『ギフト』(原題:The Gift/2000年アメリカ/112分:G)
監督:サム・ライミ
脚本:ビリー・ボブ・ソーントン(「バッド・サンタ」)、トム・エッパーソン
製作:ジェームズ・ジャックス、トム・ローゼンバーグ、ロバート・Gタパート
製作総指揮:ショーン・ダニエル、グレゴリー・グッドマン、ゲイリー・ルチェッシ、テッド・タネンバウム
音楽:クリストファー・ヤング(「スピーシーズ種の起源」)
撮影:ジェイミー・アンダーソン
出演者:ケイト・ブランシェット、ジョバンニ・リビシ(「プライベート・ライアン」)、キアヌ・リーブス、ケイティ・ホームズ、グレッグ・キニア(「リトル・ミス・サンシャイン」)、ヒラリー・スワンク、ローズマリー・ハリスら
100点満点中72点
サム・ライミ監督のサスペンス・スリラー。ライミ監督だけに、心霊的(ホラー的)要素を盛り込んで、ある失踪事件を軸に、やや幻想的にストーリーが進行して行きますが、“仰天”するような演出は皆無で、瞬間のカットの強烈さで、鑑賞者を引き付けることはせず、アメリカ南部の小さな町の“一見”地味なシングル・マザーの周りにいる人物の人間関係を丁寧に描きながら事件の「深層」に潜っていく落ち着いた内容です。本当に静かに進んで行くので、監督とキャストを予め見て、「激しい展開」を期待する方々には、物足りない印象かも知れませんが、ライミ監督流のアングルとカットを散りばめながら、家族愛や、かの国に大きく巣食う“幼児虐待”をも扱った部分で、内容に現実感が生まれ、社会派作品の性格をも持ち合わせた作品となっています。
・・・なので、ちょっと「意外」
脚本に名を連ねるビリー・ボブ・ホーントンは、誰もがご存知の性格俳優です。『バッド・サンタ』や『アストロノーツ・ファーマー』では主役でしたし、また、ライミ監督の『シンプル・プラン』ではアカデミー助演男優賞を受賞したばかりではなく、自身が主演監督した『スリング・ブレイド』(1996年)では、アカデミー脚本賞を受賞しています。彼は歌手としての顔ももつ多彩な俳優であり脚本家です。
主演のケイト・ブランシェットは、まだ若く3人の息子と暮らすシングルマザー「アニー・ウィルソン」役で、元来の“幻想的”?個性的な魅力を、この作品でも十二分放ち、「カード占い」のスタイルをとった超能力者で、事故で夫を亡くした後、この特技で生活費を稼ぎながら、健気に一家を守り、この町では他人の「人生相談」にも応じるセラピストの役割も果たしています。作品によって、変幻自在な彼女の役作りに今作でも魅了されます。本当に輝いている。
脇を固める俳優陣の中では、「プライベート・ライアン」で衛生兵「アーウィン・ウエイド伍長」を演じたジョバンニ・リビシが、精神不安定な自動車修理工「バディ・コール」を演じ、精神が“異常な”時と“正常な”時とで、「オンオフ」を切り替える巧みな演技を見せます。そして、ラストシーンでは、重要な役割を果たします。
キアヌ・リーブスは、「ドニー・バークスディル」役で、「リス撃ち」を趣味とする小心で粗野なDV夫を演じ、この役は予想に反した“小物”です。
異彩を放つのは、ケイティ・ホームズ(↑右)で、小学校のカウンセラーの「ウェイン・コリンズ」(グレッグ・ギニア演ず)の婚約者「ジェシカ・キング」役で、外見のセクシーさを前面に押し出しながら、謎めいた所作で、後に続く惨劇を予感させてくれる巧みさがあります。
(あらすじ)
ジョージア州サバナで、地味に暮らす「アニー」は、カード占いで得る“寄付”が、唯一の収入源で、この小さな町の人々の下半身の病気や夫婦関係、人生の相談にまで乗る超能力者で、彼女の能力は、相談者の将来未来や過去に別の場所で起こったことを見通す事である。
常連の相談者「ヴァレリー」は、夫「ドニー」から受ける暴力に耐えているが、日々エスカレートする暴力に、離婚を勧めている。このことで、「ドニー」から逆恨みされることになり、「アニー」の日常も脅かされるようになる。
そんな時、息子の通う小学校のカウンセラー「ウェイン」の婚約者で、この地域の実業家の娘「ジェシカ・キング」が失踪する。
彼女の特殊能力を頼って、「ジョンソン保安官」と「ウェイン」に伴われて、実業家「ケネス・キング」が訪れ、藁にもすがる気持ちで、娘の行方を占って欲しいと言うのだが・・・




