〈①からの続き〉こうして前回はボクシングジムの寮の個室を得られるシステムを説明したが、寮の個室を得るのに厳しい生存競争のある世界は他にもある。

それは相撲だ。大相撲の世界で上に上がった力士で今までの相撲人生で一番嬉しかったのはいつかと訊かれたら、大体の力士は番付の最高位に上がったことではない。

それはどの力士も幕下から新十両に上がった時が一番嬉しいと話す。十両から上をいわゆる「関取」と呼び、給料も支給されたり兄弟子の雑用からも解放されて逆に自分の世話をしてくれる弟弟子が出来るのがこの時だが、この幕下→新十両の出世の時に与えられるモノの1つとして「(いわゆる寮の)個室」である。

それまで相撲部屋で団体生活になりプライバシーがない世界だったのが、この時に自分の個室をもらえ始めて自分の空間というのを満喫出来るのである。

こうしてボクシングや大相撲のようなプロ格闘技の世界では寮の個室というのも一種のモチベーションUPの為の材料と化す。

格闘技による立身出世というのはかくも厳しい世界なのだ。