3つ勉強になった一人旅…洒落たカフェも生まれた上山藩「武家屋敷街」の建物に隠された秘密/更新版 | ゆるポタで心リセット“おれ野_お散歩日記”by_✡CAMMIYA…ちょいマニアックで開運

3つ勉強になった一人旅…洒落たカフェも生まれた上山藩「武家屋敷街」の建物に隠された秘密/更新版

 

毎年11月11日は、クラブツーリズム社が制定した「ひとり旅の日」でした。

 

皆さんは、最近「ひとり旅」に出たことがありますでしょうか?

 

今回は、江戸時代に上山藩の城下町や羽州街道の宿場町として栄えた、山形県上山市の武家屋敷街(中の町地区)に来ています。

※通り通称名で「仲丁」とも呼ぶそうです(中心市街地の西側に位置します)

 

本記事で後述しますが・・・

 

この地では、2005年より活動しているボランティアによって、元々は普通のブロック塀化されていたものを、より観光客受けする黒塗りの板塀に修景する取り組みが継続して行われているようです。

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こちらの写真は、14年前の2008年1月に撮影した「巽波黒塀」・・・
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気になったニュース・・・・・

<板塀風への模様替え作業完了>

上山の「再生志士隊」取り組む

(山形新聞2007年12月15日(土) 19:36)

上山市民有志(ボランティア)でつくる「城下町再生志士隊」が取り組んできた、

武家屋敷通りにある2カ所のブロック塀を板塀風に模様替えする作業が完了した。

再生された塀は

「仲丁矢羽(なかちょうやばね)黒塀」「仲丁巽波(たつみなみ)黒塀」と名付けられ、城下町の情緒ある雰囲気を演出。

2007年12月15日には現地で完成式典が行われた。

同種事業を先行して展開する新潟県村上市よりも

ずっと、見映えの良い黒塀・・・・っというのが「売り」なんだとか、、


松江湯布院村上比較表 

※村上市の事例等(クリックすると画像が大きくなって文字が見やすくなります♪)

 



1軒だけ内部公開

この通りには、江戸時代の武家屋敷4軒が現存しますが、このうち1軒(三輪家)のみ内部公開を有料で行っているそうなので、今回お邪魔させていただきます。

※山形県上山市鶴脛町1-7-46(武家屋敷「三輪家」)

 

1697年9月から幕末まで上山城に入り、この地を治める藤井松平家(譜代大名3万石)に仕えた三輪家の2代目は80石2人扶持で、側用人と勝手方を兼務していたとの事。

 

側用人という役目柄、藩主に伴い上山と江戸、さらに大阪まで従って同行勤務したそうです。

 

三輪家が上山のこの屋敷へ転居定住したのは寛永5(1852)年10月で、江戸詰め明けの翌年から藩校明新館(後述)の教師になりました。

 

この三輪家は外装の改築も少なく、武家屋敷としての曲屋茅葺のまま往昔の佇まいで、当時を偲ばせる貴重な遺構なのだそうですよ。

 

敷地面積は1377.32㎡、建物面積は147.1㎡で、寄棟・茅葺・武家中門造り。

 

文化年間(1804~1818)年の建築と推定され、一部改修されてはいますが基本的な作りは昔のままで30年前まで実際に住んでいたのだそうです。

 

上山の城下町は、城を中心に東側が町人街(宿場町)、西側から南と北に城を取り囲むようにして武家地が展開していたのですね。

 

三輪家はちょうど、城の真西方向にある「中の上」クラスの武士が住んだ屋敷になります。

 

勉強になった点(1)

抜刀防止の低天井

かつては家人や使用人が使う勝手口が、現在の三輪家におけるメイン玄関ですので、先ずはこちらから入室し、管理人さんへ入館料金220円を支払います。

 

すぐ右手の部屋は油障子で防水性を高めたガラス窓の無い「控えの間」で、来客者の従者控室に使われたそうですが、ここで「ああ成程」と思ったことが1つあります。

 

この部屋、異様に天井が低いなぁと思っていたら、説明文を見て納得!

 

侵入者に刀を抜いて振り回されないように、わざと天井を低くしていたのですね♪

 

外から悪い「気」が入らないように衝立も置いてありました。

 

勉強になった点(2)

2軒で挟み撃ち迎撃

上山藩の武家屋敷は馬を飼う農家によく見られるL字型の曲屋構造ですが・・・

 

これは馬を飼う事が目的ではなく、好対照に2軒ずつ向き合うように建てられている意味は、敵が攻めてきた際に2軒1組で座敷から弓や銃で迎撃する為なのだそうですよ!

