<①からの続き>①ではメッガンがアジアで行われた軽量級のタイトルマッチで勝利したことを述べたが、この後の両者のストーリーが対照的なのが皮肉である。

このタイトルマッチに敗れたパッキャオは、自分はフライ級ではもう戦えないと考え、一気に3階級も上げて再起。東洋圏内で最強になった後、練習目的で渡米しLAで調整中にIBFのSバンタム級タイトルマッチで挑戦者が怪我をして、急遽パッキャオに代打出場のオファーが来た。

負けても失うモノはないパッキャオは即決で出場。LAで行われたこのタイトルマッチで当時ボクシングの本場アメリカで評価の高かった南アフリカ人王者を衝撃的なKOで一蹴。アジアからやって来た代役挑戦者はその後アメリカのプロモーターに引っ張りだこになって1試合10億円を稼ぐ超一流の王者に変貌した。

一方そんなパッキャオにKOしたメッガンは戴冠後はパッとしなかった。2度目の自国開催の防衛戦でパッキャオの同胞M・ツニャカオに逆転KO負けを喫して再浮上もなかった。

しかしメッガンが不幸だったのはこの後である。あのパッキャオにKO勝ちをしたボクサーという経歴がなまじっかある為に海外のプロモーターから自分の若手選手の噛ませ犬として呼ばれて、それこそ3階級上の選手と試合が組まれて自分の寿命を削るようなマッチメイクを組まれたのである。

試合のパンフレットに「パッキャオにKO勝ちした男」と書けるだけで商品価値はあったのである。

こうしてあるアジアで行われた世界タイトルマッチの「勝敗」が2人のボクサーの運命を劇的に変えることになったが、負けたボクサーがスターダムを駆け上がり、勝ったボクサーが哀れな末路になるとは「勝つんじゃなかった」ではないが、負けた方が出世して勝った方が落ちぶれるというのも、勝利の女神は気まぐれというが気まぐれにも程があるだろ!?と思ってしまう。