あと少しで「平成」が終わる。
 
この連休は、1ケ月前から、「終活」のためと、いつ何時、死ぬかもしれないのもあって、身の回りの整理を計画していた。
死ぬかもしれないと言うのは、事故の時に感じた事で、今、現在、僕が病気とかではないです。
 
土曜日は一日グダグダ過ごし、日曜から大掃除しています。
 
誰しも、多分経験すると思うけど、掃除している最中に写真や懐かしい物が出てくると、ついつい見入ってしまって先に進まない事があると思う。
 
僕も、そう。
始めるまでは、そんな事思ってもおらず、とにかく不要な物は捨てる!と意気込んでいたけど、出るわ、出るわ、これなに?と記憶に無い物も出てきて、読んでいたり見たりしているうちに、あ~!と思い出してくる。
 
何日も前から、頭に浮かんでいたのは、チャマが残した、僕への最後のメッセージ。
今は誰も使わないであろう「フロッピーディスク」に、それは残してある。
ただ、そのディスクの行方を思い出す事が出来ず、少し焦っていた。
 
大量の服。
これはほとんど処分。
古いVHSのビデオテープや昔の8ミリビデオで撮影した旅行のテープも不要な物は廃棄。
チャマの書き残した書類なども、整理し処分する事にしている。
なにかあった際に、他人に処分されるのは嫌だから、僕の手で処分する事に決めた。
今の住居の一部屋は僕の倉庫のようになっていて、その五分の三くらいは、整理できた。
洋服タンスの中には母のコートなどもまだ入っていて、それは、遠くに行った姉に相談し、写真を送り、処分していいか決めた。
 
そのタンスの上に大きなダンボールがあった。
ひとつめを開ける。
そこにはチャマの部屋で使用していたカップがいくつか、それとお皿も何枚か。
今は姉の趣味で、皿やお椀は白い物で統一している。
いつだったか、チャマと僕のお気に入りの絵皿がすべて無くなっていて、問いただしたら「趣味悪いから捨てた」と言われ、ショックで言い返す事も出来ず終いだった。
仕舞ったままの絵皿が、ここにあった。
 
ふたつめの箱を開ける。
この箱に入れる時は、多分、心身共に、暗闇の中だったと思うので、とにかく入れておこうと思っていたに違いない。
あの頃、チャマと僕の生活の中にあった物が、無造作に入れてあった。
 
チャマが使っていた、マスク。
歯磨きに使っていた、コップ。
「MD」のケース。
僕と出会う前に撮った、写真。
なにかの、コード。
虫さされのかゆみ止め、ムヒ。
ジャガイモなどの皮をむく、皮むき器。
僕のために書いてくれた、パソコンでの入力方法の紙。
細々とした物が入っていた。
 
その箱の一番奥に、あまり使った事のない、親父クサイ、昭和を感じる古びた茶色のバッグがあった。
なにも入ってなさそうに折りたたんである。
それでも、中を確認した。
 
そこには、見覚えのある、黄色と青のふたつの小さいアルバムがあった。
 
そっと開くと、そこには、チャマしか写っていない写真で埋め尽くされていた。
 
これって、
これって、
 
火葬場で時間を過ごす時に、来てくれた人達に見せようと、僕が用意したアルバムだった。
今、思うと、あんな状況の中で、こんな事を考え、ちゃんとチャマの火葬を終わらせようと考えた結果の形が、これだった。
 
僕は、流れる時間の中で、あれから、多くのものを落として生きていたように感じた。
 
そのアルバムの最後のページに、2枚の紙が挟まっていた。
見覚えのある、紙。
開くと、きっと、僕は泣き崩れるだろう。
 
少し開くと、チャマの文字で、「みみこへ」と見えた。
その部分だけで、僕は、声を殺して、泣くしかできなかった。
 
僕は、流れる時間の中で、あれから、いくつもの大切なものを失くして生きていた。
 
毎日、チャマに話しかけ、何かある毎にチャマに相談していたけど、それは自己満足に過ぎなかったと気がついた。
 
そのバッグに、また手を入れて探ると、、、
 
あった、「フロッピーディスク」。
 
それと一緒に水色の封筒が添えてあった。
 
それも記憶が戻る。
 
チャマの最後のメッセージを印刷して、中に入れてあるという事を。
 
「今まで二人三脚で・・・・・」
 
と、始まる文字。
 
イメージ 1
 
そこから、涙が怒涛の如く流れ、読めなかった。
 
他の部屋でテレビを見ながら笑っている姉に悟られないように、声を殺し泣く。
 
やっぱり、僕は、なにか、どこかに置き去りにして、生きているようだ。
 
僕の「平成」は、ふたりの姉、チャマ、そして、母との哀別の月日だった。
 
そのあとの「令和」は、僕にとって、特になんら変わらぬ日々を過ごすだろうけど、気持ちを新たになど、思えるはずもない。
 
世間は変わるかもしれないし、他人様は変わるかもしれない。
でも、僕は、あと少し生きるのみ。
 
この「令和」で終えられる事を望むしかない。
 
年号が変わった。
 
さようなら、平成。
僕の一生のほとんどを費やした、平成。
 
チャマと出会えた、平成、ありがとう。