2011年11月から自分のための記録として、このブログを書き始めました。
それから7年半、まあ色々な出来事-変化も起きましたが、何とか続けて来られたのは、取りとめのない文章を読んでくださり、多くの励ましの言葉をくださった皆さまのお陰と感謝しております。
 
ところが今年に入り、ヤフーブログの終了がアナウンスされると、何と言いますか、やる気モードがすっかりオフになってしまいました。
 
新しいプラットフォームへの移行も面倒だし、一時期は消えるに任せてしまおうとも考えたのですが、自分のための備忘録として、過去記事はいずれ何処かに引っ越そうと思っています。移行先は未だ未定のままですが…
 
 
とまあそんな昨今ですが、当ブログでは旅行・飛行機を主な話題としてきたため、ボツにしたネタがありました。主に韓国ドラマのストーリーに関するあれこれです。
 
改めて自分のための備忘録として、そんなお話を記事にしようと思いました。
あまりにマニアックで細かな事柄ばかりですが、どうかご容赦ください。
 
 
韓国ドラマで挙げられる特徴のひとつに、音楽の多用があります。
 
例えば、日本にその存在を知らしめた記念碑的ドラマ、「冬のソナタ 겨울연가 [冬恋歌] 2002 KBS2」では、オリジナル・サウンド・トラックの(以下 OST)収録曲数が、20話に対し17曲。
イメージ 1
 
50話を超える週末ドラマでは、同一曲のアレンジ違いを含め、40曲以上収録されるのが通例です。
更に OST 収録外の BGM 使用曲を含めると、全体では相当な数に上ります。
 
「冬のソナタ」でも、1968年冬季オリンピック記録映画のテーマ曲「白い恋人たち (13 Jours en France)」や、ABBA の「ダンシング・クイーン (Dancing Queen) 1976年」などが OST 外の曲として劇中で使われました。
 
こうしたドラマを放送する場合、曲それぞれに著作権使用料が発生します。
 
ところが、日本で放送する際には使用料を低減するためか、曲数を絞るのが残念ながら当たり前となっています。
「冬のソナタ」の「白い恋人たち」や「ダンシング・クイーン」も、日本での放送時には曲が差し替えられました。
 
差し替えを全て記録しようとしたら膨大な量になってしまうので、以下、ドラマの意図をやや無視したような曲の差し替えや、残念なカットシーンを記録しようと思います。
 
ただし、放送によりバージョンが多数あるので、異なる事も多いかと思います。
また、ここからネタバレ気味での進行となる事を、予めご了承ください。
 
 
お題にするのは、2012~13年 KBS2 週末ドラマ、
「いとしのソヨン 내 딸 서영이 [私の娘ソヨンが]」。
最高視聴率 48.5% を記録したヒット作です。
 
物語の舞台となる「ソウル厚岩洞 (ふあむどん)」、「南山中央教会 남산중앙교회」隣の屋根部屋(おくたっぱん [屋塔房])。

この屋根部屋は「いとしのソヨン」以降、多くのドラマに出演しています。
「温かい一言 (2013~14 SBS)」
「ヨンパリ ( 2015 SBS)」
「月桂樹洋服店の紳士たち (2016 KBS2)」
などなど。
 
そんな「いとしのソヨン」のオリジナル版を元に、変更点を幾つか列挙します。
 
尚、以下の動画は埋め込み再生が不可のため、「 YouTube でご覧ください」をクリックしての別タブ再生になります。
 
第02話、
家庭教師のイ・ソヨン(イ・ボヨン 俳優名 以下同)が、勉強嫌いなお金持ちのドラ息子カン・ソンジェ(イ・ジョンシン)と対決します。(02-02)
 
00′36″
授業を阻止しようとするソンジェが大音量でかける音楽が、レッド・ツェッペリン (Led Zeppelin)の「 ロックン・ロール (Rock and Roll)」。
 
01′47″
レイチャールズ (Ray Charles)の名曲「 Hit The Road Jack (旅立てジャック)」に曲が替わります
 
1991年生まれのソンジェが、1961年の 「Hit The Road Jack」 や1971年の「ロックン・ロール」を聴くのは渋過ぎですが、これが次への伏線になっています。
 
 
 
 
02′45″二回目の授業では前回同様、「 Hit The Road Jack 」 と、
04′18″から、イーグルス (Eagles)の「 ならず者 (Desperado) 1973年」がかかる中、授業を進めます(02-11)。
この部分は BGM がすっかり差し替えられてしまい、そのせいで字幕もぐだぐたになってしまいました。
 
