オルフェの「皆愚か者だ」という叫びに割と同情が集まってるんだが、私はそこにハロの「オマエモナー」を突っ込んでやりたい人間。

 

 

「フ…っ」

ここで急に不似合いにも程があるリミの笑いが響いた。

「…リミ?」

「うんん、あー、この間シンにも言ったけど、今のキラの周囲にいる人達が、ちゃんとキラを理解して支えてくれてるのが嬉しいなって」

今までと一変して、明るく言う。

シンが少しだけ照れ笑いして、ルナマリアがちょっとだけ驚いた顔をして、直後に嬉しそうに笑った。ヒルダも、二人に比べると厳しい事を言った自覚がある上で(おそらくキラ至上だろう)リミにまっすぐ認められて”この子、やるねぇ”と思っていた。

と。

『コンディションレッド発令!コンディションレッド発令!』

リミが着任して初めての放送が響く。

全員がハッとして、次にリミを見た。

「状況確認してから詳しく指示するけど、とりあえずシンとルナマリアが前線に、ヒルダさんは二人のフォローを。リミは避難民の誘導を最優先に」

「了解!」

4人が走り去って行った後、キラもブリッジへ向かった。

正直、今でも自分が最前線に出た方が他のパイロットが安全だという意識はある。

けれど、復帰の条件となった「フリーダムは最後の切り札」という制約。

言い方は柔らかいが、つまりキラが簡単に戦場へ出ることを制限するものだ。

ファウンデーションとの決戦で、キラの戦闘能力の高さが改めて浮き彫りになったためでもある。

それはシンにしてもそうなのだが、ザフトのクーデター軍の生き残りによる証言があったのだ。

「あれは人間業ではない」と。

PⅮのドッキング前後に戦線を離脱したために、それ以降の戦闘は解らないが、あの大火力を凌ぎ切るだけでも普通ではない。

つまるところ、過剰戦力と判断された。

元々「准将」が前線に出る事自体が異常事態ではあるのだ。だから階級に相応しい作戦行動を、となった。

今のキラは戦闘時にはミレニアムでの指揮が通常になっている。

勿論、そんな事がすぐに出来る筈もなく、コノエ達について学んでいる最中である。

そして万が一、ミレニアムに接近する敵機があった場合は直掩機として出る事までは止められていない。

「准将」

「遅くなりました、状況は」

「狙われたのはカーペンタリアです。どうやら周辺のブルーコスモスの戦力をかき集めたようで、機体の種類はまだ判別されていませんが10機ほどいる模様」

その程度であれば、シン達の敵ではないだろう。

だが、コンパスの活動が再開され、戦闘介入が予想される中での行動だ。何らかの罠が隠されている可能性もある。

「タカノ少佐は?」

「最後方、避難民の誘導を支持しました」

残りの三人への指示を聞き、コノエは頷いた。

「何かあればハーケン少佐が彼女のフォローへ回れますな」

「はい」

一番戦歴が長いのがヒルダだ。

それにシンとルナマリアは二人で連携する陣形に慣れているし、シンの戦闘適正としても間違っていない。

「最初の陣形としてはそれでいいでしょう」

元々MS戦では、キラの戦術眼は間違いない。

そこに自分がいるのではなく、いない状況での戦場をどうコントロールする指示を出せるか。

刻々と変わる戦況で「何かあっても自分がどうにか出来る」という事が出来ないのだ。

これはキラにとってはかなりのストレスだろう。

「システムオールグリーン、デスティニー発進どうぞ」

アビーの発信シークエンスのアナウンスに、キラはぎゅっと拳を握りこんだ。