第118話 父と子と その13 | 【小説】Cafe Shelly next

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喫茶店、Cafe Shelly。
ここで出される魔法のコーヒー、シェリー・ブレンド。
このコーヒーを飲んだ人は、今自分が欲しいと思っているものの味がする。
このコーヒーを飲むことにより、人生の転機が訪れる人がたくさんいる。

 私は別れる前の家庭の状況を思い出しながら彼に語った。

 

「実は、その頃から元妻とはあまり関係が良くなかったんです。あんなに好きで結婚したのに、なんだかその存在が疎ましく感じ初めて。マラソンも自由にさせてもらえない、そんなこともストレスになっていました」

 

「自由にさせてもらえなかったんですか?」

 

「まぁ、今考えると私のワガママではあったのですが。地域だけでなく、遠くの大きな大会にのエントリーしていたせいで、最低でも一ヶ月に一度はどこかのマラソン大会に出ていました。だから、家族サービスなんてできていなかったんです。元妻はそれが不満で。最初の頃は応援に来てくれていたのですが、息子ができてからはそれもなくなりました」

 

「そうなんですね。それが離婚の直接の原因なんですか?」

 

「ははは、実はそれだけならまだなんとか関係性が修復できたのでしょうが。まぁこんな夫ですから。元妻も私へのストレスを発散したくなったのでしょう。私が仕事やマラソンで家にいない間に、どうやら浮気をしていたようで。けれど、それはどうでもいいんです。私の夫としての甲斐性がなかっただけですから」

 

「じゃぁ、それで離婚を切り出したのですか?」