結局、何をするにも多かれ少なかれ
いるわけですよ、お金さんが。
葬式一つあげるのに百万単位で金が動いてたりしますし。
盆?わりーけど帰れないよ
交通費出せないモン。
おばちゃん、ごめん。ホントごめん。
婆は大嫌いだけどおばちゃんは大好きだったよ
だからちゃんと行きたいけど
こっから祈ってっから。
おばちゃんがちゃんと…………
天国でも煉獄でも、
現世よりは安らかであるように
じいちゃんにも会いたいよ
ボケちまってアタシのことなんて
誰かもわかってないけど
そんなんになってから漸く
まともに話せるようになるなんてさ
皮肉もいいとこだろ。
一番仲良かったのにアニキんことも
覚えてないし。アニキもショックだったよ
ヘンな感じでさ
認識できんのは婆のことだけなんだよ
そんなんなってから、漸く色々話して
手ぇ空いてんのが他にいなかったから
アタシが面倒見てて、一番近くにいて
おばちゃんは首吊ってしんじまうし
婆は体裁があるから悼んでるように振る舞って
でも内心厄介払いできたと思ってんだろ
テメーの妹だろうが。
ああ、あの田舎の海の近くにある家は
夜になるととても静かで、真っ暗で
とても広く思えただろうね
そんな中で、いつ死ぬかわからない命で
ひとりぼっちでいるのは、それはそれは
怖かったでしょうね。辛かったでしょうね
海は、年々汚されていったけど
今でもあの空は星がネオンライトなんかより
ずっとキレイに瞬く場所で
あの空を見て波音を聞くたびに
言いようのない安心感を覚えていたんだ
この地球が、愛された星だって思えたんだ
何時以来見ていなかったのだろう
「また行くよ」
この約束が果たされたのは
おばちゃんが死んだと知らせを受けた
翌日の昼を回っていて
現場は片付けられて、奥の部屋に
おばちゃんは静かに横たえられて
病気でガリガリに痩せた体と
血の気を失った青白い顔
苦しかったのだろう、眉間にくっきり皺を残して
そんな姿を見るまで、
新幹線の中でも私はずっと計算していたのだ
どういえばいいのか。どんな反応をすればいいのか。
遺族の連れとして、家の名に泥を塗らぬよう
どう振る舞ったらいいのか。婆のゴキゲンを取る為に。
妙に醒めた頭は、おばちゃんを見た瞬間から
ゆっくりと崩れ初めて
気が付いたら涙が止まらなくなってた
歯を食いしばって、上を向いて
必死に必死に堪えても押し寄せてくる
洪水のような涙と嗚咽が抑えられなくて
それでも人前で、他人の前で泣いてたまるかって
それだけで必死に、涙流してたけど堪えてて
結局その一晩、大人達が忙しく通夜だのなんだの
手配している間、じいちゃんの相手と雑用をして
翌日、通夜の晩、柩の番をしている間、おばちゃんと
ふたりきりで少し、一方的にだけど話をして。
斎場で参列者を送り出して落ち着いたとこで
漸く、外に出て喫煙所で煙草吸いながら声を上げて泣いた。
やりきれない思いが込み上げて止まらなかった
おばちゃんのこともじいちゃんのことも
人間が生きる意味がわからなくなった
婆は人に感謝することを知らない。
私の母親の実家を大事にしない。
ああ、こんな母親に育てられたのだ
あの男がクソなのは、仕方のないこと
寧ろ、哀れなことなのか。
母上、何故、あのような男をいつまでも
護ろうとするのですか。
私にはそれが一番苦しい。
傷付く貴方を見ていたくない。
なのにそんな貴方に私も心配ばかりかけてしまいます
兄の時もそうだった。
私は、どちらも護りたかった。
なのに私の所為でどちらも
取り返しのつかない傷を負った
愛されることは時に
憎まれるのと同じほどに…重くて痛い。