「三浦雄一郎とその挑戦を支える仲間たち」の第6弾は、チームドクターとして帯同する紅一点、大城和恵(おおしろかずえ)さんをご紹介します。

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(久保)大城先生がドクターであることはわかってはいるのですが、改めてその役割について教えていただけますか?

(大城)まず、対象はチームメンバー、支えてくれているシェルパたち、たまたま遭遇した現地の人、他の隊も含めて今回エベレストに携わる全ての人、すなわち自分に関わる全ての人に関して、一番は予防、高山病などの予防ですね。2番目は病気などが起きた時の治療や対応をすることです。

(久保)この隊のチームドクターであるけれど、関わる人全てが対象になるということですね?

(大城)他の隊のドクターも全て同じ気持ちでここに来ていらっしゃると思います。 

(久保)普段はずっと山の上にいらっしゃるわけではないと思いますが、何をされているのでしょうか?

(大城)私は心臓の専門医なので、札幌市西区にある北海道大野病院の循環器内科で主に心臓と血管系を診ています。

(久保)ちなみに子どもの頃からお医者さんを目指していたんですか?

(大城)そうですね。私は小学生くらいの時から、母親が病気をして病院に通うときについていったときに好奇心が湧いたのと、人を助けるという仕事自体に憧れがありました。

(久保)ちなみに心臓というか、循環器内科を選んだのも意味があるんですか?

(大城)最初、大学のときは、呼吸器とか血液、免疫とかを学んでいて、心臓ではなかったのですが、私は体全体をアカデミックに診たいという想いがありましたので、そういう学びをするうちに、生死に一番関わるのは心臓とか循環器だということで、循環器の勉強を始めました。なので内科の認定医・専門医、リウマチの専門医、循環器専門医といった形で専門をいくつも持っていて、普通に内科を一般に診るというよりは、一個一個がちゃんと診れないだろうということで勉強しました。

(久保)今回、三浦隊に関わることになったきっかけは何ですか?

(大城)私は山が好きで、以前一人でネパールにトレッキングに来たときに、高山病の人に会いまして、自分が知っている範囲では対応したのですが、もうちょっと山に関わる医学を勉強したいと思って、それを専門に学べるところを探したところ、ヨーロッパにそういうカリキュラムと国際山岳医という制度があったので、イギリスに行って勉強し、その資格を取りました。

(大城)その国際山岳医という資格を取ったのは、私が日本人で初めてだったんです。それで海外のそういったスタンダードの勉強をたくさんできたので、今回声がかかったのではないかと思います。

(久保)大城先生って、「こういうのが重要!」って思ったら、どんどんそっちのほうを勉強して知識を広げていってしまう人なんですね。

(大城)確かに、興味が湧いたことは頑張ろうって思うタイプですね。

(久保)現在、国際山岳医というのは日本に何名くらいいらっしゃるんですか?

(大城)日本でも国際山岳医の制度が始まったので、今は日本で10人くらいはいるのではないでしょうか。だから海外で取るのは私が最後になっちゃうかもしれませんね。

(久保)でも少ないですね。

(大城)そうですね。でもその仕事で食べていけるわけでもないですし、その資格を活かしてというのもなかなか難しいこともありますね。

(久保)ここに来るときに、勤務先の病院からは何か言われなかったんですか?

(大城)私は、国際山岳医の資格を取るときに、大野病院を一回退職したんです。山岳医になるには山にも登らなくてはなりませんし、勉強もしなくてはなりませんでしたので、時間がないから辞めました。それで資格を取って復職するときに、山に行く時間が欲しいから非常勤にしてほしいと頼んだんです。今回は特に、北海道なので、三浦さんに帯同できるなんて言ったら、理事長はたいへん喜んでくれて了解してくれました。本当にありがたかったです。

(久保)なるほど!道産子として、その理事長の感覚はよくわかります。

(久保)大城先生にとって、今回、ご自身としての一番のチャレンジとは何ですか?

(大城)やはり80歳の方が、より安全を高めて登頂できることに関して、まだ医学において未知の部分があって、今回は(登攀リーダーの)倉岡さんというすごく経験のある方がいらっしゃいますから、いろいろ相談しながら、今までなかった方式で登っていくことになります。その方法には賛否はあるとは思いますが、どういう風に実践的に、現実的に、私たちにとって合理的な方法で、山頂を目指すのかということを考えています。

(久保)大城先生にとって、三浦さんはどういう存在なんでしょうか?

(大城)まずは、尊敬できる方ですよね。80歳になって目標を持って、前を向いていかれるというバイタリティは素晴らしいですね。あとは、マイペースなところがカワイイ♡!

(大城)医者が言ったことを全部聞くわけじゃない方だということは、ずっと前からわかっていたことで、こういうことをされる方は自立心が旺盛で、自分の考え方をちゃんともっている方なので、それとこちらの考えをうまく融合させることをいつも考えていて、三浦さんを見ていると、すごく人間らしい方だといつも感じています。

(久保)ありがとうございます。最後に、大城先生から子どもたちに一言メッセージをお願いいたします。

(大城)私はわりと自分のやりたいことは勝手にやってきた人だと思います。小学校の時は親の庇護下にあるというのは、今になって振り返ると、親に嫌われたらまずいんじゃないかという考え方になっていました。それで、親が早く死んだら、急に好きなことばっかりするようになったんです。

(大城)やりたいことがあるっていうことは良かったです。ただ、やりたいことがない時もあるんですよ。やりたいことがない時は、勉強でも、部屋の片付けでも、掃除でも、目の前にあることを一生懸命やっていたことが良かったかなと思いましたね。

(大城)自分がやりたくない役割をあてがわれた時も、面白くないんですが、そこで「自分の役に立たないことはない」というふうに考えるわけです。そうして一生懸命やっていると、その中でやりたいことが見つかったり、一生懸命やったときのやり方があとで役立ったりして、若いときには自分らしさとか、そういうことを追求したがるんですけど、自分らしさなんてやっぱりわからないんですよ。

(大城)目の前にあることを一生懸命やっていくと、自分に合うものが見つかっていくし、自分のやりたいことをその中から探していけたような気がして、何となくつまらなかったりしても一生懸命やることだと思っています。

(大城)いっつもいいことがいっぱいないと嫌なんですけど、そのうち私は、たまにはいいことがあるんだって思えばいいやと思うようになって、たまにいいことがあると思って頑張って、たまにいいことがあるとすごく嬉しい、「たまに」と思っていたのに早く来たな~って喜ぶんです。

エベレストベースキャンプに到着した支援隊メンバーの何人かが体調を崩したとき、それぞれのテントを巡回しながら診察・治療を献身的かつ敏速に行なっている大城先生の凛とした姿は、今も脳裏に焼き付いて離れません。下ネタ好きの男性陣に囲まれても、サラッと笑顔であしらうことができる寛容さも、大城先生の魅力だと感じました。

支援隊のMさんは大城先生に治療されているだけで目尻が下がって嬉しそうにしていましたし、他の方も具合が悪いのに大城先生との会話を嬉しそうにしているのを見るにつれ、心配さえもしてもらえない私の丈夫さが恨めしくなりました。

今回の三浦隊での挑戦の後は、「山の活動をする人に安全に医療を早く導入したい」という想いを実現するために行なっている、ファースト・エイド指導などの活動をしっかりと継続しつつ、仕事ではなく自分の好きな山にも登りたいと語る大城先生。多くの人が山をより安全に楽しめるように、これから大いにご活躍されることを期待しています。