1967年3月、山形県南陽市の生まれ。
近畿大学豊岡短期大学卒業。
2012年、『焔火(ほむらび)』で第6回小説現代
長編新人賞を受賞してデビュー。





昭和初期の山形県。
十八歳の清十郎たち磧者(かわらもの)の集団は川で
鰻や鯰、泥鰌などを獲って温泉歓楽街で卸している。
旅館や料理屋の残飯桶の中から腐ったり蛆の湧いてい
る食い残しを漁って鍋でごった煮にして食べていた。
売り上げをちょろまかしたために右眉を焼き鏝で焼か
れて磧を追放された与兵衛に代わって清十郎が卸に行
くことになった。
ザッコ屋の若旦那に、賄いに過ぎない虎鱒(とらます
:タイガートラウト)の旨さを話すと、なんとそれが
気に入られて軌道に乗ることになった。
若旦那は一匹二銭で仕入れて、九十五銭で客に提供し
ていた。
一方、桔梗は幼い弟を飢餓で亡くし、自ら身売りをか
って出た。
売られていった旅籠の遣りて婆ァのお連もまた同じ境
遇の出だった。
お連に桔梗は厳しく鍛えられた。
清十郎は磧を抜けて豪徳寺を訪れた。
そこの剛寿という活動家の住職に拾われて寺男になっ
た。
そこで清十郎と桔梗は出逢うことになる…。