特に、ソヨンが突然ソンジェに向けて言い放つ、
 
「貴方は私が知る中で一番意地悪な人、そんな事を言うなら出て行くわ」
「二度と戻って来るなって言いたいんでしょ? こんなひどい扱いをするなんて」
 
という、「Hit The Road Jack」 の歌詞にかけた毒舌が意味を持ちません。
 
You're the meanest old woman that I've ever seen.
I guess if you said so I'd have to pack my things and go. 
Hit the road Jack and don't you come back no more, no more, no more …
… don't ya treat me this-a way
が元歌詞でしょうか。
 
この場のやり取りは、その後のソンジェが、ソヨンの凛々しさを表現する際に幾度も発する、「 『Hit The Road Jack』 の時の…」という独特な言い回しのきっかけとなる場面なのに、差し替えの憂き目に。
 
 
そして、やや毒気を抜かれたソンジェが歌詞カードを見つつ、
 
「『ならず者よ、いい加減目を覚ましたらどうだい? 君って本当に頑固者… 
君を満足させるその理由が、君を傷つける事だってあるのに… 』
おお~、イーグルス格好良い!」
 
と素直に喜ぶのが、ソヨンの頑な態度に対するささやかな皮肉でもあったりします。
 
Desperado, why don't you come to your senses? … 
Oh, you're a hard one …
… These things that are pleasin' You can hurt you somehow
が元歌詞でしょうか。
 
 
第04話 02′47″~ 03′50″にかけ、
ソンジェの母チャ・ジソン(キム・ヘオク)が、隣近所の迷惑を省みず、大音量でオペラを熱唱します。(しかもあまり上手とは言えない… )(04-04)

何故かこの60秒がカットされています。
 
親が政治家のジソンは、音大卒業直後にカン・ギボム(チェ・ジョンウ)と政略結婚をしました。
そのため夫との関係が良好とはいえず、また、社会経験が無く家庭に入ったため交友関係が狭く、唯一のストレス解消法がオペラの熱唱という設定なのでした。
 
それらのシーンが殆どカットされたため、いきなりコスプレをして倒れ込む、すっかり変なお母さんになってしまいました。(第16話、[16-05] 03′00″でも)
 
この後もジソンは、ストレスを感じる度に大音量でクラシックを聴いたり、オペラを熱唱しては隣近所にちょっとした迷惑をかけます。
こんなに大きなお屋敷で、近隣に音が洩れるのか? という疑問はありますが。
(カカオマップから画像を借りました)
 
 
第10話、ソヨンとカン・ウジェ(イ・サンユン)の結婚式が行われます。(10-13)

 
動画の終盤、02′57″からのエンディング曲、オリジナル版のビートルズ (Beatles)
の「ロング・アンド・ワインディング・ロード (The Long And Winding Road)」が、差し替えられてしまいました。使われるのはこの一回だけなのに。
 
まあ確かに、ビートルズの楽曲使用料って高そうな感じがします。
 
ここ(結婚)に至るまでの紆余曲折や、次回から舞台が3年後に移る事、これから起こる波乱万丈を予告する選曲と思えるのですが、そうした意図が消えてしまうのはちょっと残念です。
 
そういえばこのドラマ、カフェの BGM などにも’60~70年代の洋楽が頻繁に登場します。製作者の好みか、視聴者の年代を意識した選曲かは分かりませんが、その殆どが差し替えられていました。洋楽の使用料って高いのかなあ。
 
 
第13話、2′00″
チェ・ホジョン(チェ・ユニョン)が、イ・サンウ(パク・ヘジン)に愛の告白をします。
(13-08)

 
 
このシーンの歌はさすがにそのままでしたが、こうした重要な部分でも曲を差し替えてしまう場合が多々あります。本当に情け容赦無いんだから(^^ゞ
 
 
これを出したのはホジョンが歌う曲、聴き覚えがあるのに長く判らなかったから。
ある時、別のドラマを観ていて突然判明しました。
 
「シークレットガーデン (2010~11 SBS)」に登場する「その女 그여자 (くよじゃ)」。
 
 
SBS ドラマの曲を、KBS2 で堂々と使ってしまう素晴らしい柔軟性。
しかも、この曲がホジョンにあまりにぴったりで、もう笑うしかありません。
ホジョンは片思いを3年、全く気付いてもいないサンウにしています。
 
