『出会っていた二人』
<テロップ>
1回目の出会いは
中学1年の夏。夏祭りの帰り。
浴衣姿の竹宮芽衣(南沢奈央)と山岸美亜(岡本玲)が連れ立って歩いている。
「それにしてもすごかったね。美亜の回り人だかりできてたもんね。」(芽衣)
「釣るのは得意なんだよね。ヨーヨーも金魚も男も。」(美亜)
「えっ?」(芽衣)
「なんちゃって。」(美亜)
二人が歩く先ではケンカをしている中学生男子の集団。
その中には、たかチャンこと高橋陸(木村了)とコータ(山田ジルソン)がいた。
陸にやっつけられて、先輩たち(中谷みつとし)(内枡聖也)
(足利翔一)(一ノ瀬将太)が、芽衣たちの脇を抜けて逃げてゆく。
残った先輩(山田賢明)(小柳巧?)とまだ喧嘩している陸。
それを見かける芽衣たち。
「ケンカだ。」(美亜)
「・・・」(芽衣)
「行こっ。」(美亜)
二人を見た陸は、ケンカの最中にも関わらず芽衣の美しさに見惚れてしまう。
「あっ。カワイイ。」(陸)
翌日。芽衣たちの体育の時間。
体育館でサボっている陸とコータ。
「5時間目、だるいんだよ!」(陸)
「俺たち、生まれるとこ間違えたんだよ。」(コータ)
「うん?どこがいいんすか?」(陸)
「スペインだよスペイン。
スペインっつう国は最高なんだよ。昼飯…。」(コータ)
「昼飯食ったら3時間ぐらい休めんだよね。
あっ!コータ君も昨日8チャン見たんだ。」(陸)
「見てねえよ。俺はただスペインっつう国が最高だって。」(コータ)
「そうっすか。さすがコータさん。よっ!スパニッシュ。」
二人の背中でホイッスルが鳴る。
「ジャポンは昼飯食ったらすぐバスケっす。」(陸)
「無理。あり得ない。はい。就寝。」(コータ)
何気なく背中でやっている体育のバスケ授業を見る陸は、芽衣を見つける。
「あっ!同じ学校だったんだ。」(陸)
「芽衣、ナイッシュー。」(美亜)
<テロップ>
1回目の出会いは偶然で
2回目の出会いは運命。
もし、それが本当なら
中学3年生の春。陸と敦史(溝端淳平)の体育の時間。
ストレッチをしている二人。を
「まさか3年になって、同じクラスになるとはな。よかったな。」(陸)
「・・・」(敦史)
「あらら。シカトしちゃって。ホントはうれしいくせに。はい交代だよ。」(陸)
「喜んでんのはお前だけだよ。どうせまたケンカとか。」(敦史)
後ろから羽交い絞めする陸。
「痛い。痛い痛い…。何すんだよ?お前。」(敦史)
「うれしいんだろ?ホントは。正直に言えよ。」
「うれしいですうれしいです。」
「いいよ!」
開放する陸。
「はい。じゃあ5人ずつチームになって。」(教師)
「はーい。」(生徒たち)
陸と同じ3年1組になった芽衣たちも同じ授業を受けている。
「芽衣がいると心強いね。」(優梨)
「ねえ!」(美亜)
「向こう?」(生徒) 「行こう行こう。」(生徒)
芽衣は新しくクラスに来てポツンとしていた沙良(桜庭ななみ)に声をかける。
「中川さんだよね?
