悪魔のように細心に


監督:ジョセフ・フォン・スタンバーグ
製作:エリッヒ・ポマー
原作:
ウンラート教授―あるいは、一暴君の末路/ハインリヒ マン

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脚本:カール・ツックマイヤー、カール・フォルメラー、ロベルト・リーブマン、ジョセフ・フォン・スタンバーグ
撮影:ギュンター・リッタウ
編集:サム・ウィンストン
美術:オットー・フンテ
音楽:フリートリヒ・ホレンダー
出演:エミール・ヤニングス、マレーネ・ディートリッヒ、クルト・ゲロン、ローザ・ヴァレッティ、ハンス・アルバース、ラインホルト・ベルント、エドゥアルト・フォン・ヴィンターシュタイン、ハンス・ロート、ロルフ・ミューラー、ローランド・ヴァーノ、カール・バルハウス、ロベルト・クラインレルク、チャールズ・パッフィー、ヴィルヘルム・ディーゲルマン、ゲルハルト・ビーネルト、イルゼ・フルステンベルク
原題:Der Blaue Engel(青い天使)
1930年/ドイツ/124分・モノクロ

名優エミール・ヤニングスが、ハリウッドから名監督ジョセフ・フォン・スタンバーグを招いて作られたドイツ初のトーキー映画。という作品のはずだったんだけど、蓋を開けてみたら、ヤニングスの相手役として起用した無名の踊り子マレーネ・ディートリッヒの人気が沸騰。これをきっかけに彼女は監督に連れられてハリウッドに渡り、大スターへの道を歩むことになります。

物語は、ヤニングス扮する謹厳実直な初老の教授が、ディートリッヒ扮するキャバレーの踊り子に熱を上げ、学校を辞めさせられてまで彼女と結婚したものの、職を失った彼には全く魅力がなくなり、やがてみじめな最期を遂げるというもの。原作者のハインリヒ・マンは『ベニスに死す』などを書いたノーベル賞作家トマス・マンの兄だけど、『ベニスに死す』のストーリーと似たようなところがありますね。

ディートリッヒは映画デビューは1922年でしたが、初めは端役や脇役ばかりで、ここまで20本ぐらいの映画に出演していたものの国際的には全く無名の存在でした。しかし、ベルリンの舞台で歌っていたところをスタンバーグ監督に認められてこの役に抜擢され、一躍世界的に有名になりました。

一方のエミール・ヤニングスは舞台俳優として名を成し、映画界に進出して『最後の人』『ヴァリエテ』などの演技で国際的な名声を獲得。その後ハリウッドに招かれて、スタンバーグ監督の『最後の命令』などに出演し、第1回アカデミー男優賞を受賞します。しかし、ドイツ訛りが酷かったため、トーキーになってからはアメリカでの活躍の道は閉ざされ、ドイツに帰って来ることになりました。そして1933年にナチスが政権を握ると、その熱烈な支持者となってプロパガンダ映画などにばかり出演するようになり、結局これが、国際的には最後の輝きを放った作品になってしまいましたね。ディートリッヒとは全く対称的な人生で、これはトーキー時代の到来が明暗を分けた一例かも知れません。

なお、ディートリッヒがこの作品の中で歌った"Falling in Love Again"は、当時日本では『妾の恋は戯れよ』なんていうすごい邦題がついていたようです。この映画の教訓からつけられたタイトルみたいだけど、当時の日本社会の風潮も偲ばれますね。(^^)


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