コーンウォールの夏休み 2012年

11 セント・マイケルズ・マウント 

 

 5月某日、今日も朝からいい天気だ。得てしてこんな日は午後から曇ってくることが多いのだけれど、コーンウォールではそれが当てはまらないことが多い。そこで今日はセント・マイケルズ・マウントに行こうと思う。

 セント・マイケルズ・マウントは中心にあるのが修道院と城館との違いこそあれ、対岸フランスのモン・サン・ミシェルの弟分みたいな小島である。コテージからは西へ20マイルほど、車なら40分ほどしかかからない。

 

 A394号線を西へ行く。ビューポイントと書かれた標識があって、駐車スペースがある。セント・マイケルズ・マウントの館が朝日に白く輝いているのが見える。しかし、標識が出るのが直前すぎて停車できない。

 その先でラウンドアバウトを左折し、マラザイオンの街に入る。細長く連なった街なかの道には、わざと狭くしたところが何か所も作られている。街に用のない車はバイパスを通りたくなる仕掛けというわけだ。

 街を通り過ぎた先の海辺に駐車場があり、これまで眼にすることがなかった大型の観光バスが何台も停まっている。ボディにドイツ語で「椰子の木の下でクリームティー」などと書かれたバスもある。たしかにドイツ語圏の国には椰子の木もクリームティーもないだろうが、何か変だ。

 

 

 

 今日の干潮のピークは正午ごろとのことだが、既に潮は充分引いていて、コーズウェイを歩いて島に渡る。この堤道、もちろん一般の車は通行できないのだが、島に物資を運ぶトラックやワゴンは結構行き来している。

 

 

 すっかり干上がっている船着場の脇から島に上陸する。カフェやショップの間を抜け、草の匂いが沸き立つような芝生を通り、シャクナゲが咲く石畳を登る。

 

 

 

 

 けっこうな急坂を登り詰め、館周りの胸壁に立てば潮風が心地よい。この島はもちろんのこと対岸の砂浜にも、コンクリートの護岸もなければテトラポットも見えない。だから、いつまででも眺めていたくなるのだが、ちゃんと館の中も見学する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 展示されている肖像画や細密画も興味深いのだが、ところどころの窓から海が見えるのがまたいい。テラスに出ると真下は最近造成されたロックガーデンになっている。

 

 

 お昼ごはんは、アイランドカフェでクリームティーとカニのサンドイッチをとる。ニューリンで水揚げされたカニだそうで、濃厚な味わいが今回食べたカニの中でもピカ一だ。

 

 

 おなかがふくれたので、ロックガーデンをぶらぶらする。花壇の石垣を崩してしまったおっさん二人組がいると思ったら、補修工事中の庭師たちだった。

 

 

 さて、そろそろ帰ろうかと陸地の方を見やれば、いつの間にかコーズウェイが水没している。まだ、潮が満ちて間もないらしく、島と砂浜の中間くらいを歩いているおばさんもいるのだが、海水は早くも腰の上にまで達しているうえに潮の流れも速いのでかなり難儀な様子である。そして、後に続く人はいない。

 港に行くとモーターボートの準備ができている。ちゃんと運賃もとられる。往きにタダだったところを2ポンドとられるのはバカバカしい気もするが、これはこれで楽しい。他の乗客たちも皆、満足げな表情をしている。どういうわけか、船べりのベンチ下にはテリヤが一匹寝そべっていて、動く気配がない。

 

 

 

 対岸に着き、岩場に上ってみる。コーズウェイが水面下で白くうねっているのが見えた。

 

 帰り道、朝に見たビューポイントに立ち寄ってみる。午後も遅いこの時間では、セント・マイケルズ・マウントは黒い影にしか見えなかった。

 

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