人口構成の高齢化に伴い、高齢者の肺癌はま

れなことではなくなってきました。以前であ

れば「高齢なのだから何もしないで天寿を全

うしましょう」といわれていましたが、最近

ではどんどん手術できるといわれる年齢があ

がってきています。しかし高齢者が手術をう

けると全身麻酔や連続したベッドレストを経

験することにより認知症が発生することも危

惧されています。

このような患者さんにとっての朗報が粒子線

治療です。以前、放医研を管轄していた旧科

技庁(現文科省)の官僚は「風邪引いたら1

週間は具合悪いけれど肺癌なら1-2日重粒子

受ければ治る」といったとか。

確かに粒子線治療の適応となった症例の局所

制御効果は80%を遥かに超えており患者さん

身体的負担は極めて少ないことがわかって

います。

ただし、粒子線治療適応には厳格な制限があ

ります。重要臓器近傍の腫瘍や直接浸潤があ

るような場合には治療できませんし、以前に

粒子線治療を実施された患者さんの再治療

粒子線施設でなくても不可能といわれること

がよくあります。

当院では粒子線治療を断られた患者さんに対

しても安全かつ有効なIGIMRT(画像誘導下

強度変調照射)を実施しております。

 

当院での治療が有効だった2例を示します。

 

たとえ治療を断られたとしても、あきらめる

必要はないということがよくわかります。

 

症例1 86歳男性

半年前、検診にて肺異常陰影指摘され生検に

て非小細胞肺癌

2か月前より重粒子線や陽子線施設にて治療

希望するもいずれも断られる(理由:大動脈直

接浸潤のため粒子線にて大動脈穿孔のリスク

がある)

 

当院初診 PET-CTにて原発のみであること

を確認

28.1Gy/2週10回のIGIMRT実施後、画像評

価し縮小を確認

26.1Gy/2週10回(39.2Gy/2週10回の標的

内同時追加)のIGIMRT実施

3か月後 PET-CTにて完全消失を確認

 

図 治療前半の線量分布図

(大動脈浸潤部を含む高線量域を設定)

 

 

図 後半の線量分布図

(大動脈への被曝量を制限)

 

 

図2 治療前後のPET-CT

治療前に認めていた取り込み部分(左)

(黄色矢)は治療3か月後には完全消失(右)

 

 

症例2 81歳女性 肺癌 リンパ節転移

5年前 左下葉の肺癌原発に陽子線治療実施

2か月前 縦隔リンパ節に再発を指摘された

複数の施設で以前に陽子線治療を受けている

ため今回の再発には治療手段がない、緩和ケ

アの適応であるといわれた

当院初診 

PET-CTにて縦隔に2個所の転移を指摘

48.5Gy/2週10回のIGIMRT実施

5か月後のPET-CTにて完全消失

 

図3 線量分布図

左上縦隔リンパ節および食道近傍のリンパ節

に対して集中性の高い治療を実施

 

 

図4 治療前後のPET-CT

左側の治療前には上縦隔(水色矢)および

中部食道周辺(ピンク矢)にも淡い取り込み

を認める。治療5か月後の右側ではともに

完全消失している

 

 

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