 

上山藩は、城と同様に、武家屋敷も戦う為の建物と言う位置付けだったのですね。

 

仏間は、来客の際には仏壇を隠して客間として使用していたのだそうです。

 

縁側廊下の外側にある雨戸は後付けのモノで、元々は部屋側にしか無く、その名残でこの縁側廊下は外側に緩やかな傾斜が付けられています。

 

元々は身分の高い来客を出迎える玄関(式台)だったという取次の間にある金庫は、3代目当主が明治時代に質屋を経営していた名残なのだそうです。

 

こちらも上述の「抜刀防止」の為に、天井が異様に低くなっていることが判りますね。

 

なお、上山武家屋敷街で唯一「式台」が残る家は、後述する曽我部家だけのようです。

 

奥側の普段は家族が生活するために使っていたという和室2間は、元々は6畳の部屋でしたが外側の縁側廊下部分を部屋として拡張改造しています。

 

なので、元々は縁側廊下だった部分の屋根が「船底」のように下がっているのが判りますね。

※上述、表側の「取次の間」と天井構造を見比べると一目瞭然!

 

江戸時代は、客間以外に天井を造ることが許されなかったので、元々は屋根まで突き抜けていた板の間だったようです。

 

勉強になった点(3)

武者隠しと、煙出し

台所の板の間には囲炉裏があり、土間の2階部分には「武者隠し」と呼ばれる隠し部屋がありました。

 

敵から攻められた際には身を隠し、屋根の隙間から狙撃するために使ったそうです。

 

また、この部分は煙出しとしても使われていました。

 

建物外側からでも、現在の玄関(旧・勝手口)の屋根上に、隙間が設けられている事が判りますよね♪

 

テレビの時代劇とか忍者の映画みたいな仕掛けが、現実に存在しているのには驚きです。
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武家屋敷「三輪家」向かいの矢羽黒塀は全長7メートルで高さ2メートル。

張り付けた板材が矢羽模様になっているのが特徴。

 

曽我部家

もう1軒、外周だけ見て回れる武家屋敷が2軒北隣にあるという事なので、行ってみました。

※山形県上山市鶴脛町1-7-38(武家屋敷「旧曽我部家」)

 

3代目にして大目付85石に昇進したこの曽我部家は、初代からこの地に居住し、当時の敷地は2000㎡で、その他に城内にも土地を所有していたとの事。

 

すぐに目に付くのは、上述した三輪家にもあった玄関(勝手口)屋根の「武者隠し」ですね。

※残念ながら、上山市における「放課後子ども教室」事業に使用されている為、一般観光客による建物内部見学は不可

 

特に、この建物の表玄関は武家中門造りで、中級武家屋敷の様式をよく表し、屋敷には柿が植えられ、庭園には築池を配しているのが特徴。

 

更に庭には、樫(カシ)・松・桜・梅擬(うめもどき)や躑躅(つつじ)などもあり、黒竹や桧葉(ひば)の生垣を巡らせて風情を添えています。

 

こちらの家には、身分の高い客人を出迎える為の専用玄関「式台」が残されていました。

 

また、勝手口側4m程の所にある「釣瓶(つるべ)井戸」は近年まで使われていたそうですよ。

 

なお、この家の敷地は公園化され、公衆便所も屋敷の裏庭に設置されており、たとえ外観だけの見学であっても観光客にとっては嬉しいポイントの1つですよね。

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全長17メートルで高さが1.6メートルの巽波黒塀は「旧曽我部家」近くにあり、塀の下側に波をモチーフにしたデザインが施されています。

 

城下町だった面影と風情の残る4軒の武家屋敷が並ぶ中町通りには、市民の手により「水琴窟(すいきんくつ)」やミニ庭園「紫苑(しおん)庭」も整備され、

 

観光客の散策スポットとして人気を集めるようになりました。


カフェも出店!
14年前に来た時には無かったお洒落なカフェが、三輪家の斜め向かいにある築90年?の建物をリノベーションして開店していました(2018.9.26オープン)。

※山形県上山市鶴脛町1-6-10(厩戸 -umayado- ご飯と喫茶)

 

本当は酵素玄米カレー(850円)が食べたかったのだけど、開業から4年を経過しても人気は衰えず、特に休日は予約無しだと「お食事」メニューは即完売(ランチタイム入店不可)の状況。

 

仕方なく、14:30まで待って喫茶メニューを頂くことにします。

 

今回は畳敷きの座敷へ案内されました。

 

この日は暑かったので、アイスでも淹れられる「穀物珈琲(税込495円)」を頂くことにしましょ♪

 

大麦やライ麦を焙煎したというノンカフェインのコーヒーなのだそうですよ。

 

なお、この店「こだわり」で、メニューには動物系の食材は一切無く、コーヒーに付いてくるミルクは豆乳由来のモノ(有機豆乳)なのだそうです。

 

店内が満席状態の中、14:30過ぎに行って約12分程度でアイスコーヒーが到着!

