■第898回 食品安全委員会

日付:令和5年5月16日(火)
 

議題

 

(1)農薬第三専門調査会及び動物用医薬品専門調査会における審議結果について

・「エマメクチン安息香酸塩」に関する審議結果の報告と意見・情報の募集について

(2)食品安全基本法第24条の規定に基づく委員会の意見について

・農薬「1-メチルシクロプロペン」に係る食品健康影響評価について

・農薬「クロルフルアズロン」に係る食品健康影響評価について

・農薬「テブフェンピラド」に係る食品健康影響評価について

・動物用医薬品「マルボフロキサシン」に係る食品健康影響評価について

・動物用医薬品「マルボフロキサシンを有効成分とする牛の注射剤(フォーシル)」に係る食品健康影響評価について

・肥料「菌体りん酸肥料」に係る食品健康影響評価について

(3)その他

 

審議の内容

 

(1)農薬第三専門調査会及び動物用医薬品専門調査会の審議結果

 

○農薬「エマメクチン安息香酸塩」

 

エマメクチン安息香酸については、殺虫剤や寄生虫駆除剤として使用される農薬でありポジティブリスト制度導入時に暫定基準が設定された農薬です。また、海外では、動物用医薬品として承認されていますが、国内では承認されていません。

2012年3月23日付けで厚生労働大臣から、農薬及び動物用医薬品の残留基準設定に向けた食品健康影響評価の要請があったことから、各種資料等を参照して評価を行いました。

各種試験結果から、ADI=0.0005 mg/kg 体重/日、ARfD=0.015 mg/kg 体重/日(遊離塩基換算)と設定しました。

 

この審議結果(案)については、5月17日(水)から6月15日(木)までの30日間、意見・情報の募集を行います。

 

(2)委員会の意見

 

○農薬「1-メチルシクロプロペン」

 

この農薬については、過去に評価したことがあります(2020年9月1日に第2版を答申)。今回企業から、この農薬をブロッコリーにも使用したいとの申請があったことや、この農薬を使用したトマトやアボカド等を輸入する計画があることを受けて、本年3月8日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価の要請がありました。その後、農薬第三専門調査会において審議を行いました。

 

今回植物代謝試験(りんご)、作物残留試験(海外のアボカド)の成績等が新たに提出されましたが、

・長期投与試験及び非げっ歯類を用いる発生毒性試験がいずれも提出されていないことから、農薬の安全性を評価するために必要な試験項目を充足しておらず、許容一日摂取量(ADI)及び急性参照用量(ARfD)を求めることはできない、

・作物残留試験の結果、この農薬の残留量がきわめて微量であることから、農薬登録又は申請された使用方法で適切に使用される限りにおいては食品を通じてヒトの健康に影響を与える可能性は極めて低い

との結論は第2版から変更していません。

 

○農薬「クロルフルアズロン」

 

この農薬については、過去に評価したことがあります(2022年6月28日に第2版を答申)。今回企業から、キャベツの追加資料の提出があったことを受けて、本年3月8日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価の要請がありました。

今回作物残留試験(キャベツ)の成績等のみが提出されましたが、毒性に関する試験成績の追加提出はなく、ADI=0.033 mg/kg 体重/日と設定、ARfDは設定する必要がないとの結論は第1版から変更していません。

 

○農薬「テブフェンピラド」

 

この農薬については、過去に評価したことがあります(2018年5月22日に第1版を答申)。今回この農薬を使用したとうがらしを輸入する計画があるとのことで、本年3月8日付けで厚生労働大臣から食品健康影響評価の要請がありました。

今回作物残留試験(とうがらし)の成績等のみが提出されましたが、毒性に関する試験成績の追加提出はなく、ADI=0.0082 mg/kg 体重/日、ARfD=0.15 mg/kg 体重/日は、第2版から変更していません。

 

以上3農薬の審議結果について、既存の評価結果に影響を与えるものではないことから、意見・情報の募集は行わず厚生労働大臣に通知することとしました。

 

○ 動物用医薬品「マルボフロキサシン」

○ 動物医薬品「マルボフロキサシンを有効成分とする牛の注射剤(フォーシル)」

 

フルオロキノロン系抗菌性物質である「マルボフロキサシン」については、過去に評価したことがあります(2007年8月9日に第1版を答申)。2022年10月5日付けで農林水産大臣より、「マルボフロキサシンを有効成分とする牛の注射剤(フォーシル)」について、動物医薬品としての製造販売の承認に向けて食品健康影響評価の要請があったことから、マルボフロキサシン及びフォーシルそれぞれについて、動物用医薬品専門調査会における審議を経てパブリックコメントの手続きを行いました。

 

期間中、マルボフロキサシン、フォーシルともに意見の提出はなく、専門調査会における結論と同じ、

・マルボフロキサシンのADIを0.004 mg/kg 体重/日と設定するとともに、

・フォーシルについては、製剤が適切に使用される限りにおいては、食品を通じて人の健康に影響を与える可能性は無視できる程度と判断し、

農林水産大臣に通知することとしました。

 

なお、フォーシルについては、その使用に際し、マルボフロキサシンがフルオロキノロン系抗菌性物質であることから、薬剤耐性に関する食品健康影響評価において、リスクの程度は中程度であると評価されていることに留意する必要がある旨評価書に記載していることについても確認がありました。

 

○ 肥料「菌体りん酸肥料」

 

菌体りん酸肥料については、公定規格を新たに定めるとともに、これに使用可能な原料として、原料規格に「排水処理活性沈殿物」を追加することについて、2023年2月8日付けで、農林水産大臣から食品健康影響評価の要請があったことから、肥料飼料等専門調査会における審議を経て、パブリックコメントの手続きを行いました。

 

期間中4件の意見が提出されましたが、この肥料が適切に使用される限りにおいては、汚泥肥料と比較して、食品を通じて人の健康に及ぼす影響が変わるものではないと判断し、農林水産大臣に通知することとしました。

 

なお、その際に、今後とも汚泥資源を原料とする菌体りん酸肥料製造施設への立入検査の着実な実施、同肥料の施肥に係る生産現場への助言・指導、品質管理の徹底等のリスク管理措置を適切に実施するとともに、原料となる汚泥資源に係る最新の知見の収集に努めるべきであることを申し添える旨確認がありました。

 

(3)その他

〇食品安全委員会の運営について(令和5年1月から3月まで)

 

令和5年1~3月期の食品安全委員会の運営状況について、食品健康影響評価やリスクコミュニケーション、調査・研究事業、食品安全情報の収集等の項目ごとに実績をとりまとめ、委員会に報告しました。

 

当日の会合資料は下記をご参照ください。後日、議事録も公開します。

https://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20230516fsc