交番の入口
扉をあけると、暇を持て余した警官３名が談笑していた。
「あの・・（子猫を・・・いや）財布を拾いました。」
「権利主張しますか？」
いきなり権利と聞かれても
何かわからないのが普通と思うけど
この1年で、新幹線の切符拾ったり
鍵拾ったりして届ける度、言われるので
だいたいここでの権利は落とし主が表れないときの
所有権であることわかってきた。
ただこれまで新幹線のチケットや鍵は
権利を主張する目的わからなかったけど
今回は現金入り。
しかも他に身分証明書らしきものはないから
所有者が見つからない確率は高い。
それが、そのまま警察の手にわたり
国家の闇に埋染まるのならば
僕が適切に、世の中のために
子猫を開放してあげたい。
「はい。権利主張します。」
警官の1名は担々と書類作成をはじめた。
「中を確認します。紙幣と紙と、、、」
もう1名は財布の中を確認した。
「これは！！！」
財布を手にしていた警官は
戦闘態勢に入り、白手袋を装着しだした。
「これは、、、あるな。。。」
2㎝ほどの透明なプラスチックを見て、
書類作成していた警官と二人
ざわついている。
（はて。パイポを見て何をざわついているだろう。。。）
オジサン警官が割り込んできた。
「どうした」
若い警官は神妙な顔つきで応えた。
「この小さい透明プラスチックの中に、注射針が入っているので。」
オジ警官はあきれ顔。
「これは禁煙パイポ。知らんのか。
タバコの代わりの口にくわえるやつ。これは注射針でもない。」
俺。失笑。
さて権利は３つあるらしい
落とし主が現れてなかった場合の所有権
落とし主が現れた場合の報労金を受け取る権利
そして
ここまで届けた費用を請求する権利
僕は大した額でもないので所有権のみ頂戴する。
そのほかは放棄。
駅での落し物は施設占有者にも権利が与えられるということ。
黒猫は白い紙きれ、拾得物件預かり書一枚と引き換えに引き取られた。
後日日付がこれば警察署で引き換えができるらしい。
待ってみよう。
おしまい
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