 

なるほど確かに・・・コーヒーに少々「濃い味麦茶」を足したような、香ばしい味わいがしました。

 

「プチおやつ」で、ココナッツオイルのチョコが付いて来ましたよ♪

 

上述した通り、食材には「有機無農薬」「天然伝統製法」にこだわっていて、動物系のモノは一切排除しているとの事なので、一度は事前予約の上で「お食事メニュー」も試してみたいですね。
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14年前に撮った月岡ホテル(西)側の様子・・・
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予算たったの14万円!

でやったという月岡ホテル(北)側への黒板塀施工

 (ボランティア主体だから可能?)


 

ところで・・・

志士隊の活動は2005年3月からスタート。

 

平成15(2003)年度に行われた道路(舗装)改良工事によって、

上山城西側の武家屋敷通りが新しく生まれ変わったことを契機に、

上山城周辺の景観について考えようと地域住民ら有志が集まったのだそうです。

 

当時のメンバーは約20人。

これまで、武家屋敷通り入り口となる月岡ホテル周辺で

板塀づくりやブロック塀を板塀風に再生させる作業に取り組んできました。

 

さらなる魅力づくりとして、志士隊はこれまでの活動で蓄積したノウハウを生かし、

平成15(2003)年10月から通りの景観整備に着手。

住民の協力を得て、先ず2軒のブロック塀の模様替えを行っったとの事。

ちなみに、

当時は月岡ホテルの堺健一郎社長も「志士隊」の一員で、

2005年度に社長自らの会社が所有するホテル西側のブロック塀を、

板塀に改装する際には、

同時期に改築された小学校体育館から出た廃材を再利用し、

地元小学生や市民役100人がボランティア作業に携わった・・・とのこと。

*参考資料・・・・・□外部リンク参照

   :

(2005年11月23日に、月岡ホテル西側板塀塗装・・・なお、西側板塀への児童デザイン「羽州街道ストーリー」はめ込みは2006年2月実施

   ↓

月岡ホテル北側への施工は2006年12月に約半年がかりで完成)

なお、

志士隊には、地元の一級建築士やデザイナーなど多彩な顔ぶれが集まり

得意分野を持ち寄って自ら企画・設計から塗装、板張りまで行ったのだそうです。
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武家屋敷通り整備における市民参加

 ↓

上山市の中心市街地西側に江戸時代の武家屋敷4件が現存していますが、

平成15年度に市道武家屋敷通り線の舗装改良工事にあわせ

周辺住民と舗装のデザインと景観整備について検討するため、

武家屋敷通り整備委員会を設置

道路改良終了後も武家屋敷通り整備委員会が、地元有志ボランティアによる

城下町再生志士隊と名称を改め(平成17年3月~)、

清掃活動等の武家屋敷通りの維持管理や

周辺旅館とのタイアップにより土塀の設計、施行を行っているとの事

また、

武家屋敷の 1 つである曽我部家の庭園整備を進める紫苑庭運営委員会が結成され、

庭園の整備とともに、

会員により土日に観光客を対象にした湯茶の接待がなされるようになり、

また当時は、武家屋敷を会場に音楽コンサートが開催されるようになったそうですよ。
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(資料出所:東北電力HP /上山市役所総合政策課の石井隆主査コメント抜粋引用)

市道武家屋敷通り線の道路改良

今、上山市では4軒の武家屋敷が連なる通称「武家屋敷通り」の整備を行っている。

当初の予定では、通りを石畳に再舗装するだけだったが

「美しい自然や歴史に根付いた町並みの再生が重要」との発言に触発され

地元の人や武家屋敷保存会、観光関係者の方々と整備委員会を組織

 

この地域の歴史を知ることからはじめ、景観の形成をどうすべきかじっくり話し合ってきた結果、武家屋敷の地割が見事に18間ずつとなっていることがわかり、

昔の尺度である「間」を感じさせる道として整備することとなった。

 

道路が狭くなることを承知で里山から引水している清流を見せる工夫もした

 

東北電力さんの協力で武家屋敷側の電柱も撤去され、

せせらぎ、緑、石垣、中門づくりの武家屋敷が輝きを増している。

おかげで道路整備は半年以上遅れたが、地域の人に愛される道となりそうだ

ブロック塀を自主的に板塀に手直しする方も出てきている

城下町全体の景観を考え、

自分たちでできることをまずやってみようという

「城下町再生志士隊」なるボランティアも発足した。

この取り組みが上山の一つのモデルになればと願っている・・・

※中の町(武家屋敷街の通り)北側にある旧藩校「明新館」跡

 

いかがでしたでしょうか?

市民の手による景観整備が観光客を呼び、新たにカフェの出店を生み出し、地域の経済に多少なりとも寄与した一例と言えそうですね。

 

【注】

本記事掲載写真は、すべて本ブログ管理者が自ら現地へ出向き撮影したものです。
 

★その他の参考資料( □外部リンク・・・・・市議さんの活動日記ブログ  より)

:  

★その他の参考資料( ■本ブログ内関連記事「上山温泉の足湯カフェ」  編)