私が勤務するAVACOでは毎年行われる「夏季講習会」というのがありました。
8月のある時期の1週間、紙芝居や人形劇、お話の仕方などそれぞれの専門家の方が、幼稚園や保育園、教会学校の先生方に教えるのですが、場所は中軽井沢の星野温泉。
今「界」という高級ホテルを各地に作っているあの星野リゾートの、いわばご実家です。おそらく今の社長さんの2代前くらいの方が当時は社長だったと思いますが、中軽井沢が「沓掛」だった頃からの古い温泉旅館です。
すぐ近くにある塩壺温泉は弟さんで、共にクリスチャン。
明治の頃は内村鑑三氏などが逗留していたそうです。

星野温泉は1990年代までは古いままでしたが、今はすっかり建て直され、巨大な露天風呂を持つ「とんぼの湯」のほかに、星野リゾートの第一号「星のや」という高級ホテルに変わっています。
AVACOの講習会はその古い温泉旅館の畳敷の大広間で行われました。
受講者は自分の受けたい項目だけ3泊でも4泊でも参加すればいいようになっていたと思います。
私達も全員出張し、その時だけは涼しい高原の温泉を楽しむことが出来ました。

講師の方々はその道で有名な方も多く、お話の仕方は村岡花子さんが担当されていたのを覚えています。
東京のスタジオでは人形劇の制作も定期的に行われていて、私の担当でした。
またアメリカから届いた「ジョン・ウエスレー物語」という映画の日本語版制作に初挑戦。(ジョン・ウエスレーとはイギリス国教会の司教で、プロテスタントのメソジスト派を作った人です)

翻訳されたセリフを社員たちがにわか声優になって「吹き替え版」を作ったのですが、長さが合わなかったりで散々な出来だったのを覚えています。

それから間もなく、それまでになかったアメリカのドラマや映画の日本語での吹き替え版がテレビで大量に放映されるようになり、それをまさか結婚後に仕事にするようになるとは想像もしていませんでした。
そしてそれがいかに大変な仕事であるかを一般の方はほとんど知りません。
未だに声優さんがその場で日本語に吹き替えてしゃべっていると思っている方が多いのです。

これはまず英語のセリフを翻訳し、更にそれを実際にしゃべってみて画面の俳優の口の動きと日本語がぴったり合うように調整するのです。(この作業をシンクロと言います)
ですから声優さんは最初の出だしさえ間違わなければ、ぴったり口の動きと合うセリフが言えるというわけです。