中央アジア巡礼行記 2023年

29 ソウル ー 北漢山トレイル

 

 現地時間の23時にアルマトゥイを発ち、翌朝の7時20分に仁川国際空港に着いた。一晩かかって中国を横断したかたちだ。

 今回はソウルで乗り継ぎ時間がある。夏にソウルを訪れたときには、安養庵という寺で摩崖仏を見た。仏様はもちろん、寺の佇まいや周辺の街にも興味深いものがあった。そこで今度は別な摩崖仏を拝みに行こうと思う。訪問するのは、ソウルの西部、地下鉄4号線の弘済(ホンジェ)駅の近くにある三角山玉泉庵である。

 

 仁川からの空港鉄道をデジタルメディアシティ駅で地下鉄6号線に乗り換える。乗り換え通路には中途改札があったけれども、1回しか通過していない。

 仏光(プルガン)駅でさらに4号線に乗り換えて弘済駅で改札を出る。空港鉄道とは別に地下鉄分の運賃を引かれるかと思っていたのだが、それはなかった。

 

 

 

 

 地上に出ると北風が冷たい。今朝のソウルの気温は3度で、アルマトゥイよりも寒いのだ。幸いなことに地下鉄出口から200メートル程のところに仁王(インワン)市場というアーケード街があるので逃げ込む。ここには体育館のような屋根の下の売場があって、韓国では珍しい形態だ。

 

 

 続いて隣接するユジン(流縁)商街へ。こちらは集合住宅の下につくられた衣料品、繊維製品の市場で、さすがに朝9時台ではまだほとんどの店が開店していない。

 

 ここからは弘済川に沿って歩いてゆく。遊歩道ができていて、ウオーキングの高齢者が多い。公園に備え付けられたトレーニングマシンを使っている人もたくさんいる。

 頭上を高速道路が走り鬱陶しいのもしばらくの我慢。川の方が蛇行して、青空が広がる。再び高架に接近すると、玉泉庵も間近である。

 

 

 

 

 

 前方の斜面に寺の建物が見えてきた。それとともに、お経が聞こえてくる。あまり有難みのない節回しである。川に面した摩崖仏の前で何やら法要を営んでいるようだ。

 肝心の仏様は屋根が窮屈そうで、端正な白いお顔もよく拝むことが出来ないのは残念だ。

 

 

 さて、空港に戻るにはまだ時間がある。これからどうしよう?ふと見ると寺の脇に北漢山トレイルの案内板があり、4.8キロメートルと出ている。これなら距離も手ごろだ。

 擬木の階段を登って山の中腹にとりつくと、今度は擬木の歩道が等高線に沿って続いている。ソウル郊外の高層アパートなどが望めるところもあるのだが、住宅地近接とかで、谷川に目隠しをしている部分も多い。この道も、高齢者が何人も歩いている。

 

 

 

 途中、右手の尾根側に踏み分け道ができていて、第7セクションと表示が出ている。意味がわからないままに足を踏み入れてみる。かなりきつい傾斜を登り切ると尾根筋に出て、反対側の眺望が広がった。といっても、手前に研究所のような大きな建物があり、さして眺めが良いわけではない。しかも、結局はこの道、元の北漢山トレイルに戻ってしまうのだ。

 

 

 

 やがて、トイレのある休息所に着いた。ここで一段上に位置するソウル・トレイルなる道にトラバースする。

 同じ様に歩いてくる高齢者が多い道をしばらく歩くと展望台に出た。ここからは白く輝く北漢山が眺められる。但し、送電線が少々邪魔ではある。峰々やトンガリ岩の名前を記した案内板も設置されているのだが、一々は記さない。

 この展望台からは下りの尾根道となる。しばらく行き、「左、仏光駅方面」の標識に従い階段を降りる。街なかに入ってからはウネウネした急坂を下り、地下鉄仏光駅のそばに出た。この駅の周囲は何もないところなので、隣のヨンシンネ駅までひと駅分歩いた。

 

 

 ヨンシンネ駅の手前にパリ・バゲットの店があったので、ウインナーエッグパンとあんバターサンドに紅茶をつけて一休みする。

 日本でも最近人気のあんバターサンド、実は大好物である。韓国でも分厚くて黄色いバターを挟み込んだものをあちこちのパン屋で見かけてはいた。しかし、いくら何でもバターが大きすぎる。1本食べたら気分が悪くなりそうで、これまで手を出せなかったのだ。その点、この店のパンはボリュームが適当である。

 とは言うものの、これだけで11000ウォンとは少々お高い。周辺にはハンバーガーセットが5000ウォン台の店がいくつもあるのだ。そのせいか、パリ・バゲットにはほとんどお客がなく、売り子のお姉さんもヒマそうである。

 

 

 

 

 

 ヨンシンネ駅の裏側に回るとヨンソ(延西)市場がある。小さな市場ではあるが、奥には食堂街もあって、いろいろなブログでよく紹介されている。この手の食堂、自分には匂いがきつすぎてちょっと無理だ。

 

 

 

 

 狭い通路を抜けて大通りに出ると、歩道にもパラソルや差し掛け屋根の商店が並んでいた。この季節の旬は蕪らしい。蕪といっても細長い種類で、赤い土がついたまま店頭に並べられている。

 

 

 空港へ行くまでにはもう少し時間があるので、ヨンアム(鷹岩)駅まで歩く。ヨンアム駅のある所は地下で立体交差になった五差路であった。その先からは親水公園化された仏光川が伸びている。水路べりの遊歩道を大勢の高齢者が歩いていた。

 

[中央アジア巡礼行記 終わり]

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