歌詞は大体、こんな感じでしょうか。
 
ある女は 貴方を愛しています
その女は 懸命に愛しています
毎日、影のように 貴方の後を付いてゆき
その女は 笑いながら泣くのです

あとどの位 貴方を見つめ続けたら
風のような愛で 貴方を惨めに愛し続けたなら
貴方は私を 愛してくれるのでしょうか

ほんの少しだけ 近くに来て欲しい 少しだけ
一歩近づくと 二歩遠ざかる
貴方を愛している私は 今も傍にいるのに
その女は 泣いています
ホジョンが熱唱する「その女」以来、この曲は「シークレットガーデン」ではなく、すっかり「ホジョンのテーマ」になってしまいました(^^ゞ
 
 
第15話、3′09″
ソンジェが初恋の幻影と出逢った瞬間、ある曲が流れ始めます。(15-09)
 
この後、ソンジェが初恋の幻影と出逢う度、同じ曲が再生されます。
おそらく初恋モードの象徴として、繰り返し脳内再生するメロディなのでしょう。
 
 
 
初恋の象徴として流れるのは、
1982年の仏映画「ラ・ブーム 2 (La Boum 2)」の主題歌、「恋する瞳 (Your Eyes)」。

こうした細かなディテールが切られてしまうのが、ちょっと残念です。
 
 
というのも、韓国では映画「ラ・ブーム」「ラ・ブーム2」と、そのヒロイン、ソフィー・マルソー (Sophie Marceau) が、初恋の象徴として特別な意味を持っているのです。
 
 
2014年 KBS2 週末ドラマ「本当に良い時代 참 좋은 시절 」の第23話。
後ろからそっとかけられるヘッドフォンが、恋の魔法の合図です。
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このネタひとつで、23話から30話あたりまで引っ張る程の破壊力が、「ラ・ブーム」とソフィー・マルソーにはあるのでした。
 
 
「本当に良い時代」で、ヘッドフォンの魔法をかけるのは、
1980年の仏映画「ラ・ブーム (La Boum)」の主題歌、「愛のファンタジー (Reality)」。

 

1980年代の韓国は、’88年のオリンピック開催を控えていたものの、軍事政権下にあり、政治的には内外共に一触即発の緊張状態が続いていました。
(’80年 光州事件、’83年 大韓航空機撃墜事件、ラングーン事件など)
 
その一方社会的には、カラーテレビやビデオレコーダなど、メディア機器の普及が後押しする大衆文化の急速な発展がありました。
 
当時の政権はそうした動きに抗しきれず、従来の大衆文化に対する規制的な政策を一部緩和し、流行を黙認する方向に向かいます。(自由化とまでは言えない)
 
オリンピック開催を間近に控え、国内の政治的緊張を和らげる一種のガス抜き対策でもありました。
 
 
こうした流れによって外国映画が比較的自由に観られるようになり、「ラ・ブーム」のソフィー・マルソーは、当時の青少年たちの心をわし掴みにしました。
(仏大統領よりも)有名なフランス人といわれ、「下敷きの女神 책받침여신 (ちぇくぱっち よしん)」 *1 として、’80年代の韓国に降臨したのです。
 
*1 「下敷きの女神」
崇拝と憧憬の対象として下敷き(クリアファイル)に安置される最も身近なカミ、或いはその形象の事。
ソフィー・マルソー、ブルック・シールズ、フィービー・ケイツが、「三大女神」とされた。
「三大女神」にジョイ・ウォン(王祖賢)を加え、「四大女神」とも。
 
 
1980年代末から’90年代初頭を描いたドラマ「(恋のスケッチ)応答せよ1988 (2015~16 tvN)」にも、ビデオで「ラ・ブーム」を視聴して憧れるシーンが登場します。(多分10話)
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(勿論ヘッドフォンをかける真似も… )

ついでに、現代(2016年)のソン・ドクソン役で登場するイ・ミヨンは、1987年にミスロッテ1位を獲得した「下敷きの女神」国内派筆頭格。
 
当時の CM 画像もドラマ内に頻繁に登場します。
「いとしのソヨン」に戻り、第47話、
家出した妻ジソンに戻ってもらおうと、夫ギボムが歌を捧げるのですが…
1′00~2′00の歌唱シーンが殆どカットされてしまい、何が起こったのか訳が分からない展開になってしまいました。([47-08] 0′00″)
 
ギボム、ベランダにジソンを呼び出す⇒歌を捧げる⇒困惑したジソンが引っ込むが、
 
ギボム、べランダにジソンを呼び出す⇒呆れたジソンが引っ込むになってしまっては、ニュアンスが相当に異なります。
 
 
 
 
このネタは以前 UP したものの改稿、再録です。(リンク切れに備えて、かな?)
 