私竹宮芽衣。一緒のチーム入んない?」(芽衣)
頷く沙良。
「よろしくね。行こっ。」
美亜、中西優梨(鈴木かすみ)らの仲間に迎えた。
また、敦史と知り合いだった陸は、夏樹(柳下大)や充(田島亮)とも親しくなる。
「あれ?何?敦史と高橋って前からの知り合い?」(夏樹)
「まあな。こいつひでえんだよ。」(敦史)
「『たか』でいいよ。ちなみにうち、定食屋で、
俺好きな食べ物カレーライスっしょ。
で…好きなバンドは筋肉少女帯ってやつ。」(陸)
「マジで!?」(充)
「いたよいたよ。こんな所に。」(夏樹)
「えっ?もしかしてお前らも、筋少マニア?」(陸)
「何だよ?キンショーって。」(敦史)
「いやいや。こんな所で会えるとは。」(陸)
陸の顔にバスケのボールが当たる。
「痛え。」(陸)
ボールをとりに来た美亜。
「えっ?ご…ご…ごめんなさい。」(美亜)
謝ってボールを拾って、向こうで芽衣たちと試合を始める美亜。
「おっと。芽衣選手にボールが渡りました。
芽衣選手から優梨選手へ。美亜選手へ。そしてまた芽衣選手へ。」(夏樹)
「うーん。中3になったというのに代わり映えのしないメンバーですなー。」(充)
「おっと。華麗なフェイントからのシュート。決まりました!」(夏樹)
「素晴らしいジャンプシュートでしたね。」(充)
「やるじゃん!」(美亜)
芽衣の見事なシュートを敦史と陸が見つめる。
「結構うまいんだな。」(敦史)
試合中に「はい!」と芽衣がパスすると、
顔面にボールを受けて倒れる沙良。
「あちゃー。どんくさい選手がいます。」(夏樹)
「素晴らしい顔面キャッチでした。」(充)
体育館、表。
沙良を囲んでる芽衣たち。
「ごめんね。痛かったよね?」(芽衣)
「大丈夫。」(沙良)
「あっ。あと付いてる?」(美亜)
「大丈夫大丈夫。付いてないよ。」(優梨)
陸たちもやってくる。
「あっ!鼻血ブー?」(陸)
「顔面キャッチあれ痛そうだったもんな。」(夏樹)
「右左?どっち?ほら。取りあえず靴脱いで。」(陸)
「えっ…。」(沙良)
「あのう、鼻血出てる方の反対の土踏まずをポンポンってたたくと止まんの。
ねっ。ほら。」(陸)
「だ…大丈夫。鼻血出てない。」(沙良)
「あっそう。でもよく冷やしとけよ。腫れると痛いかんね。」(陸)
「ありがとう。」(沙良)
「思ったより怖くないんだね。
ただのケンカ好きのヤンキーにしか見えないけど。」(美亜)
「だから応急処置に詳しいんだ。」(優梨)
「ちょっとちょっと。俺、ケンカ怖い。
何事も、話し合いが一番だから。暴力反対だよ。」(陸)
「よく言うよ。」(敦史)
敦史を引っ叩く陸。
「痛っ。はっ?」(敦史)
一同失笑。
「そんなことないから。っていうか芽衣ちゃんバスケうまいな。」(陸)
「お姉ちゃんのバスケの練習によく付き合ってたんだ。」(芽衣)
「なるほどね。」(陸)
いきなりボールをシュートして決める陸。
「おお!」(一同)
「やるじゃないか。高橋とやら。」(充)
「うまいだろ!芽衣ちゃん勝負しようよ!」(陸)
「うん!」(芽衣)
「しよっ!」(陸)
みんなは校庭に出てバスケを楽しむ。
《オープニング 赤い糸 3話》
3年1組教室。
ホームルームで担任・井上(矢柴俊博)と生徒が文化祭の出し物を決めている。
「たこ焼きビンゴ2票。エンドレス迷路5票。占いの館が22票。
ということで文化祭は占いの館に決定。はい拍手。」(井上)
拍手する生徒。
「じゃあ委員長。係り決めてくれ。」(井上)
「はい。」(委員長)
「選ばれた人はみんなちゃんと責任持ってやんだぞ。」(井上)
「はーい。」(生徒たち)
「はい。じゃこれから係りの番長を決めます。くじ引きで。
じゃあ順番に並んでください。」(委員長)
「よっしゃ!」(充)
「番長なんかになっちゃったら忙しくて先輩呼べなくなっちゃうよ。」(美亜)
「先輩先輩ってよ、そんなに年上が好きなのかねと。」(充)
「包容力が違うんだよね。まあガキには分かんないか。」
「ほう。そんなこと言って。
文化祭終わったら俺たちと気軽に口利けなくなっちゃうよ。」(充)
「はあ?」(美亜)
「バンドやるんですバンド。俺たちで。
だから皆さんはライブの盛り上げ番長的な方向性で
お願いします。失礼します。」(陸)
「お願いします。」(充・夏樹)
「後輩たちにワーキャーワーキャー囲まれて
大変なことになっちゃう予定なんだけどね。」(夏樹)
「そうなんです。」(充)
「寝言は寝てから言え。」(美亜)
「寝言じゃないです本音です。」(充)
「引きます!」(陸)
陸がくじを引く。
「はい引いた。あっ・・・。」(陸)
「えっ?もしかして?」(一同)
「外れ!」(陸)
「おい!びっくり…。」(一同)
「アメとムチか。」
笑っている芽衣。
昇降口。
ため息をつきながら靴に履き替える芽衣と敦史。
「2人とも大当たりだったね。」(美亜)
「当たりっつうか、外れ?」(敦史)
「もう元気出しなよー占い番長。主役だよ。」(優梨)
「そうだよ。」(美亜)
「私なんて大道具番長だよ。」(芽衣)
「大丈夫だよ。うちらも手伝うからさ。」(美亜)
「でもさ、沙良が俺たちのバンドのダンサーやってくれるとは思わなかったよな。
ホントありがとう。超よろしく。」(陸)
「・・・」(沙良)
「じゃあ俺行くわ。」(夏樹)
「おいナツ。部活終わったら即行でたかんち来いよ。いいか?
