義賊ステンカラージンは仲間の規約を無視してペルシャ王妃を救つた上二人は恋の悦楽に酔ふ、部下のドンコサックがこれを怒りステンカラージンは反省して、妃を海に投ずる筋の民謡を歌つたのであつた。
 闇の中で警戒してゐた若い巡査は、歌の中から、『我等』と『彼等』とを拾ひ、『悲し』といふ歌の言葉を『監視』と解釈し、三つ結びつけて名調子に『彼等は我等の行動を常に監視し』と即興的に纒めあげたものにちがひなかつた。
『ひとつ君、その歌を見本に歌つてみい―』
『はつ、よろしう御座います』
 彼は取調べ室で体を左右にゆすぶり、指でタクトをとり『ステンカラージンの歌』を陽気にうたつた。
『この歌はレコードにもあります、革命歌などと大それた、神かけて嘘は―』歌ひ終ると平謝りにあやまるのであつた。
『まあ、どつちでもいゝ、当分此処へ泊つてゆくんだね』と係官はいふのであつた。
さとみんマカロン 虎穴に入らずんば虎子を得ず