 
第5話、ソヨンとウジェ、実質上の初デート。貸し切り状態の映画館でふたりきり。
 
ウジェのチョイスはよりにもよって、もの凄く哲学的で難解(なので退屈)な映画。
ウジェが映画青年という事もありますが、本当の狙いはソヨンを寝落ちさせるため。
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この場面に登場する映画は、実在するものが使われています。
 
その映画はハンガリーの鬼才、タル・ベーラ監督の「ニーチェの馬」。
(原題;A torinói ló/The Turin Horse 2011年)。
表現主義的というか思索的というか、もう難解さだけは断トツな作品です。
何と154分もの長さに渡り絶望感が漂う中、世界の終わりを予感させてくれます。
私だったら、100% 寝落ち確定です。
 
個人的には「三大寝落ち映画」、
 
「去年マリエンバードで (L'Année dernière à Marienbad)1961年 アラン・レネ 仏/伊」
「旅芸人の記録 (Ο Θίασος/O Thiassos) 1975年 テオ・アンゲロプロス 希)」
「木靴の樹 (L'Albero degli zoccoli) 1978年 エンマンノ・オルミ 伊)」
 
と並び立つ「四大寝落ち映画」です。どれも一回で見終える事が不可能です(笑)
 
 
第16話で([16-02] 2′00″)、ふたりはもう一度「ニーチェの馬」を観ます。
 
ちょっと深読みをすると、一度目の「ニーチェの馬」は、ソヨンの感じる理不尽さや絶望感に対し、ほんの一時でも休息して欲しいとウジェが願った事を象徴し、「ニーチェの馬」=過酷な現実を、あえて観ずに寝てしまう事が、ソヨンの絶望からの脱出可能性を示しています。
 
 
二度目の「ニーチェの馬」は、安定した状況を築いたふたりが「あの時から」を回想しつつ、やや気軽な会話を交わしながら鑑賞、ひいては安心して寝落ちが可能な空間へと変化しています。「あの時から」を客観的に振り返る基点として、「ニーチェの馬」が再び登場する仕掛け。
 
それにしてもドラマ内で、「やっぱりつまらないし… やっぱり眠くなる。」と言われてしまう「ニーチェの馬」って一体(^^ゞ
 
 
第20話、元映画青年らしく、ウジェがソヨンに「一緒に映画を観よう」と誘います。
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まあ結果的には、ソヨンに冷たくあしらわれてしまうのですが。
この時ウジェが持っている DVD が、「めぐり逢い (Love Affair) 1994年」。
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伝説的恋愛映画、「邂逅 (Love Affair) 1939年」の二度目のリメイク作品です。
最初のリメイクは、「めぐり逢い (An Affair to Remember) 1957年」。
 
1957年版を下敷きにしたスピンオフ「めぐり逢えたら (Sleepless in Seattle) 1993年」もある、恋愛映画の王道作です。
 
ちなみにそのお話は、
偶然に端を発する旅先での運命的な出逢い。互いが近付くのを妨げる人間関係。
突然の事故により果たせない約束、そしてすれ違いのまま時が過ぎ…
 
かつて「ニーチェの馬」を観に行った時、「大衆が求めるのは娯楽作品ばかりだ」なんて嘆いた映画青年ウジェが、韓国ドラマ要素満載のベタな恋愛話に誘うとは。
 
そういえばウジェの映画青年設定、中盤以降は完全に消えてしまいました。
 
 
「いとしのソヨン」では、他にも映画館に出かけるシーンがありました。
 
第40話、おそらくソヨンが初めてひとりで観る映画。([40-09] 1′20″
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2013年01月23日に封切られた「7番房の奇跡 7번방의 선물 [7番房の贈り物]」。
 
第40話の初放送が、2013年01月27日。
どうやら、宣伝効果を狙ったタイアップ企画だったようです。
 
 
 
第42話、ソンジェと訳ありの母ユン・ソミ(チョ・ウンスク)との、おそらく最初で最後のデート。([42-08] 0′03″
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こちらは、2013年01月09日封切りの「結界の男 박수 건달 [拍手 ゴロツキ]」。
 
第42話の初放送が、2013年02月03日。
少し間があいていますが、やはり宣伝効果を狙ったタイアップ企画でしょうか。
 
 
ああ、こうした話を始めると、無駄に長くなってしまいます。
「いとしのソヨン」は50話もあるのに、つづきはどうしようかなあ…
 
といいつつ続編