即行だかんな。」(充)
「OK。分かった。」(夏樹)
「JUST DO IT!」(夏樹・充)
芽衣を誘う陸。
「俺らのバンド練習見に来いよ。カレー食わしてやるから。」(陸)
「カレー?」(芽衣)
「おう。ごちそうする。」(陸)
美亜と優梨がくいつく。
「マジ!?行く行く。」(美亜)
「はい??」(陸)
「えっ?行っちゃ駄目なの?」(優梨)
「・・・ いいよいいよ。みんな来い!ハハハ(苦笑い)」(陸)
「俺、用があるから帰るわ。」(敦史)
「アッくん付き合い悪くない?」(美亜)
「色々あんだよ。じゃあな。」(敦史)
「おう。バイバイ。じゃあな。」(一同)
「・・・」(芽衣)
陸の家。定食屋『たか』。
「ここ俺んち。」(陸)
「高橋だから定食屋たか?」(優梨)
「まんまじゃん。」(美亜)
「ただいま。」(陸)
「親父。お客さん。
入って入って。入って。どうぞどうぞ…。
お入りください。入ってください。」
充、美亜、優梨、沙良が店に入ってゆく。
「芽衣。」(陸)
「うん?」(芽衣)
「腹減ったらいつでも来てよ。
芽衣が来たら俺、張り切って作っちゃうんだから。」
「うん。」
「どうぞ。」
芽衣たち5人の前にカレーが並ぶ。
「はいカレー。召し上がれ。」(陸)
「いただきます!」(一同)
「うまいっす。うん!」(一同)
「ラッキョウも食いな。」
と、父・忠明(林和義)が山盛りのラッキョウを乱暴に置いて睨みを効かせる。
「ありがとうございます。」(充)
「親父。後やっとくからいいよ。」
「おう。じゃあ洗濯物入れてくっからよ。
万が一お客さん来たら、呼べよ。」(忠明)
「おう。何とかする。」(陸)
「万が一かよ。」(充)
「これが終わったら、優梨も美亜も一緒に特訓だかんな。」(充)
「何の?」(美亜)
「ダンサーだよダンサー。
沙良一人にやらせるつもりかよ。なあ?沙良。」(充)
頷く沙良。
「痛っ。痛てて…。」(美亜)
「痛い。急におなかが。」(優梨)
帰ろうとする二人の腕を掴む沙良。
「一緒に・・やろう。」(沙良)
「ほら2人とも。沙良の本気を受け止めろ!」(陸)
「はい。」(美亜・優梨)
諦めて座る二人。
「はい食って。」(陸)
笑ってみている芽衣。
緑丘精神医療センター。
薬物依存からの社会復帰を目指してリハビリ中の母・夏実(山本未來)が
他の患者と共にセミナーを受けている。
「私たちは、薬物依存症からの回復と
社会復帰という目的のためにここにいます。
心を開いて仲間の声に耳を傾けてください。
それでは最初に、真理さんお願いします。」(カウンセラー・桜田聖子)
指名されたリハビリ中の真理(岡田あがさ)が語りだす。
夏実は横で黙々と折鶴を折っている。
「私は、去年まで体重が90kgありました。
学校とか、バスとか電車でも
私、いつもみんなに見られて、笑われてるような気がして。
そんなとき、ネットでやせる薬を見つけちゃったんです。
それのんだらホントに、すごいすごいやせたんです。」(真理)
(そのころ、敦史は夏実を訪ねに医療センターに来た)
「薬をのむと耳鳴りとかしたり、頭痛くなって、
このまま死んじゃうんだなって思った。
でもやめたらまた太ると思うと、もうすごく怖くて。怖くて…。」(真理)
「真理さん、ありがとうございました。
それでは、夏実さんお願いします。」(カウンセラー)
「はい。夏実です。
私は、ここに来るのはもう四度目なんですよね。
ずっと助けてもらってたんです。
何やってもつらいことばっかりだし。
ホント、楽になれるんですよね、覚せい剤って。
だから、ここまで生きてこれたのかもしれません。
でも、生きてく目的は、自分で見つけなきゃいけないって
そう思ったんです。
私がうちに帰るのを、心から待ってくれてる人がいます。」(夏実)
廊下から見ている敦史に話しながら気付いた夏実。
医療センターの花壇を歩く夏実と敦史。
「ふーん。アッくん占い師やるんだ。」(夏実)
「うん。」(敦史)
「いいじゃない。楽しそうで。」(夏実)
「そうかな?」
「ねえ?森崎さんよくしてくれてる?」(夏実)
「うん。」
「何か困ってることないの?
