原題:Exhibition on Screen: Sunflowers 製作年:2021年
製作国:イギリス 上映時間:89分
アート・オン・スクリーンのシリーズって興味深いのだけど、上映が限られて
いるし、入場料も倍近い.この度珍しく近所のシネコンにやってきたので、
観てみた.綺麗な映像、大画面で観る名画は眼福であった.
本年度累積72本目は、ゴッホのひまわりをめぐるドキュメンタリー作品.
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世界の優れた美術展を高画質の映像におさめ、映画館のスクリーンで
上映するドキュメンタリー「アート・オン・スクリーン」の1作.
巨匠ビンセント・ファン・ゴッホの代表作「ひまわり」.「花瓶にさされた
構図のひまわり」は7点制作されたことが認められているが、ゴッホはなぜ
ひまわりを題材に選び、何を伝えようとしたのか.
アムステルダムのゴッホ美術館、ミュンヘンのノイエ・ピナコテーク、
ロンドンのナショナル・ギャラリー、東京のSOMPO美術館、アメリカの
フィラデルフィア美術館など、現存する「ひまわり」を所蔵する世界5都市
の美術館を巡り、「ひまわり」にまつわる謎を解き明かしていく.
以上は《映画.COM》から転載.
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昨年1年間はゴッホの花に関するカレンダーをブログ掲載していたので、
かなりゴッホに関する知識は豊富な状態で、本作に出てくる「謎」なんて
ものは一つもなかった(苦笑).
あえて言うなら、ゴッホとゴーギャンのアルルでの共同生活が破綻した
理由の説明が事細かにされた事が少し新鮮だったかもしれない.
ゴッホとゴーギャンの描くスタイルの違いから発生した仲違いと言う.
同じモデル、ジヌー夫人を描いた作品「アルルの女」はゴッホとゴーギャン
が同時に描いているのだが、ゴッホはモデルを前にサラッと1時間で
描き上げるのに比し、ゴーギャンはスケッチだけをして、後で部屋に
帰ってから、背景も含めて想像で描き上げた.彼はこれを抽象と呼んだ.
ゴッホ《アルルの女》1888年
ゴーギャン《夜のカフェ》1888年
つまりゴッホは即時性とかそのままの描写を重んじて、ゴーギャンは思索性
、抽象性を重んじた. そこに二人の芸術性の決定的な差が生まれ、二人の
生活が破綻に至ったと.
それでも、ゴーギャンは自分を迎えるにゴッホが描いてくれた「ひまわり」の
画が気に入って、パリに帰った後もゴッホに「ひまわり」を譲ってくれと請うた.
ゴッホはこれを断り、冬であったこともあり、その「ひまわり」を元に描いた
作品が2点あり、これをゴーギャンに送ったらしい….
アルル時代にゴッホは「ひまわり」を7点描いているが、代表作とされる
この3点を本作では並べて見せた.大元となった「ひまわり」はロンドンの
ナショナル・ギャラリー所蔵.模写したのは日本のSONPO美術館所蔵.
もう一つの模写品は、オランダのファン・ゴッホ美術館が所蔵.
3点並ぶと壮観なのだが、SONPO美術館所蔵品のみゴッホのサインが無い.
これが贋作の噂を呼ぶ原因の一つなのだが、本映画ではゴッホ美術館の
精細な調査により、本物と言い切っていた(笑).
《ひまわり》SONPO美術館所蔵
真贋はともかく、こうして現存する6点のひまわりの微細な表現と解説を
堪能出来たし、唯一日本で戦災で焼失してしまった「ひまわり」も残存
するカラー写真で提示されるなど貴重な映像も観られたので大満足.
このシリーズは他も観てみたいと感じた.
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