地方点描:困惑[男鹿支局] | コラムコラムコラム!~業界を変えようと格闘するある物書きの日記

地方点描:困惑[男鹿支局]

「八郎湖が元気になる野菜」をご存じだろうか。外来魚のブラックバスなど食用が一般的でない八郎湖の「未利用魚」を加工した魚粉肥料で育てた野菜である。大潟村の約80農家が栽培し、昨年から本格的に販売している。

 野菜の袋には、野菜や魚の図柄に「魚粉肥料使用」などと記した直径5センチほどの丸い形のシールを張るなど他の野菜と差別化を図ってきた。袋にシールを張ってPRしてきたことで、消費者の認知度が徐々に高まり人気は上々だったという。

 しかし、このシールが間もなく店頭から姿を消す。県が作成した新たなシールが突然、生産者に届いたからだ。「販売当初から、シールの作成を県に頼んできたが一向に進まず、村が作ったものを使いやっと認知されてきたのに」「以前のものより、目立たない」

 この肥料、野菜作りは、2007年度から県秋田地域振興局が進める「環八郎湖・水の郷(さと)創出プロジェクト」の一環。生態系に影響を及ぼす外来魚などを循環資源として活用する取り組みだ。新たなシールは「八郎太郎物語」をイメージする竜がメーン。昨年、県は流域の小学生を対象に環境学習会を開き、イラストを募集。409点の中から選ばれた最優秀作品を基に作成した。県の担当者は「シール作成を検討する中で、子どもたちにもこの事業を理解してもらい、普及、啓発につなげようとしたら、今になってしまった」と語る。

 県と村によって作られた新シールは約20万枚。現場を置き去りにした計画は、生産者の困惑を招き、月日を重ね築いてきた愛着心や認知度を瓦解(がかい)させた。