何かお母さんにできることがあったら遠慮しないで…。」(夏実)
「ないよ。大丈夫。」
「そう?うん、よかった。
ここってね、みんなで花壇の世話しなきゃいけないの。
この花、グラジオラスっていってね、前にお母さんが植えたの。
土の中でゆっくり成長する種類の球根だから
花を咲かせるのに2年もかかるんだって。
だから、今年初めて咲くんだけど。
またここに来て、この花見ることになるなんて、考えもしなかった。
何度も何度も同じこと繰り返して。
ホント駄目な親だよね。
ごめんね。」(夏実)
「・・・」(敦史)
「でもこれで最後にする。薬は絶対やめてみせる。」
「母さん。」
「うん?」
「ゆっくりでいいよ。
ゆっくり治せばいいよ。」
「ありがとう。」
陸の家の部屋。
陸と充、芽衣がバンドの準備をしているが・・。
「駄目だ完全に壁にぶつかってるわ。
たか。『高木ブー』にしない?」(充)
「『ブー』はきついだろ。なあ?芽衣。」(陸)
「『高木ブー』って…。」(芽衣)
沙良は美亜と優梨の前に立ち、ダンスの振り付け指導。
「そこ違う!」(沙良)
「えっ?」(美亜)
「いい?顔も右!」(沙良)
「はい。」(美亜・優梨)
「ご一緒に。せーの。1 2 3 4。」(沙良)
「マジきっついわ。」(美亜)
「いつか吹っ切れるときが来るのかな?」(優梨)
「ローリング!」(沙良)
「え~~!?」(美亜)
「もう勘弁してよ。」(優梨)
「おい。友達来たぞ。」(忠明)
「よっ!お待たせ。」(夏樹)
「お~ナツ!」(一同)
「お待たせ!」(夏樹)
「お前ちゃんと部活JUST DO ITしてきたか?」(充)
「すいません。」優梨が忠明の差し入れを取りに行く。
「毎日サッカーで大変だねナツも。」
「まあ部活しに学校行ってるようなもんだからな。
俺の取りえはサッカーだけだし。」(夏樹)
「取りえがあるだけましだっつうの。」(美亜)
「何だよ?俺が何の取りえもないみたいじゃねえかよ。」(充)
「何かあんの?」(美亜)
「ないです。」(充)
「ナツ、カレーだよ。」(優梨)
「おーありがと。腹減ってたんだよ。」(夏樹)
「お茶だよ。」(陸)
「ありがと。」(夏樹)
「すごいおいしかったよ。」(優梨)
「えっ。ニンジン入ってるし。」(夏樹)
「ニンジン嫌いなの?」(芽衣)
「嫌いだよ。馬じゃあるまいしさ。」(夏樹)
「駄目だよ好き嫌いしちゃ。成長期なんだから。」(優梨)
あのね、ニンジンっていうのは栄養がたくさんあって、目にもいいの。
あとね、緑黄色野菜っていうのは、
カロテンも豊富でビタミンAもいっぱい入っててね…。」(優梨)
「ねえ?優梨。俺ずっと前から思ってたんだけどさ。
優梨って…。給食のおばさんみたいだな。」(夏樹)
「何それ!」(美亜)
「全然うれしくない!早く食べなよ!」(優梨)
「冗談だよ~怖えな。あれ?そういや敦史は?」(夏樹)
「帰った。何か用事あんだって。」(美亜)
「ふーん。あいつ昔から一人行動多いんだよな。」(夏樹)
「・・・」(芽衣)
文化祭の準備をしている3年1組。
敦史は占いの本を読み漁っている。
「嘘?マジ?超うれしい。
でもさ、バイト忙しいんじゃなかったっけ?うん、そう。」(美亜)
美亜は彼氏と電話中。
「沙良。どう?」(芽衣)
大道具番長の芽衣は、描いた「占いの館」看板を見せる。
笑顔でGOODサインを出す沙良。
「芽衣、この野郎。何で大道具番長なんて当てるんだよ?」(陸)
「自分でもびっくりだよ。」(芽衣)
「っていうかこれ全然切れないんですけども。」と角材を切っている充。
「そんなんじゃ指落とすぞ。」(森崎)
「えっ?指落とす?」(充)
そこに森崎孝道(小木茂光)がやってきたのだ。
「おい敦史。差し入れ持ってきたぞ。」(森崎)
そう言うと、森崎は充に道具の使い方を教える。
「ねえ?誰、誰?」敦史に聞く美亜。
「大叶神社の神主の、森崎さん。」(敦史)
差し入れを渡された陸が敦史に持ってくる。
「どういう関係?」(陸)
「母親の昔からの知り合いで、今世話になってる人。」(敦史)
「何で世話になってんの?」(美亜)
「まあ、大人の事情ってやつ。」(敦史)
通りかった芽衣が敦史を見る。
「つうか俺何占うの?」(敦史)
「そりゃ~恋占いっしょ。」(美亜)
