『プラダを着た悪魔2』 | ポップ・ミュージックのトリコ

ポップ・ミュージックのトリコ

流行音楽を聴きながら、人生を音楽で豊かにしたいと願う、私的でミーハーなブログです。

監督 デビッド・フランケル
原作 ローレン・ワイズバーガー
脚本 アライン・ブロッシュ・マッケンナ
ジャンル ドラマ
出演 メリル・ストリープ as ミランダ
   アン・ハサウェイ as アンドレア
   エミリー・ブラント as エミリー
   スタンリー・トゥッチ as ナイジェル
撮影 フロリアン・バルハウス
編集 アンドリュー・マーカス

上映アスペクト比 
2.39 : 1

鑑賞方法
Tジョイ 梅田(ドルビーシネマ)

なぜここまで浸透しているのか不思議なほど名作として世間に普及している『プラダを着た悪魔』。続編のうわさが出た時から、私の周りでは「これは絶対観に行く」と複数の人が言っていたわけですが、実際びっくりするほどのヒットになっていますね。

私は公開初週の日曜日の早朝に観たわけですが、8割ほど席は人で埋まっていました。この映画をドルビーシネマの環境で早朝から観る人は相当のガチ勢だと思うのですが、それでもこの状況。お客さん7割ぐらい女性でした。年齢層は幅広く、母子で観に来ている人も多かったですね。男子はカップルできているケースが多く見受けられましたが、男性単独の人も予想外に散見されました。これはこの映画がファッションをテーマとしながらもいわゆるお仕事映画として評価されているからでしょう。

 

さて本編が始まれば今回もお出かけの用意のシーンから早々にタイトルが出て、「そう、これこれ」とテンション上がりましたね。

ここからテンポよく主役二人の現況が映し出されていくのですが、リアルに20年経っているのに数年後かよと思うくらい若いのに唖然。一体何を食べて生きてたらそうなるのか・・・!?

で、怒涛の展開に今回もなっていくのですが、出版業界の現在の状況が反映されていてかなり斜陽産業となってしまっています。

物語は二人の軋轢なんかよりももっと規模の大きな業界そのものの流れにあってあの「ランウェイ」誌がどうなるのか?ということになっていきます。

そそいてこれは遠く離れた米国のニューヨークに限ったおとぎ話ではなく、失われた20年、いや30年を経験した日本でもこうした景気や産業構造の変化で業務縮小、経費削減、方針転換、業務撤退なんてことを数多くの人が経験しており、この映画を観て決して他人事のように思えない人も相当数いるでしょう。

もちろん私にとってもそうで、勝手に脳内で似たような経験をしたときの気持ちがオーバーラップしてきて、大きく感情を揺さぶられました。

最後の着地点については義弟的な意見もあるようで、もっと地に足の着いた展開を求める向きもありますが、私はむしろこの展開の方がリアルだと感じました。これだけは自分がどういう業界でどういう境遇を味わったかにもよるでしょう。文字通りの「矢尽き刀折れ」や「国破れて山河在り」のような経験を重ねた私には少なくともそう受け取れました。

そりゃ確かに映画はおとぎ話なんだから、もっと夢のある爽快な展開であってよかったのかもしれないですけど、本作は前作を観た人が20年ぶりに観るという鑑賞動機も多く、そういう意味では社会人として嵐の中を小舟で渡るかのようにどうしようもない強く大きな時代の波に翻弄されながら戦ってきた人々が観るだけにちょっとビターな展開ぐらいにしておかないとしらけてしまうでしょう。

実際、「あの二人が今度もバリバリ仕事してさらに成功をつかみ取ります」的な内容の小説版の続編の映画化にはメリル・ストリープもアン・ハサウェイも興味を示さなかったことが知られており、本作は極端に言えば『ゴッドファーザー パートII』のアル・パチーノのパートのような苦くて渋い味わいを感じるようにうまくブレンドされています。

だからでしょう、物語の終盤で車の後部座席に主役の二人、ミランダとアンが並んで座っているシーンで、ミランダが不意にこぼす一言、「私は仕事が好き」に思わず涙してしまうのです。

これだけ苦労し、精魂尽き果て、プライドを踏みにじられても、それでも仕事が好きで続けている。そこに多くの人が共感するのです。

何なら映画産業の置かれている状況だって同じなわけで、そういう意味では演者の彼女らにとっても他人事ではないことでしょう。

「二人の活躍でなんと映画界に黄金期が戻ってきました」なんてことが起こりえないことはよく知ったうえで、世間に一矢報いるという意味では、ディズニーに救ってもらった20世紀FOXが彼らの所有していたスタジオを閉じられるなどのみじめな仕打ちを受けながらも本作を作ってヒットを飛ばしたなら、劇中のミランダとアン同様にメリル・ストリープもアン・ハサウェイも喜びをかみしめているに違いありません。

 

話の流れで書きそびれていますが、本作で注目すべきはエミリー・ブラント。

今現在の勢いなら、間違いなくこの3人では一番の人気スターである彼女が、助演に徹して本作をどんどん面白くドライブさせます。本作は時代の趨勢でもはやかつてのように”悪魔”のふるまいを続けられなくなった設定のミランダだけでは物語の軸が弱くなっている分、彼女が見事にそれを八面六臂の活躍で補完して作品のエンタメ色を前作から落とさないように仕上げています。前作からその演技力で演技がうまいチャーミングな女優として一気に名前を知らしめた彼女はこれをきっかけにメキメキと女優として頭角を現すわけですが、そんな彼女が恩返しをするように前作よりもさらに多面的な要素のある設定が加わった難しいエミリーのキャラクターをしっかり演じています。

 

もう一人、スタンリー・トゥッチも前作から引き継いで出演をし、今回も作品に深みを持たせる演技を披露しているのですが、これはエミリー・ブラントの存在が大きいでしょう。なにしろ妻を亡くした彼に自分のお姉さんを紹介し、見事結婚に結び付けた恩人であるわけで、出ないわけにはいかない、というレベル(笑)

 

大女優メリル・ストリープも高額なギャラを要求するかと思えば出演条件は自分とアン・ハサウェイとエミリー・ブラントの出演料を同額にすること、というイキな計らい。

この映画の成功はこのタイミングで決まっていたのかもしれません。3人は作品のヒット時のボーナスの報酬の契約もしているので、おいしいお酒で乾杯ができていそうです。

 

確かに現実は厳しいですが、それでもなんでも仕事をして生きていく。

そんな前向きな気持ちをくれる映画を届けてくれた女優3人(とおっさん1人)に感謝。