今回続けてきた「フィジカルの重要性」を説いてきたが、今回でこのテーマは最後にしたい。最後に格闘技にフィジカルを書いてみたい。
とは言っても相撲とボクシングと言ういわゆる正反対・真逆(まぎゃく)・対極の競技を2つ挙げるつもりだが、色々見てみたい。
まず相撲だが知っての通りこの競技は体脂肪率を削ってナンボのプロスポーツの世界では例外的に太って稼げる稀有な競技である。
白鵬や日馬富士などモンゴル人横綱には比較的軽量な力士はいるが、それでも力士と言うのは「人間とは別の動物」のような存在である。
大食漢の力士になると一食のちゃんこで一升(10合)を食べて大盛ラーメン&牛丼特盛各2杯に夜食も追加+おやつと1日の摂取カロリーが3万キロカロリーとどういう胃袋しているんだと言う食生活だと思うが、一般人なら糖尿病になるが力士の場合は尋常ではない稽古で文字通り馬のような馬(牛?)力のある強靭な肉体が作られる。だから相撲取りの身体は固太り(筋肉太り)で、あの身体の陰にあるのは脂肪ではなく強靭な筋肉である。
一方ボクサーのほうが大体試合は1ヶ月から1ヶ月半前に決まり、試合に勝つ為の激しいスパーリング(実践練習)を積み(世界タイトルのような大きな試合の前にはキャンプを張って、ゴルフ場などで1日20km程ダッシュして大舞台に必要な強靭なフィジカルを手に入れる)、2週間前くらいから減量を始め(逆にボクサーもキャンプ時には沢山食べるが)、1日一食のサラダにコップ一杯の水で試合前日の計量に臨み体脂肪率3%の身体で試合に臨むのだ。
ここで疑問を持つのは「何故ボクサーは普段の体重で試合をしないのか?」と言うところである。
以前話をする機会のあったIH出場経験のある男子のボクサーは、身長170cm・体重53kgが普段の体格だった。
ブクブクに太り易い筆者からすれば「試合に出るのに苦労がいらないから羨ましい!」と馬鹿な事を言ったが、そのボクサーは「女の子のダイエットならともかく試合に出るボクサーだと、同じ(試合をしたスーパーフライ級の体重)52kgでも減量しない自分と7kgの減量をした対戦相手とは、テクニックで上回っても最終的に圧倒的なフィジカルの差で潰されてしまう。だから自分はIHでは初戦敗退だった」と言っていた。
対極の競技を2つ出して格闘家が強靭なフィジカルを手に入れる手段を紹介したが、格闘家と言う肉体派エリートも強靭な筋肉を得るには尋常ならざる努力が必要なのである。
参考文献 大相撲のぶっちゃけ話 曙太郎 宝島社 2012年