「あっ。よく言うよね。
運命の相手とは、赤い糸で結ばれてるとか。」(芽衣)
「ねえ!」(美亜)
「そのとおりだよ。」(森崎)
敦史のところに森崎が来る。
「あっ。赤い糸の話、聞きたいか?」(森崎)
「えっ?聞きたい。」(美亜)
せきばらいする森崎。
「それでは、この由緒正しき大叶神社の宮司である私がお話ししましょう。
もともと、赤い糸の話は、中国の有名な伝説からきているんだ。
運命の2人の、切ない恋の話だよ。
昔、ある男が、いいなずけに会いに行くために、山道を歩いていた。
すると、1人の老人が現れた。
老人は、自分のことを、冥界の人間で、
人と人をつなぐ、赤い糸が見えると言ったんだ。」(森崎)
「メイカイって何?」(夏樹)
「死後の世界のこと。」(優梨)
「老人は、男に、
『今から会ういいなずけとお前は結ばれない。
お前と、赤い糸が結ばれているのは、あの幼子だ』と、
その場を通り掛かった、1人の赤ん坊を指さしたんだ。
怒った男は、赤ん坊と母親もろとも、付き添いの者に殺させたんだ。」(森崎)
「えっ?いきなり殺しちゃうの?」(陸)
「しかし…。」(森崎)
図書室。その逸話の本を読んでいる芽衣。
『(芽衣の心の声)
しかし、男といいなずけは結ばれることはなかった。
そして十数年後、男に運命の出会いが訪れた。
その相手が、あのときの赤ん坊だったのだ。
一命を取り留めていた赤ん坊は
その後美しい女性に成長していた。
過去を知らずに再会した2人は、恋に落ちた』
沙良が芽衣を見つける。
「芽衣ちゃんここにいたんだ。」(沙良)
微笑み頷く芽衣。
「何読んでたの?」(沙良)
「さっき森崎さんが話してた伝説の本。
1000年も前の話なんだって。」(芽衣)
「へぇ。」(沙良)
席に着き、読んでいた『中国の故事・伝説』の本を開いて説明する芽衣。
「そのころ中国は北宋時代でね、
人と人との出会いは偶然だけど、
再会するのは運命だって信じられてたんだって。」(芽衣)
開いたところを黙読し始める二人。
『(芽衣の心の声)
やがて2人はお互いの過去を知り、その事実に苦しんだ。
そして別れを選んだ。
もし自分たちが、運命の赤い糸でつながっているのなら、
もう一度会えるはず。
そう信じて。』
日が暮れた放課後。昇降口前に芽衣と沙良。
『お互いの過去を知り、その事実に苦しんだ。そして別れを選んだ。
もし自分たちが運命の赤い糸でつながっているのなら、
もう一度会えるはず。そう信じて。』
と携帯に打ち込んでいる沙良。
「どんなに好きでも、別れを選ぶ恋か・・。」(芽衣)
打ち込み終わって送信する沙良。
「沙良。さっきから誰にメールしてんの?」(芽衣)
「誰にも言わない?」(沙良)
「うん。」
「明日の私に、赤い糸の伝説をメールしてるの。」(沙良)
「明日の私?」
「うん。」
「何?それ。」
「うーん、日記みたいなものなんだけど、
自分の正直な気持ちとか、そのときにあったことを、
自分あてのメールに書いて送るの。
それで、届いたメールを『明日の私へ』っていう
フォルダに入れておくんだ。」
「へぇ~。自分あてのメールかぁ。
でも、忘れないように何かに残しておきたい気持ちって、分かる気がする。」
「ホント?芽衣ちゃんなら分かってくれると思った。」
「大道具番長たちお待たせ。」(美亜)
美亜たちが昇降口から出てきた。
「文化祭まであと1週間か。美亜。ギターを弾く俺に惚れるなよ。」(充)
「大丈夫。わたしタメには全然興味ないし。」(美亜)
「あっそうですか。」(充)
「美亜は年上好きだもんね。」(優梨)
「優梨。ドラムをたたく俺に。」(夏樹)
「はいはい。便乗しないの。もっとオリジナルで考えてよね。」(優梨)
「はい。」(夏樹)
文化祭『鈴森祭』当日。
賑やかな校庭とは裏腹に人気のない校舎裏には、
安田愁(若葉竜也)が携帯で誰かと話している。
「うん分かった。
すぐ欲しいならこっちの回してやるよ。うん。
俺が直接村越さんに頼めば大丈夫だろ。
ああ。はい。分かった。じゃあね。」(愁)
川口ミヤビ(平田薫)が来て、
鞄にあったパンダのアクセサリーな無いことに気付く。
「あっ。パンダさんいない。」(ミヤビ)
「バカ。お前何やってんだよ?捜してこい。」(愁)
そこに、他校の女子生徒(下垣真香)が来た。
