第100話 盗人の心 その8 | 【小説】カフェ・シェリー

【小説】カフェ・シェリー

ここは喫茶店、カフェ・シェリー。
登場するのは40代の渋いマスターと20代の店員マイ、そして主人公はお客様であるあなた。
そこで体験する、魔法のコーヒー「シェリー・ブレンド」の味で、お客様は何かに気づき、そして希望を持っていく。
そんな喫茶店のお話です。


テーマ:

「マイ、ほら、よく話している、朝すれ違う方だよ」

 

「えーっ、あなたがそうなんですか。はじめまして、妻のマイといいます」

 

「あ、は、はじめまして。えーっ、お二人はご夫婦なんですか?」

 

 またまた驚いた。マスターの方はどうみても四十代半ば、私と同年代の中年だ。それに対してマイさんと名乗った女性はどう見ても二十代。しかもけっこう美人だ。

 

「ははは、年の差婚ってやつでね。マイに負けないように、体力づくりで毎朝ジョギングしているんですよ」

 

 マスターは笑いながらそう言う。改めて見ると、愛想がよく気の良さそうな人だな。

 

 こりゃ、この店に盗みに入るのはやめたほうがよさそうだ。確かにセキュリティは甘い。簡単に盗みに入ることはできるだろう。けれど、さすがに顔を知った人のところで盗みを働くのは気が引ける。

 

「あ、お名前を聞いていませんでしたね」

 

「あ、私ですか?私は…」

 

 一瞬躊躇した。思わず本名を名乗るところだった。ここは偽名を使わなきゃ。

 

「私は右松三郎といいます」

 

 本名はもちろん違う。だが、全く違う名前を名乗ると、呼ばれたときにすぐに反応できないので似た名前を使うことにしている。そもそも盗人仲間にも本名は伝えていない。

日向ひなたさんをフォロー

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス