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流れ雲のブログ

季節は巡り、花が咲き花が舞い、花が散り花が逝く、
きっといつか、風が吹いて、夢を運んでくる予感…
繰り返しと、積み重ねの、過ぎ去る日々に、
小さな夢と、少しの刺激で、今を楽しく、これからも楽しく…

Kensin

 

メジャーでは無いけど、 こんな小説あっても、 
良いかな・・・


アングラ小説です、不快感がある方は、
読むのを中断して下さい



Kansin

 

春秋末期の楚は、愚者たちによって
統治されていた。
能者は他国へ流れ、賢者はそねまれ死を
強要される。
しかし変革に立ち上がった者たちにも行動に
統一性は見られないのであった。

ある者は祖国を改革しようとし、ある者はあえて
祖国を滅ぼす、と主張する。
彼らはそれぞれに信念があり、正しかった。
誰が間違っていたというのか。 ・・・



韓信外伝 -春秋の光と影(兵法家)

 

蓋余と属庸は降伏した。戦場で孤立したうえに、
宮殿で王である兄の僚が殺されたことを
知ったからである。
その判断は正しかったと言うべきであろう。
楚は彼らを厚遇し、六から程近い舒じょという
地を与え、そこの領主としたのである。

「うまくいった」六から戦勝報告をしに郢に至った
包胥は、満足そうに呟いた。
「君のおかげだ」そう言われた奮揚は、頭を掻いている。

「蓋余と属庸の二人には、戦渦に荒れた六の地が
与えられると思っていたのだが、思惑が外れてしまった。
あらかじめこうなることがわかっていたなら、
燃える水などを使って、あれほどに都市を
燃やすことなどしなかったのに」

「私が、王さまと太后さまに進言したのだ。
安心しろ、民衆というものは我々などよりよほど
力があるのだ。
彼らは、意欲的に戦渦に荒れた城市を復興
させるだろう。しかしその領主にあの二人が
いるとなれば、民衆の感情は恨みに偏ることになる。

そうすれば再び争いが起き、結局六の復興はならない」
包胥は、そのように説明した。
「包胥どのらしい、慈愛に満ちたやり方だ」
奮揚は、言葉少なにそれに答えたが、それには
賞賛の意味が込められている。

単なる戦闘屋の自分とは、まったく考えが異なり、
彼はもっと広い視野で世を見つめているのだ
……そう思った奮揚であった。

「まあ、なににしても終わった……。
申に帰ろう、奮揚どの」奮揚は、包胥の言葉に
我に帰った。
申では、紅花が自分を待ってくれている。
早くその顔を見たいと思う奮揚であった。

四月の終わり、紅花は奮揚の帰りを道場の
玄関先に立って待っていた。
その周辺には彼女が丹念に植えた花々が可憐に
咲き誇っている。

庭先に立つ大きな白木蓮はくもくれんが、大きな花を
咲かせていた。
その花びらが風に吹かれて散り出し、春の暖かな
光の中に舞う蝶のようにひらめいている。

奮揚の目にはそれだけで幻想的に映ったが、
しかしそれらは紅花の美しさを引き立たせるもので
しかなかった。

いや、美しさというよりは、いとおしさか。
あまりの美しさに見とれてしまうというよりも、
いとおしさのあまり衝動的に抱きしめたいと
感じさせる風景であった。

「揚さま!」紅花は奮揚の姿を認めると、
嬉しそうに声をあげた。
ときに男前でありながら、またあるときには可愛らしい
……そのすべてがいとおしかった。

「どうも、私はお邪魔らしい。
奮揚どの、妹の思いに応えてやってくれ」
包胥はそう言うと、答えを聞かずに先に道場の
中に入った。

あとに残された奮揚は紅花の手を取ると、
物も言わずに抱き寄せた。
彼は、自らの感情に素直に従ったのであった。
「ご無事で……」
奮揚の胸の中で、紅花は呟く。
奮揚は、その声さえもいとおしく感じた。

「君は、私を二度も救ってくれた。
費無忌に追われて行き倒れになったときと、
今回の戦闘との、二度だ」

「そんな……私など今回は……
待っていただけです。
それしかできなかったのですから」

「生き延びて、君に再び会いたいという気持ちが、
私を導き、楚を勝たせたのだ。
こう考えると、国の命運も愛によって左右される
と言うしかない。そうだろう、紅花よ」

「……はい」紅花は奮揚の胸に抱かれながら、
若干肩を振るわせたようだった。
奮揚の大げさな物言いに、くすっと笑ったのである。

つづく

 

 

愚人は過去を、賢人は現在を、狂人は未来を語る・・


 

 

Suiheisen11211111

 

安藤彩也香は・・・泣いていた。
来店されるなり、高橋のお婆ちゃんが頭を下げた。
「ユタカさん、ありがとうね。おかげで、
お爺さんも天国に安心して行けましたよ」

高橋のお婆ちゃんの旦那さんが亡くなってから、
もう2週間が経つ。
通夜にも告別式にも参列させてもらった。

彩也香にとって、思い出深い夫婦だった。

ドラッグユタカの滋賀県の店舗に着任早々、
高橋のお婆ちゃんと仲よくなった。
畑で採れた野菜だと言って、買い物に来るたび
持って来てくれた。
アルバイトの子たちも含め、みんなで分けていただいた。

毎月、一度、高橋のお婆ちゃんは大量の買い物に訪れた。
消毒液、脱脂綿、ビニール袋、介護用のおむつ・・・。
そう、お婆ちゃんは自宅で、脳梗塞で倒れた
旦那さんの介護をしているのだ。
もう7年になると、前任の店長から聞いていた。

息子さん二人は、家を出て遠くで働いているらしい。
長男さんからは「一緒に暮らそう、東京へ来ないか」
と言われているが、頑なに拒んでいると耳にした。

お爺さんが、自分の生まれ育った家で死にたい
と言っているのだという。
老々介護。辛くないはずがない。
でも、高橋のお婆ちゃんは、けっして暗くない。
お店にやってくるなり、いつもケタケタと笑う。

「こんな形のキュウリができてな。
みんなに見せようと思って持ってきたんよ。
チン○コみたいじゃろ」
学生アルバイトのユージの「アソコ」に、
そのキュウリを押し付けては、たまケタケタと笑う。

ところが、そんな元気のかたまりのお婆ちゃんが
畑仕事をしていて、腰をやられてしまった。
「車の運転ができないので、持って来てくれないか」
と電話があり、彩也香は心配になって飛んで行った。

部屋には、民生委員さんと、ヘルパーさんが
来てくれていた。
「お婆ちゃん、老人ホームに入った方がよくない?」
「大丈夫、すぐに治る」と言い、腰をさすった。

彩也香は、ちょっとだけホッとした。顔色は悪くない。
「痛てて」と言いながらも、壁を伝って部屋の中を
歩くこともできる。

「おむつとか、どこへ運びましょうか」
「隣の部屋へ頼むわ」と、遠くから指を差された。
ふすまの扉を開ける。

「え!」
彩也香は、目の前に迫るようにそびえ立つ山に驚いた。
そこは、仏壇のある座敷だった。
ずっと使われていないらしく、納戸のようになっていた。

その広い畳の部屋いっぱいに積み上げられていたのは、
ティッシュペーパーと介護用おむつだった。
いったい、どれくらいあるのか見当もつかない。
ドラックユタカの店頭の在庫よりも多いことは
間違いない。
6か月分、いや1年分ちかくもありそうだ。

「そこへ積み上げておいとくれ~」
遠巻きにお婆ちゃんの声が聞こえた。

(これはどういうことなの?)

彩也香は、ひょっとして・・・と訝しんだ。
お店に来るときは、かなりしっかりしっかり者に見えた。
でも、実は、相当に認知症が進んでいるのではないか。
目の前に、こんなにもストックがあるのだ。
忘れて買い置きしているわけではなさそうだ。

昔、親戚のおばさんに聞いたことがある。
認知症の症状の一つとして、買い物依存症が
出るというのだ。

叔父さんもそうだった。いつも吸っている
マイルドセブンライト。
机の上にも、ポケットにも入っているのに、
自動販売機を見ると買ってしまうのだった。

たくさん手元に置いておかないと、不安になるらしい。
そのため、いつも100箱以上の買い置きがあった。
(息子さんに連絡をして、一度病院に連れて行って
もらった方がいいかも)
彩也香は、介護用のおむつの山を見ながら、
溜息をついた。

それから5日後のことだった。
高橋のお婆ちゃんが、元気な姿を見せた。
「もう大丈夫」と、大きなカボチャを3つも抱えて
レジに置いた。

「みんなで食べてな」
「ありがとうございます」
「それから・・・またこれだけ用意してくれんかな。
車の運転もできるようになったから、自分で
持って帰るから」

「はい、私が用意します」と答え、彩也香が
メモ用紙を受け取った。
(え!?)
そこには、ついこの前、配達したばかりの商品が
羅列してあった。

あの、座敷に山となっていた介護用のおむつが・・・。
やっぱり認知症・・・。
「いんだよ、その通りで」
高橋のお婆ちゃんに、そんな心を読まれて
しまったようだ。

「・・・で、でも」
「あんた、なんで介護用のおむつばっかり、
たくさん買い込むんだろうかって、不思議に
思っているんだろう」
「え?・・・は、はい」
「あまり人には言わんでな」

「・・・」
彩也香は、真顔のお婆ちゃんを見つめた。
とても認知症の人には思えなかった。

「お爺さんはな、寝たきりになってしもうたがな、
ちゃんと毎日、わたしと話をしてくれとる。
めったには出掛けなかったけど、宮崎とか
北海道とかに旅行に行ったことは何度も話すんだ。

楽しかったな~、美味しかったな~、てな。
そんな同じ話ばかりしてもうすぐ7年が経つんよ。
長いようで短いなあ。

お爺さんにはな、これからもずっとずっと長生き
してもらいたいんよ。
私よりも先に死なれたら、辛くてたまらん」
彩也香は、とつとつと話すお婆ちゃんの瞳を
見つめていた。

「おむつがなぁ。1ヶ月分しか家にないとな、
不安になるんよ。
あと1ヶ月しか生きていられんような気がしてな。
2ヶ月分しかないと、あと2ヶ月で死んでしまうような。

それでなぁ。3ヶ月月分、4ヶ月分とな、だんだんと
増えていってしまって、とうとうお座敷いっぱいに
なってしまったという訳なんよ。

たぶん、1年分くらいはあるんじゃないかな。
でも、まだ不安なんよ、わたし。
お爺さんには、1年ばかりじゃなくて、何年も何年も
生きていて欲しい。
下の世話もわがままも何でも聞いてやるから」

彩也香は言葉を失い、ただそこに立ち尽くした。
気が付くと、頬に一筋の涙が伝っていた。

それから、半年ほどが経ったある日のことだった。
高橋のお婆ちゃんの旦那さんは、風邪がもとで
気管支炎を患い、あっという間に亡くなってしまった。

そしてそれから2週間後、お婆ちゃんが
店にやってきた。
「ユタカさん、ありがとうね。
おかげで、お爺さんも天国に安心して行けましたよ」
思うよりも元気そうでホッとした。

「そろそろ、片づけもしなくちゃならんのだけど、
なかなか手が付かんくてね」
「しばらく、ゆっくりして下さいよ、お婆ちゃん」
「うん。でもな、野菜はどんどん芽を出すしな、
畑仕事は休めん」
「そうですね」

「ところでな・・・ちょっとな、あんたに相談があるんよ」
「相談」と言われて、彩也香は少し嬉しくなった。
何にも役に立てずにいる自分に苛立っていたからだ。

「あのなぁ、あのお座敷のおむつなんだけど、
一緒に手伝って処分してもらえんかなぁ。
いつか、わたしが必要な時が来るかもしれんけど、
あれを見ると、お爺さんのことを思い出して
辛くてなあ」

「もちろんです。もしよかったら、返品に応じさせて
いただきます」
「え? 返品??」
「はい。たしか、レシートをきちんと保管して
いらっしゃいましたよね、お婆ちゃん」

「あ、うん・・・お爺さんの癖で、菓子箱に
全部入れてあるよ」
「1年前のものは返品できないっていう決まりは
ありませんから」
「え? 本当にいいんかい・・・会社から叱られん?」

それは彩也香が、ずっとずっと前から決めて
いたことだった。
残念ではあるけれど、きっとこの日が来ることを
考えていた。

「お爺ちゃんが亡くなられて、年金だけじゃますます
生活がたいへんでしょ。
返金分で、お孫さんに何か買って差し上げてください」

高橋のお婆ちゃんはうつむいて動かなくなってしまった。
足元の床に、ポツリポツリと、涙が落ちた。
彩也香は、それを見て見ぬフリをして大声で言った。

「今日は、カボチャの料理でも作ろうかな。
美味しい煮物の作り方、教えてもらえますか?」

・・・・終わり






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