「もしかしてパンダさんのこと探してんの?」(愁)
頷く生徒。ミヤビが席を外す。
「あのう。友達に、寝なくても大丈夫で
集中力もつくって聞いたんですけど。」(生徒)
「受験生?」(愁)
頷く生徒。
「そっか。頑張り屋さんほど時間ないもんな。」(愁)
「でも、ヤバいんですよね。」(生徒)
「全然大丈夫だよこんなん。サプリみたいなもんだから。
何つうかなこう・・自分の力を信じさせてくれるっつうか
私はできるって思わせてくれる、サプリなんだよね。」(愁)
パンダのアクセサリーを見せる愁。
「・・・」(生徒)
ミヤビが離れたところから見ている。
「受験頑張ってね。
まあホントは5なんだけどさ、お試し期間っつうことで3でいいや。」(愁)
3000円を渡して立ち去ろうとする生徒。
その腕を掴む愁。
「もし何かあって警察に何聞かれても
パンダさんから買ったことは内緒だよ。
誰が言ったか、すぐ分かるから。」(愁)
「はい。」(生徒)
見ていたミヤビの前を通り、帰って行く生徒。
学校の廊下。
芽衣が呼び込み。
「占いの館で~す。3年1組でやってま~す。
よろしくお願いしま~す。占いの館…。」
きらびやかな神主姿で歩いてきた敦史に絶句する芽衣。
「どうしちゃったの?その格好。」(芽衣)
「やっぱおかしいよな。」(敦史)
「そんなことないよ。陰陽師みたい。」
「それってほめてんの?」
陸たちも敦史に気付き、やってくる。
「おい!何だ?その格好。」(陸)
「お前何キャラだよ?それ。おい!」(充)
「マジでよかったよ。占い番長当たらなくて。」(夏樹)
「俺やっぱやめる。」(敦史)
「逃げんな逃げんな。」(充)
「いまさら何言ってんですか?おら。」(夏樹)
「カメラカメラカメラカメラ…。」(陸)
「おとなしくしてなさい。」(夏樹)
「パシャリとなと。」(充)
写真を撮られる敦史。
「芽衣。俺らのバンド2時からだから、絶対見に来いよ。
心にきゅんとくるメッセージソング歌うから。」(陸)
「何それ?」(芽衣)
「何だろうね。」(陸)
水晶占い師のような黒いベール姿の由希(池田愛)と
手相占い姿のクラスメイト(藤村直樹?)がやってくる。
「西野君行くよ。」(由希)
由希がにらみを利かせると、ついてゆく敦史。
「気合入ってんな~。」(夏樹)
「あいつもあいつで何キャラだよ?」(充)
「おい、たか。行くよ。準備準備。」(夏樹)
「ああ・・」(陸)
「決戦だ!ばかやろ・・」(充)
先に行く充と夏樹。
「2時だからな。絶対来いよ。」(陸)
「分かった。頑張ってね♪」(芽衣)
「うん。頑張る。」(陸)
陸も後を追いながら廊下に落ちていたパンダのアクセサリーを蹴る。
「あれ?待ってよ。」(陸)
そのパンダのアクセサリーに気付き、拾う芽衣。
「返して。」(ミヤビ)
奪い取るミヤビ。
「これミヤビの…。」(芽衣)
パンダの後頭部に入っているドラッグの錠剤を確かめてホッとするミヤビ。
「サンキュー。」(ミヤビ)
「うん。」(芽衣)
「何か、芽衣は悩みなんてなさそうだよね。」(ミヤビ)
「悩み?」
「でももし、忘れたくなるような嫌なことあったら私に言ってね。
力になるから。」(ミヤビ)
意味深な言葉を残して去って行くミヤビ。
「?・・」(芽衣)
バンドの楽屋代わりの教室では、
メイク道具を前にして、たどたどしく化粧品をさがしている沙良に、
される側の陸たちが多少引き気味。
「おい沙良。ホントに大丈夫か?
いやあのう。こういうのはマジ、センスだからさ。」(充)
「だ…大丈夫。」(沙良)
「なあ沙良。あのな、俺たち笑いを取りたいってわけじゃないって・・
理解してるよな?」(夏樹)
「り…理解してる。」(沙良)
「理解はしてる。」(充)
「沙良。俺たちのことホントにかっこよくしてくれるんだよな?」(陸)
「か…かっこよくする。」(沙良)
「よっしゃ分かった。沙良に任せる。
頼むぞ~。盛り上げ番長。」
覚悟を決めて沙良の前に座る陸。
嬉しそうな沙良が、真剣な顔で陸の顔にメイクを始める。
3年1組前。廊下。
「恋人見つけませんか~」
と3年2組生徒(斎藤千晃)が『フィーリングカップル』の呼び込みをするなか、
芽衣たちの占いの館は大盛況。
「青の121番の方。」(芽衣)
「はい。」(生徒・湯本美咲?)
