■先週も一瞬だけ話題に上った「表象」(representation)という語についてまとめておきましょう。
この語は何の説明もなされずにガンガン使われるのですが、理論初心者にとってよくわからない語の一つではないかと思います。
ということで、僕が初めて表象の語義をスッキリと理解できたと思えた記述(フーコー『言葉と物』の事項検索)から、わかりやすく整理してみます。
まずフランス語 representer (アクサン記号が表示できませんので悪しからず)には、二つの用法があります。

(1)代名動詞
一つは、代名動詞としての用法(ce representer)で、「(頭の中で)思い描く」を意味します。
したがって当該用法の representation は「頭の中に思い描かれたもの」を意味し、主観のレベルを言います。
カントやショーペンハウアーなどの近世哲学の文脈では、表象は主観的な意味で用いられるのですが、現在の文化理論で重要なのはむしろ以下の用法です。

(2)他動詞
もう一つは、他動詞としての用法(X representer Y)で、「XはYの代わりになる」(代替)を中心的な意味として、①「XはYを表す」、②「XはYを代表する」などの意味を表します。
この意味系列での「表象されたもの」は明らかに客体ですね。
ちなみに、ガヤトリ・スピヴァクは①を美学的な「表象=再現前」、②を政治的な「代理=代弁(speaking for)」として峻別せよと主張しています。
ドイツ語には①はdarstellen(表現する)、②はvertreten(代表する)として、別々の動詞があります(マルクスはその区別をしていたとスピヴァクは言っています)(『ポストコロニアル理性批判』370-75)。
さて実際のところ、論文や理論書で「表象」の語に出会ったら、①の意味でとれば原則的に間違いないと思います。
要するに、「表象する(represent)」は「表現する(express)」とほぼ同義だと思えばとりあえずOKです。

■まとめ
表象(representation)
(1)主観的な表象
(2)客体としての表象
  ①美学的な表象=再現前(文字表現、映像表現) …原則的な意味
  ②政治的な代表=代理(例えば「議員」はrepresentative)
5/27日(於戸山図書館グループ閲覧室)の記録

■今日の概念
コノテーション(共示)/デノテーション(外示)
読みうるテクスト/書きうるテクスト
など

■今日のまとめ。
バルトの主張は同時代のデリダの主張とかなり近似していることを確認。

意味(シニフィエ)

作品(シニフィアン)

読者

上図だと、最初に起源たる意味があって、意味は作品に具現化し、作品を通じて読者に伝達される。
ここで読書は受動的な消費にすぎない。

しかし、バルトはこうした図式に異議を呈する。
読者は作品の内に複数の意味作用を見出すのであって、そうした複数的な読みが積極的な「生産する」読書だとされる。
図式化すると以下のようになろう。

テクスト⇔テクスト⇔テクスト

読者

「作者の死」「読者の誕生」を知っていれば、この図式はわかりやすいと思う。
テクストは「引用の織物」なので、あるテクストは他のテクストと相互に反響する。
だから、特定のテクストから不特定のテクストへの無限に連鎖するその総体こそが、
「ただ一つのテクスト」なのだとバルトは言う。

■適当にまとめてみました。わからないことはまた聞いてください。忙しくならない限り続けましょう!