2024/6/18 光と虹と神話② | 福山機長の夜間飛行記録

福山機長の夜間飛行記録

月曜日から金曜日までの毎晩放送されるラジオ番組"JET STREAM"のうち、福山雅治機長のフライト部分を文字に書き起こして写真を貼り付けただけの自己満足ブログです。(※特定の個人・団体とは一切関係ございません。)

JET STREAM・・・作家が描く世界への旅。


今週は、自然写真家・高砂淳二によるフォトエッセイ『光と虹と神話』より、一部編集してお送りしています。


今夜は、その第2夜。


コナン・ドイルの小説『失われた世界』の舞台にもなった、南アメリカ・ギアナ高地の巨大なテーブルマウンテン、別名「神の家」と呼ばれる山へ、あなたをお連れします。


番組WEBサイトの、高砂淳二の写真と共に、お楽しみください。


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地球の大陸は、大昔はある時点で、パンゲア大陸1つだけだったと言われる。


ギリシャ語で、「全ての大陸」という意味だ。


ギアナ高地は、コロンビア、ベネズエラ、ガイアナ、スリナム、フランス領ギアナ、ブラジルの6ヶ国と地域にまたがる高地で、パンゲア大陸がゴンドワナ大陸や他のいくつかに分裂していく際、ちょうどその回転軸のような所に位置していたので、移動せずに済み、比較的安定した気候のまま今日に至っているという。


ギアナ高地は、地質学的には20億年ほど前の地殻と言われ、とにかく古い。


頂上が真っ平で、周りが垂直に切り立った、まるで大地に巨大なテーブルを置いたような山を、テーブルマウンテンと言うが、ギアナ高地は、巨大テーブルマウンテンが100ほども存在するユニークな場所で、コナン・ドイルの小説『失われた世界』の舞台になった。



[テーブルマウンテン]


テーブルマウンテンの上は、太古のままの生態系が保たれていて、確認されている植物は4000種にのぼり、さらにその75%は固有種だ。


4000種という数字は、日本全体の植物の種の数の半分を超えていて、さらに、ガラパゴスの固有種率が50%ほどである事を考えても、ギアナ高地が物凄く特殊な場所だという事が、伺える。


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頂上が真っ平で、周りが垂直に切り立った、まるで超巨大なテーブルを、大地に置いたような形のテーブルマウンテンは、ギアナ高地の現地の言葉で「神の家」という意味の、テプイと呼ばれる。


そんなテプイの一つ、アウヤン・テプイの崖に、979メートルという、世界最大の落差を誇る、エンジェルフォールが存在する。


あまりに落差が大きくて、落ちる前に水が霧のように散ってしまう事から、滝壺の無い滝としても有名だ。



[エンジェルフォール]


昼間のエンジェルフォールも迫力満点だが、この滝を月の光が照らす光景を一目見たくて、現地のガイドさんに無理を言って、夜のエンジェルフォールを一望できる場所まで川を渡り、山を登って行ってみた事がある。


三日月が東の空に出てくるのが、午前2時過ぎのはずだったので、それに到着の時間を合わせて、キャンプを出た。


現場に辿り着いて5分ほど経った頃、オレンジ色の美しい三日月が、地平線の上に現れた。


エンジェルフォールが、弱い月光を受けて、上の方から少しずつ赤みを帯びていった。


そしてなんと、30分ほどして、光がやや強さを増してきたと思った時、エンジェルフォールの飛沫に月光が当たって、うっすらと夜の虹が現れたのだった。


天からの、予期せぬ嬉しいプレゼントだった。


6ヶ国にまたがるギアナ高地の中心は、ベネズエラに属するが、今、財政難や貧困に喘ぐベネズエラでは、豊富な鉱物資源の不法採掘が横行しているという。


採掘による山々や川の汚染、木々の伐採、生態系への影響など、数え切れないほどの影響が心配されている。


46億年前に、太陽の周りを回っていたミニ惑星が合体して、地球の素になった事を考えると、20億年という地殻年齢のギアナ高地が、いかに古いかがよく分かる。


宇宙規模で貴重な大地だという事を、みんなで意識していけたらと、思う。


【画像出典】