「じゃあ中へどうぞ。」(芽衣)
「いらっしゃいませ。」(受付生徒・井料彩美?)
「こちらの席でお待ちください。」(芽衣)
「結婚は40歳ぐらいです。」
と手相占いのクラスメイト(藤村直樹?)
「きてます。猫を飼ってますね…。」
と水晶占いの由希。
「生年月日をどうぞ。」
と、生徒A(渡辺万美)にきく敦史。
並んで立っている友人生徒B(本多未奈)、生徒C(安田望)が一緒に聞いている。
「1991年10月1日。」(生徒A)
「そう。あっ。そこに守護霊が。」(敦史)
「えっ!?」(生徒たち)
「おじいちゃんだ。」(敦史)
「じいちゃん?どこどこ?」(生徒A)
生徒たちが後ろを向いている間に、
下に隠してある「誕生日全巻」の10月1日を開いて、書いてあることを言う。
「あなたは思いやりと愛に満ちあふれた人です。」(敦史)
「超当たってる!ヤバいよ。あり得ないんだけど!」(生徒A)
「ヤベえ。」「ヤバい。すげえ。」「ウケる。」(生徒たち)
「ヤバいっしょ。全部当たったよね。」(生徒A)
廊下。
プラカード持って呼込みしていた3年2組の生徒に
声をかける聖蓉女子の田所麻美(石橋杏奈)。
「あのう。3年生の西野敦史君って知ってますか?」(麻美)
「3年生は1コ上の階です。」(生徒)
「ありがとうございます。」(麻美)
「バブルアート来てくださ~い。」(生徒)
3年1組。
「大盛況だね。」(優梨)
「そうなんだ。朝からいっぱい…。」(芽衣)
バンドのダンス衣装(ゴスロリ)に着替えた、沙良、美亜、優梨!
「うわ!?」(芽衣)
「こんなことになるんなら何でもいいから番長当たりたかったよ。」(美亜)
「似合ってるよ。」と芽衣が笑う。
教室に麻美が入って来る。
「ヤベえ。かわいくね?」「めっちゃカワイイよ。」
と占いを待っている男子生徒(山田賢明)(小柳巧)。
「嘘!?聖蓉女子の子が来てる。
付属中の子かな?いいなぁ。私もあの制服着たいんだ。」(優梨)
「アッくん?」(麻美)
「?」(敦史)
「アッくん!?」(美亜・優梨)
「麻美。」(敦史)
「麻美!?」(美亜・優梨)
「元気だった?」(麻美)
「ああ。麻美は?」(敦史)
「うん。」(麻美)
「今どうしてんだ?」(敦史)
「うん…。」(麻美)
「ごめん芽衣。ちょっと抜けるわ。」(敦史)
「うん。」(芽衣)
麻美と教室をでてゆく敦史。
表のステージ。
観客の歓声の中、陸たちのバンドと、
ゴスロリファッションの沙良、美亜、優梨が登場。
そのころ教室では、みんな陸たちのバンドを見に行ってしまって、
ガランとしていた。残っているのはアイちん(米村美咲)と芽衣。
すると、占いを待ちくたびれた生徒(北村佳織)がアイちんに文句。
「ちょっと。何か遅くない?」(生徒)
「もうちょっとお待ちください。」(アイちん)
「さっきからずっと待ってんだけど。」(生徒)
「ホントよね。」「早くしてよ。早く。」と他の待っていた生徒たち。
困ってしまうアイちん。
「ちょっと芽衣。アッくん呼んできて。」(アイちん)
「うん。」(芽衣)
教室を出る芽衣。
廊下では陸たちの演奏の音がする。
「おい。バンド始まったぜ。」(生徒)
と、見に行く生徒たち。
ステージ。
陸たちは顔に有名グループ「KISS」のようなメイクをして演奏。
沙良、美亜、優梨がその前でダンス。ボーカル+ギターは陸。
『♪オレはいつでも辛さにこだわるぜ
高円寺で見た ターバンの男よ
オレをいざなえ ガンヂスの流れに』(陸)
『♪For away tonight feaver』(陸・充)
「次はローリング!」(沙良)
「もうどうにでもなれ!」(美亜)
『♪For away tonight feaver』(陸・充)
『♪natural high トビマストビマス 日本を印度に』(陸)
『♪してしまえ!』(一同)
渡り廊下。
二人で話している敦史と麻美。
「そっか。アッくん森崎さんの所にいるんだ。」(麻美)
「ああ。」(敦史)
「森崎さんいい人だよね。
親が薬やってるような子供の気持ちなんて
分かってくれる人いるわけないと思ってたけど
あの人は違ってたもんね。」(麻美)
「麻美、どうした?何かあった?」
「私・・・一人になっちゃった。」
「一人って、どういうこと?」
