挑戦記インタビュープロジェクト

挑戦記インタビュープロジェクト

キャンサーペアレンツ会員たちの挑戦記をご紹介していきます。


名前:土橋武彦さん
年齢:51歳
仕事:会社員
家族構成:妻、長男、次男
疾病:「消化管間質腫瘍」(ジスト)
罹患時年齢:43歳
概要:手術後、分子標的薬にて継続治療中。


◆がん宣告前後◆
Q・がん宣告前後の状況を聞かせてください。

2014年2月、健診で胃に良性と思われる腫瘍(胃粘膜下腫瘍)があると言われ、悪性の可能性があるなら手術したいと自分から主治医にお願いしました。

万一、悪性だったら……という不安も全くないわけではありませんでしたが、「まあ、大丈夫だろう」という気持ちでいましたから、手術後、ジストだったと聞かされたときは、まさに青天の霹靂でした。


Q・そのときの心境はいかがでしたか?

事前に胃粘膜下腫瘍を調べていたとき、ジストのことも一応チェックはしていました。

普通なら、体のことを心配するところかとは思いますが、私の場合は最初にお金の心配をしていましたね。

予後のあまり良くない病気ということで、今後継続的に再発予防のために分子標的薬を服用する必要がある。いったいいくらかかるんだと。

結果的に、さまざまな公的制度を使うことで、支出を最小限に抑えられていますが、私の服用する分子標的薬は、1錠が本来なら3,000円もするんですよ。

1日12,000円……。まだ子どもの教育費だってかかるのに……と悲観に暮れていましたね。


Q・そこからどのように頭を切り替えていったのですか?

まずは自分の病気のことをもっと理解しようと思いました。

国立がん研究センターのがん情報サービスをはじめ、信頼性の高い情報を集めていき、そのうえで、主治医に相談し、専門の先生に遺伝子解析をしていただくことにしました。

結果、飲み始めた分子標的薬が、私の体には効果が期待できそうだということが分かった。

いくら飲み薬とはいえ、この分子標的薬もいわゆる抗がん剤なので、吐き気やむくみといった副作用は結構キツいんです。

でも、遺伝子解析をした後は、それ以前に比べて、格段に納得感を持って服用できるようになりましたね。



◆挑戦について◆
Q・現在、どんな挑戦をされているのですか?

挑戦と言えるかは分かりませんが、「伝えたいことは、できるだけ今すぐ伝える」ということを意識して生活しています。

たとえば、私の場合は、今も分子標的薬を服用しながら仕事をしています。

仕事中に副作用が出ないよう、服用のタイミングなども気をつけてはいるものの、どうしてもピンチヒッターを頼まなければならないこともある。

幸い、周囲には、社内誌などを通じて、私の病気のことを知ってもらってはいます。でも、だからといって、職場では私も戦力の一人として、みんなと同じ立場です。

ですから、もしピンチヒッターを務めてくれたり、手を貸してくれたりしたメンバーがいたら、たとえ後輩であっても、

「助かったよ、本当に有り難う」
「次に自分にできることがあったら、手伝うから言ってね」

と、そのときの気持ちを率直に伝えるようにしています。


Q・なぜその挑戦を始めようと思ったのですか?

宣告後、治療をしながらこの職場で働いていきたいと思ったとき、最初に相談したのが、信頼の置ける上司でした。

それからも、こまめに状況を伝えたり、いざというときのために、少しずつ周囲にも治療や副作用のことを伝えていきました。

時に心ない言葉が聞こえてくることもありましたよ。

私の場合は、脱毛もありませんでしたし、見た目には健常者と変わらないため、「あいつ、本当に治療しているのか」と思われていたようです。

数年前に上司から前述の社内誌への寄稿を打診され、それ以降は、そういった声も少なくなっていき、支援が一層得られやすい環境になっていきました。

でも、それを当たり前と思ってはいけないですし、自分も体調が良いときは、その分恩返しがしたい。

そんな想いから、感謝の言葉や今の気持ちを伝える言葉を意識して発するようになりました。


Q・その挑戦は土橋さんにとってどんな意味を持っていますか?

言葉に限らず、行動でも、やりたいと思ったらできるだけ早く実行に移すことを心がけています。

コロナ禍で難しくなりましたが、以前は、よく首都圏などにも足を運んでいました。

「この懇親会に出たい」
「このイベントに参加したい」

そう思ったら、迷うことなく新幹線や飛行機のチケットを購入していました。

どうしても会いたい方がいて、その方に会うために、車を何時間も走らせたこともありますよ。そして、数時間お話して、また何時間もかけて帰るんです。

人によっては、何もそこまでしなくても…と思われるかもしれません。

でも、先々に楽しい予定があると生きるモチベーションが生まれるじゃないですか。

「○日後にあのイベントが待っているから、今日も頑張ろう」という具合にね。

ですから、今日のこの取材もとても楽しみにしていましたよ。最近は、なかなか外出もままならないので、オンラインに楽しみを見出しています。

自分も楽しみたいし、相手にも楽しんだり、喜んだりしてもらいたい。

それが私の行動のエネルギーになっているような気がします。



◆皆様へメッセージ◆
Q・これから何かに挑戦しようとしている方に、挑戦することの重要性を伝えてください。

「面と向かって、自分の気持ちを相手に伝えるのは恥ずかしい」という方もいらっしゃるかもしれません。

でも、もし明日何か不測の事態が起き、その気持ちを伝えずじまいになってしまったらきっと後悔すると思うんです。

それは家族においても同様です。夜家に着いてから、朝家を出ていくときまでに、できるだけ伝えたいことは伝えておく。

夕飯を食べ終わったときに、「今日も美味しかったよ、ごちそうさま」と妻に伝える。

がんになったことで、一層そんなやり取りの大切さを実感しています。

でも、くれぐれも、「今日『は』美味しかったよ」などと言ってはいけませんよ、逆効果になりますから(笑)


……土橋さん、本日はありがとうございました!

(了)

【取材日:2021年4月6日】