう過去に戻れないのは歴史が証明している。

だからトランプ大統領みたく「昔は良かった」というような懐古趣味でグローバリズムの荒波に抗っても結局は無理なのである。

筆者はグローバリズム賛成派ではないし韓国人が大好きという訳でもない。しかし良い悪い、好き嫌いを別にしても一旦始まったグローバリズムの波は不可逆的なモノである。時計の針は逆方向には回らない。
  

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