「あのね、お父さん・・自殺しちゃったんだ。」
「自殺?」
「色々疲れたって。ごめんって遺書に書いてあった。」
「大変だったんだな。」
「・・・」
廊下。芽衣が敦史を探して歩いている。
渡り廊下。
「これからどうするの?」(敦史)
「このまま今の家で暮らすよ。
お母さんにはもう新しい家族もいるし、迷惑掛けたくないから。」(麻美)
「そんなこといったって、一人でなんて…」(敦史)
「大丈夫。仕送りはしてもらうから。
離婚したときも、お母さんが家からいなくなるなんて
考えられなかったけど、いつの間にか慣れちゃった。
だから、きっと一人にもすぐ慣れるはずだよ。」
「麻美…。」
「でも、また会いに来てもいい?」
頷く敦史。
「ありがと。」(麻美)
廊下。
渡り廊下に居る敦史たちを見つける芽衣。
「・・・」(芽衣)
仲良くしている二人の姿から逃げるように帰ってゆく芽衣。
ステージの控え室。
意識が飛んで眠っている沙良。
「沙良?沙良?大丈夫?」(優梨)
「完全に燃え尽きちゃったよ。」(美亜)
「脳振とうでも起こしちゃったんじゃねえの?大丈夫かよ?」(充)
「相当頭振ってたからな。」(夏樹)
「氷もらってきた!どけ!どけ!」(陸)
「酸素お呼びでない感じ?」(充)
「よいしょ。」(陸)
氷入りビニール袋を沙良の額に乗せる陸。
沙良が目を覚ます。
「おっ!盛り上げ番長のお目覚めです。
どんだけ捨て身なの?
ホントに。
でもサンキューね。沙良が頑張って盛り上げてくれたから
ホント大成功でした。」(陸)
「ありがとう!」(一同)
「あれ?そういえば芽衣とアッくんは?」(優梨)
「あっ。私たちのダンス見逃してんの。あり得ないし。」(美亜)
「ホントだ。ねえ。っていうか落としたくない?」(充たち)
敦史が教室に戻ると、芽衣が1人でいた。
「芽衣、みんなは?」(敦史)
「バンド見に行っちゃった。」(芽衣)
「あっそうか・・・」
「さっきの聖蓉女子の子、アッくんのお友達?」
「ああ。幼なじみ。
ごめんな。途中で抜けたりして。」
「ううん。」
洗い場。
メイクを落としてる充たち。
「っていうか全然取れないんですけどこれ。」(充)
「痛っ。目に入った。目に入った。」(夏樹)
「何してんだよ…。」と一人イラついている陸。
教室。
「占い大盛況だったよね。」(芽衣)
「ああ。分かんねえよな。何があんなにウケたんだろ。
あっそうだ。芽衣も占ってやろっか?
ちょっと座って。」
椅子に座らせると、敦史が「誕生日全巻」の本を持ってくる。
「あっ。カンニングしてる。」(芽衣)
「そりゃそうだよ。覚えられるわけないだろこんなに。
芽衣の生年月日は?」(敦史)
「1992年、2月29日。」(芽衣)
「えっ?」
「誕生日、4年に一度しかないの。珍しいでしょ?」
「2月29日・・・。」
「・・・」(芽衣)
本を見るのをやめる敦史。
「同じ誕生日の人に会ったことはありますか?」(敦史)
「うーん・・・同じ誕生日。
あっ。会ったことあるかも。」(芽衣)
「それはいつのことですか?」
「えーと・・。子供のころ、かな?」
「何か特別な日でしたか?」
「うーん。
ねえ?こんな質問で何か分かんの?」
「うん。たぶん。
何か特別な日でしたか?」
「うーん。あっ。雪。雪が降ってた。
8歳の誕生日。ケーキ屋さんの前で会った男の子だ。
その子が同じ誕生日だって言ってた。」
「その男の子は…。」
教室の入口では、二人の話を隠れて聞いている陸。
そこに優梨たちが戻ってくる。
「おうたかチャン。お疲れ。」(優梨)
「よう。お疲れ。」(陸)
教室に入ってくる優梨たち。
「あっ!もういたいた。」(優梨)
「ちょっと。私たちのダンス見に来ないってどういうこと?」(美亜)
「ごめん。どうだった?」(芽衣)
「新たな自分を発見したって感じ?」(優梨)
「何それ~」(芽衣)
「『♪オレにカレーを食わせろ~』」(陸)
「もうね、沙良なんて超~すごいんだよ。」(美亜)
「何で来なかったの?もったいない。」(優梨)
「やっぱ行けばよかったかなぁ。」(芽衣)
肝心の敦史の話は、美亜たちが戻ってきたために中断してしまうのだった。
<テロップ>
1回目の出会いは偶然で
2回目の出会いは運命。
もし、それが本当なら
すれ違ってしまうのも、運命なのですか