コーンウォールの夏休み 2012年

14 フライビー805便

 

 

 ニューキー空港に戻って来た。通路にロッダスの大きな広告が出ている。空港使用料を自動販売機で支払う。出てきたチケットは、出発ゲートを入ったすぐのところで回収してしまう。液体物の持ち込み制限は、ここも国際線と同じである。ロビーの片隅に「ガチャガチャ」が置いてある。オレンジの球体に透明ビニール袋が1枚入って1ポンドである。かなりあざとい。

 

 

 ターミナルは平屋でボーディングブリッジもない。搭乗待合室にもコーヒー・リパブリックの店があるきりで随分と簡素な感じを受ける。これは、利用客数に見合った設備というべきだろう。搭乗口の天井には紙ヒコーキが吊り下げられている。

 

 

 エプロンを三々五々歩いて、機体のドア裏を利用したタラップから搭乗。

 そして定刻より10分も早くドアクローズ。

 離陸すると右手後方にコーンウオール南海岸の岬がいくつも重なって見えた。やがて大きな港町のプリマスからダートムーアの上空へ。紫がかった何もない地表が見える。

 

 

 ダートムーアを横切り、トーキー上空から再び海上に出る。左手に見えているのはデボン州からドーセット州にかけての海岸で、特徴のある長い砂州が伸びている。「ただいま、アボッツベリー上空通過中」と、以前に訪れた村の名を同行者に言ったが「なぜそんなことがわかるのか」と信じてもらえなかった。

 しばらくすると、大きな川と並行して飛んでいるのに気付く。このあたりにこんな大河があったかなと思ううちに、これはブリテン島とワイト島とを隔てる海峡だと気が付く。

 

 

 ワイト島上空を通過すると早くも降下を始める。大小の入江はヨットハーバーに水面が占拠されてしまっている。

 ガトウイック空港に着陸後、エプロンに停止しドアが開く。これも定刻より10分早かった。

 タラップを降り、歩いてターミナルビルへ。建物に入ったところで「国内線旅客用」と書かれたバーコード入りのカードをひとり一人に手渡している。このカードは通路の先で回収されてしまうので、何の意味もないように思える。預け荷物のターンテーブルはカード回収よりも後にあるのだ。

 

 今夜はクロイドンにあるハンプトン・バイ・ヒルトンなるホテルを予約している。

 最寄り駅のイースト・クロイドンで降りると、ホームの端から出口に通じる斜路が伸びている。洗練された飯田橋駅といったところか。通路を行き交っているのはほとんどが黒人で、歩く速度が速い。駅の西側は再開発中の地区で今のところは殺風景であるが、掲げられた完成予想図を見ると、ハンプトン・バイ・ヒルトンは新しい駅出口のすぐ前になるらしい。

 

 

 

 

 さて、そのハンプトン・バイ・ヒルトンに着いた。フロントの兄さんはとりわけ愛想がいい。しかも予約時の条件とは違って、朝食はフリー、チェックアウトも12時で良いと言う。かなり安い値段で予約したのだが、このホテルは開業して間もないから特別価格、特別サービス期間中なのだろうか。

 通された部屋もかなり広く、どこもかしこもピカピカである。シンプルな内装の中に濃いピンクがアクセントに使われているのに気が付く。クッション、ベッドヘッド、その上に飾られた写真のビッグベン、オースチン、バスと電話ボックスといったあたりにピンクが使われているのだ。このセンスはなかなか他にないぞと思う。

 ついでに言えば、部屋に置いてある書見台も大変に使いやすい。自宅にも備えたいくらいだ。

 

*  *  *

 

 

 朝、目覚めて窓を開ける。逆光の中にオフィスビルが立ち上がり、ポプラが風に揺れてキラキラ輝いている。英国の都市はなんて緑が豊か何だろうと思う。

 

 

 セルフサービスの朝食は、イングリッシュブレックファストのアイテムがそろっている。ベルトコンベヤ式のパン焼き機があって、手前にパラりと落ちたときには程よく焼けている。

 

 

 

 

 

 

 朝食の後は例によって一人で散歩に出る。駅前を通るトラムリンクはダイヤが乱れているのか、乗客が首を伸ばして電車が来るのを待っている。電車は道路の時速20マイル制限に合わせて、ゆっくりと坂を下っていく。

 街の中心に行くとレンガ造りの風格ある市庁舎が建ち、その前はクイーンズ・ガーデンいう庭園が広がっている。一部はサンクンガーデン状になっていて、黄色いバラが満開だ。

 

 

 

 一旦ホテルに戻り、今度は同行者と買い物に出かける。ホテルから徒歩2分30秒でワイトギフト・ショッピングセンターに着く。東西200メートル、南北は500メートルはあろうかという巨大なモールである。さすがに大きすぎるのか、端の方に行くと「シャッター通り」化しているところもある。

 

 

 このモールでのお目当てはジョシュアズというティールームである。ところがこれが見つからない。しかも、ようやく探し当てたのに今日は日曜日で定休日であった。

 かわりにマークス&スペンサーのティールームに入る。スコーンが六角形からレモン型に変わっている。同行者によれば少し小さくなったという。キャロットケーキも食べる。これは大ぶりで甘く、少々持て余す。

 階下の食料品部門で自宅用にルバーブ&ジンジャー・ジャムや小麦粉も買い込む。

 

 そして、イースト・クロイドン駅からヒースロー空港へ向かう。今の時間なら、オフ・ピークの一日券8.50ポンド(1450円)が一番安いとのこと。

 

 

 

 乗り換えとなるビクトリア駅のホールにはユニオン・フラッグがたくさん下がっていた。ビクトリア女王の誕生日と関係があるのだろうか。

 構内のWHスミスでキーウィ、パイナップルに5種類の野菜を合わせたジュースを買って飲む。美味しいけれども色が悪い。子どものころに水彩絵の具の12色全部を混ぜ合わせたらどうなるか実験してみた時と同じ色だ。

 ビクトリア駅からは地下鉄ディストリクト線に乗り、バロンズ・コートでホーム反対側のピカデリー線に乗り換える。ピカデリー線は毎度のことながら狭くて暑苦しい車内でうんざりする。

 

 

 ヒースロー空港で、エミレーツのA380を見た。ターミナルビルのマリオンに挟まれて窮屈そうに停泊していた。

 

[コーンウォールの夏休み 終わり]

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