子供達も寝静まった夜中。突然、太刀魚のパスタが食べたくなった。
太刀魚は数週間前に長男がお腹をこわした際に、ちょっと奮発して(太刀魚って本当に高い。)買ったやつの残りが冷凍庫に眠っている。
ジップロックに入ったそれを取り出し、少し室温にさらしたあと、普通の三徳包丁でぎこぎこと三枚におろす。身が柔らかい太刀魚は、半解凍の状態でおろすのが良い。私みたいな雑なシロウトでも上手くいく。
身はそっと取っておいて、まず骨の部分をセロリの切れ端やコップに差したっきり使っていないローズマリー、ひからびたバジルなどなどといっしょにミルクパンに放り込み、くつくつと煮てブロードを取る。
 
ときどきパンを覗いてあくを取りながら、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番1楽章のカデンツァ部分にざっと目を通す。
 
小学生の頃のかすかな記憶を頼りに、フィンガリングとボウイングを脳内再生する。
あれー…こんなに難しかったっけなあ。あの頃の私ってすごかったんだなあ(笑)。
この曲は長男が今度の発表会で弾くことになっているのだ。中学に上がってから通学も勉強も大変で、家で楽器を取り出すことはほとんどない。1週間に1度先生のところへ行ってひたすら弾くだけ。先生も事情をよく分かって下さっているので、無理をおっしゃることはない。それよりもそんな状態でも長男が「ヴァイオリンやめる」と言わないことが嬉しいのだそうだ。
 
発表会は7月。カデンツァ以外の部分はまあ弾けている。これから5ヶ月かけてカデンツァを仕上げる予定だ(笑)。さすがに「これは家で練習しないと無理だわ」と長男が自分で言うので、私は家での練習につきあってさしあげねばならない。というわけでこんな時間に料理を作りながらモーツァルトを復習しているというわけなのだ。
 
さて太刀魚の骨のスープが出て少しブロードらしくなったら、そこにフュメ・ド・ポワソンを少々(笑)。本格的なブロードじゃないからいいんだよ、ずるしても!
 
それから大事にとってあった太刀魚の身を崩さないようにオリブオイルでコンフィにする。ついで小エビも入れちゃえ。一番小さいコンロでふつふつと静かに煮る。
左のコンロでスパゲッティ茹でを開始。頃合いを見計らって右コンロでにんにくと鷹の爪をオリブオイルで熱し、アーリオオーリオを作る。
そこへ太刀魚のコンフィを投入。それから太刀魚のブロードをじゃっと回し入れ、手早くゆすって乳化させる。
 
スパゲッティが硬めに茹で上がったら、湯を切って投入。すぐにちぎったフリルレタスを投入。ゲランドの塩を軽くふって3秒数えて火を消す。お皿に盛ってとっておきの(お高い)リグーリア産のオリブオイルをぐるっと回しかけて完成。あ、ちょっと黒胡椒もひいておこう。
 
 
ごちそうさまでした。
 
次の日の長男のカデンツァ自主練は、15分で終わりました(笑)。